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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART10 前人未踏の地下海域》謎と危険に満ちた地下海域
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《★~ 銀海竜の言葉(二) ~》

 念のためということで、メカブが海水溜まりの中、パフェのところへもう一度赴き、救出作戦について事前に十分な説明を与えておく。

 妨害する者は一人としていない。ラムシュレーズンが、自信を滲ませた面持ちで「さあ今度こそ、あたくしたちの作戦を全身全霊で成し遂げましょう!」と力強く号令を発する。

 ジャムサブレーが頭を一つ縦に振った。

 二人がパースリを連れて宙に浮かび、シルキーも後に続く。

 ショコラビスケや他の者、および魔魚族たちが地面で見守る中、パースリが海水溜まりの湖に二系統の魔石を投げ、「増せ(スウェル)」と掛け声を発する。

 湖面が盛り上がってきたところ、ラムシュレーズンが「増幅効果アンプリファイ」を唱える。

 海水面のうねりが八倍の高さに達し、次はジャムサブレーが「呼び水(プライム)」という魔法を施した。

 すると、上方へ膨張している海水が、地下海域の方向へ傾き、流れようとする。

 ラムシュレーズンが「直進ストレイト」を唱えた。パフェがこの瞬間を狙い、美しい銀色の巨体を大きく跳躍してみせる。

 海水溜まりから溢れ出る大量の海水が一本の激流になった。勢いに乗ったパフェの身体も一直線ビーライン、地下海域へ向かう。

 皆が固唾を飲んで眺めている中、ショコラビスケが嬉々として叫ぶ。


「がっほーっ、まさしく大成功に違いねえぜ!!」

「えすとぅぺぇ!!」

「えすとぅぺ、えすとぅぺ!!」

「えすとぅぺんど!」


 魔魚族たちも興奮した面持ちで、口々に「素晴らしい!」を意味する海人類スィーリアン語を発して喝采しながら、パフェを無事に救出できたことを喜んでいる。

 宙に浮いていた三人と一羽が地面に戻った。


「あたくし、胸の内が煮えたぎるように熱く感じますわ。だってパフェさんは、あんなにも懸命に生きようと、渾身の力でお跳ねになりましたもの!」


 大粒の涙をいくつも溢すラムシュレーズンだった。

 ショコラビスケも泣きながら賛同する。


「おうおう首領キャプテン、仰せの通りでさあ。この俺も灼熱の業火フレイムを浴びて、まるで丸焼きにされちまったみたいだぜ。がほほ~」


 他の者も皆、嗚咽が込み上げるのだった。

 感動の余韻アフタグロウがまだ漂う中、フコイダンが話す。


「感謝、海域の広さ越えたなもし」

「そうですか。皆さまも、どうか達者でいて下さいまし」


 ラムシュレーズンが一礼した。

 フコイダンは、「探索するのは構わないが、陸人類ランディアンにとって、地下海域は謎と危険に満ちているはずだから、くれぐれも気をつけろ」という意味の言葉を残し、他の魔魚族を連れて立ち去った。

 パイクが、しみじみと静かに話す。


「銀海竜といえども、オレたちと同じ生き物なのだな。この単純な道理すら、オレは忘れていた……」

「パイク殿、オレもそうだ!」

「ボクも同意します。あの美しいパフェ氏が死にゆく宿命フェイトにあると決めつけていたのかと思うと、顔面から火が噴き出そうです」

「おうおう、どうすれば顔面から火が出るのでさあ?」

「は?」


 戸惑うパースリに代わって、ラムシュレーズンが説明する。


「ショコラビスケさん、顔面から火が噴き出るというのは、あまりに恥ずかしくて顔面が真っ赤になることですわ」

「なんだ、そういう意味ですかい。がほほほ!」


 しばらく他愛のない雑談を続けた後、パースリが「夕刻を迎える前に、地上に戻り、今後どうするか話し合うのがよいと思います」と提言した。

 総員が賛同して、歩き始めようとした時、メカブがひょっこり姿を現す。


「どうなさいまして?」


 ラムシュレーズンが尋ねた。

 するとメカブは、パフェの言葉を預かってきたのだと返答する。救ってくれたお礼に、なにか望みを叶えてくれるとのこと。

 これを聞いたショコラビスケが真っ先に口を開く。


「がほほ、銀海竜の恩返しってえ訳か! それでメカブさんよお、パフェは一体どんな望みを叶えてくれるのですかい?」

「なんでらなもし」

「がほっ、なんでもいいのか? だったら逆鱗を貰いましょうぜ!」

「ショコラビスケさん、それは無茶な望みですわよ」


 ラムシュレーズンは、こういう場合に遠慮する心が大切だと話した。

 メカブは気にする様子もなく、「パフェは丁度、逆鱗が生え替わる時期を迎えているから、いくらでも進呈するでしょう。ここで待っていて下さい」と言い残し、地下海域の方へ走り去った。

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