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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART10 前人未踏の地下海域》謎と危険に満ちた地下海域
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《☆~ 奇妙な洞窟(一) ~》

 グレート‐ローラシア大陸の南方に広がっていた海域は、海水がなくなり、白い砂の地面が現れて、ところどころに海藻ケルプが取り残されている。

 しばらく下り坂が続くため、御用達馬車は、ゆっくり慎重に進んできた。お馬の背丈で十頭分くらいの深さで平坦となり、ようやく速度を増すことができるようになった。

 丁度ここへ、偵察に出ていたシルキーが戻り、「思いの外、引き潮が急激に進行しています」と状況報告をした。潮の引く速度は、全速力で飛行する白頭鷲ボールドイーグルには敵わないけれど、馬車と比べれば、少しばかり上回っているという。

 パースリが神妙そうな表情で発言する。


全世界ユーニヴァース古文書(‐アーカイヴズ)には、一万年周期の引き潮によって、グレート‐ローラシア大陸が百倍も広くなると記されています。陸地の果てに到達するまで、ざっと二百日を要するに違いないでしょう」

「そんな日数、とうてい旅を続けられませんわねえ……」

「女王陛下の仰る通りです」

「仕方ありません。引き返すことにしましょう」


 苦渋の選択をするラムシュレーズンであった。

 その一方で、シルキーが「偵察の途上、奇妙な洞窟を発見しました」と追加の報告をする。

 聞いていたパースリが、瞳を輝かせながら口を開く。


「きっと地下海域に通じる洞窟なのでしょう」

「パースリさんよお、その()()()()ってえのは、一体なんですかい?」

「南方海域の地下には、とてつもなく広い空間があります。満ち潮の期間は、そちらと地上の海域が繋がっていますけれど、引き潮によって地下の水位が下がることで、分離セパレイトした海域が形作られます」

「がほほ。俺さまの頭だと理解が及びそうにねえが、要するに、もう一つ別の海域が、この地面の下に鎮座していやがるってえ訳でさあ?」

「お察しの通りです。シルキー氏が発見して下さった洞窟の奥に、地下海域への入り口があると思われます」

「なるほど。ようやく得心できたでさあ。おうシルキーさんよお、よくぞ洞窟を発見してくれたものだぜ」

「きゅい!」


 さも誇らしげな様子のシルキーである。

 ラムシュレーズンが、ふと抱いた疑問を口にする。


「地下海域には、銀海竜が済んでいますかしら?」

「このボクにも分かりません」

「全世界古文書に記されていませんの?」

「誠に残念ながら、地下海域については、それが洞窟の先に存在すると記されているだけで、他の事項はすべて不明なのです。つまり、地下海域は、前人未踏と呼ぶに値する地帯ゾウンだと言えましょう」

「探索できる余地は、ありますでしょうか?」

「正直なところ、まったく分かりません」

「そうですのね……」

「しかしながら、探索できる余地の有無に拘わらず、ボクには全世界ユーニヴァース学者(‐スコラ)としての誇りと使命ミションがありますから、たとい命懸けになろうとも、探索してみたいと思っています。尤も、女王陛下が賛同して下さればこその探索ですけれど」


 パースリは、ラムシュレーズンの顔面に視線を注ぐ。

 突如、ショコラビスケが大声で口を挟んでくる。


「俺はパースリさんに賛同だぜ! そうでねえと、熟練者エクスパートと呼ぶに値する探索者、ショコラビスケの名がすたるからなあ。キャトフィシュも、そう思うだろう?」

「はい! この僕は、新進気鋭の(アパンカミング‐)探索者イクスプローラに過ぎませんけれど、是非ともショコラあにさんに同行させて頂きたいと、心より願います」

「おうキャトフィシュ、よくぞ決心したなあ。がほほほ!」

「私も地下海域を探索してみたいと思います」


 シロミが胸を張って意気込んだ。ジャンバラヤ氏とシルキーにしても、無言のまま頭を一つ縦に振って、賛同の意思を示す。

 皆の気持ちを知ったラムシュレーズンが意を決する。


「前人未踏の地下海域を探索しましょう!」

「おうおう、さすがは俺たちの首領キャプテンさまでさあ! そうと決まれば、早速、シルキーさんが見つけてきた洞窟へ向かいましょうぜ!!」

「それはいけませんわ」

「がほっ!? 首領、なにがいけねえのですかい?」

「洞窟の探索ともなれば、入念な計画と準備が大切ですもの。一度、ローラシア皇国の街に戻った上で、必要な仕度を整えなければなりません」

「おうおう、首領の仰る通りだぜ!」


 こうして御用達馬車が、進んできた道を引き返すこととなる。

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