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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART10 前人未踏の地下海域》銀海竜の棲む南方海域
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《★~ 魔法具の工房(二) ~》

 ラムシュレーズンたちの通された部屋には、強い異臭が充満していた。

 ショコラビスケが、手で鼻を覆いながら苦言を呈する。


「がっほ、こりゃあ酷い匂いだぜ!」

「昨日、あれを仕入れたのでな。おぽぽ」


 ホイップサブレーが部屋の隅を指差す。そちらには、毒消し十(カミーリオン)薬草プラントが、山のように沢山あるのだった。

 シロミが単刀直入に問う。


「あれは一体、どのように使うのでしょうか?」

「毒の耐性を備えた魔法具インストルメントを作るために必要なのだよ」

「そうですか」

「お茶にもできるから、皆で飲むとしようかねえ?」

「はい、是非とも頂きたいと思います」

「そうこなくちゃ。おぽぽぽ」


 ホイップサブレーは、笑い声を上げて厨房へ向かう。するとシロミが、「私もお手伝いします」と言いながら後を追う。

 一方、ショコラビスケは渋面になって口を開く。


「おうおうキャトフィシュ、覚悟しておけ。毒消し十薬草のお茶ってえのは、強烈な風味フレイヴァでよお、とても飲めた代物じゃあねえからなあ」

「へっ、本当ですか??」

「もちろんだぜ!」

「あの薬草は、確かに独特の香りがありますけれど、医療学者(メディカル‐スコラ)たちの間では、健康によいとして昔から知られているようです。オイル伯母さんも生前、好んで飲まれていました」


 お茶の仕度が整うまでの間、パースリは毒消し十薬草について説明した。

 茶碗カップが皆に渡ると、ホイップサブレーがジャンバラヤ氏に問う。


「アンドゥイユ、わたしのことも忘れているのだろうね?」

「残念ながら、まさしくその通りです」

「記憶を失ったというならば、仕方あるまい。わたしは昔、そなたの母、キャビヂグラッセに、魔法スペルの指導をしていたのだよ」

「そうでしたか。今のオレは、母親すら思い出せません……」


 肩を落とすジャンバラヤ氏である。


「新鮮な銀海竜逆鱗を服用すれば、きっと記憶を取り戻せましょう」

「ラムシュレーズン女王陛下、ありがとうございます!」


 ホイップサブレーがお茶を飲み干した上で、再び口を開く。


「さあてと。ラムシュちゃん、そろそろ本題に入るとしようかねえ?」

「はい。銀海竜と相見あいまみえるに当たり、優勢に戦えるような道具アイテムを備えておきたいのです」

「おぽぽ、そんなところだろうと思っていたよ」

「あたくしたちの頼みごとを、お聞き入れ下さいますか?」

「むろん、そのつもりだよ。なにしろ、わたしは金貨をたっぷり稼ぐために、魔法具屋を営んでいるのだからねえ。たとい相手がラムシュちゃんであっても、お代だけは、きっちり支払って貰うよ。おぽぽぽ~」

「わ、分かりました……」


 ラムシュレーズンは、意図的に明るい笑顔を見せながら、胸の内では「このお婆さん、商売には抜かりがないのだったわね」とつぶやかざるを得ない。

 突如、シロミが問い掛ける。


「銀海竜の動きを鈍らせる効果を持つ矢はありますか?」

「矢尻が白銀しろがね、矢柄には堅く重い紫檀ロウズウドを使った格別な逸品があるよ。一本のお代は、ローラシア金貨で三百枚だけれどね」

「ええっ、そんなにも高価な矢があるのですか!!」


 シロミが思わず目を丸くする。

 ラムシュレーズンが懐から小石を出して、ホイップサブレーに見せる。


「お支払いには、これを使ってもよろしいかしら?」

「おやまあ、雷金光ライトニング系統の魔石だねえ。一系統だから、ローラシア金貨に換金すると、せいぜい五千枚といったところだよ」

「そうしますと、金貨五千枚までなら、魔法具を買わせて貰えますのね」

「むろん、その通りだよ。しかし、あっさり手放してよいのかな?」


 せっかくケールがお詫びの印として進呈してくれた代物を、このような形で使ってしまうのは、ラムシュレーズンにしてみれば心苦しい。

 しかしながら、手持ちの金貨は旅に必要となるから、魔法具を得るため、背に腹は代えられないのだった。

 ここへパースリが口を挟んでくる。


「ラムシュレーズン女王陛下、誠に僭越ながら、お支払いにつきましてはすべて、このパースリ‐ヴィニガにお任せ下さい」

「あら、よろしいのかしら?」

「もちろんですとも。このような状況となるのを想定し、金剛石棒ダイアモンドを二十本、持参しているのですから」


 パースリは、ありありとした自信に満ちる表情で背袋リュックを開く。

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