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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART10 前人未踏の地下海域》銀海竜の棲む南方海域
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《☆~ 銀海竜討伐の仕度(三) ~》

 パンゲア帝国王室にラムシュレーズンたちが帰り着き、四半刻ばかりが過ぎる頃合いを見計らって、剃髪姿シェイヴィングの男性が女王の居室にやってきた。

 彼は他の誰でもなく、政策官長を務めるサトニラ氏である。首を長くして、ラムシュレーズンの帰国を待ち侘びていたという。


「女王陛下におかれましては、長いこくご乗馬になり、たいそうお疲れであられますところ、誠に心苦しい限りにございますけれど、なかなかに大切な事案がありまして、第一報だけでも()()()にお入れしなければと判断しておりました」

「そうですか。聞かせて貰いましょう」


 サトニラ氏が短く「御意ウィル」と発し、平身ハンブル低頭アパロヂの姿勢で続きを話す。


「実は本日、ローラシア皇国より親書が届きましてございます。手短に申し上げますと、帝国女王の即位に祝いの言葉を添えたい旨、および一等政策官の地位ポジションにあるチャプスーイ‐スィルヴァストウンさまが、近く帝国王室を訪問したいとのご意向を示しておられます」

「分かりましたわ。あたくしの方も、エルフルト共和国から折り入って相談したい案件を持ち帰りました。仔細は、明日ということでよろしいかしら?」

「左様の通り、承知致しました」


 サトニラ氏が頭を深く下げてから、速やかに立ち去る。

 一方、安楽椅子カンフォトチェアにいるラムシュレーズンは、胸の内で、「銀海竜の棲む南方海域へ赴くには、ローラシア皇国の領土を通る必要がありますから、承諾を頂くのに、スィルヴァストウン氏の訪問は、まさしく()()()()に違いありませんわね」とつぶやくのだった。


 ・   ・  ・


 朝餉を済ませて女王の居室に戻ったラムシュレーズンが、探索者集団の面子フェイスたちとサトニラ氏、およびジャンバラヤ氏を呼び寄せた。

 皆が円卓を囲むようにして腰を下ろしたところ、丸壺ポットを手にした第三女官のデミタス‐サイフォンが、六客の茶碗カップに温かい小麦茶を注いで回る。

 役目を終えたデミタスが退室すると、ラムシュレーズンが早速、ジャンバラヤ氏をサトニラ氏に紹介する。


「こちらは、鎖鎌の使い手として、なかなかに優秀なお方でいらっしゃいます、アンドゥイユ‐ジャンバラヤさんです。あたくしとショコラビスケさんとシルキーさんが、かつてオイルレーズン女史、マトンさんとともに金竜を討伐しようとした折、ジャンバラヤさんも協力して下さり、並並ならないご活躍をなさいました」


 サトニラ氏とジャンバラヤ氏は、お互いに挨拶の言葉を交わす。

 続いて、ラムシュレーズンが単刀直入に説明を加える。


「ジャンバラヤさんは、トロコンブ遺跡で不運に見舞われてしまい、ご記憶の一切を失っておいでなのです。金竜討伐で成功サクセスを収めるのに貢献して下さったお礼の意味もありまして、あたくしたちの探索者集団は、記憶を回復リカヴァリさせる効果のある秘薬、銀海竜逆鱗を入手しようと計画しているのです」

「女王陛下の仰っておられます()()()というのは、狂暴さにおいて金竜に勝るとも劣らない凶竜きょうりゅうとして名を轟かせる大海竜に相違ありませんか?」

「ええ、その通りですわよ」

「ううーん、なんと返答するものにございましょうか……」


 困窮の気色を隠し切れないサトニラ氏である。ラムシュレーズンが探索者を続けることに賛同しているとはいえ、帝国女王自らが、そんなにも危険な討伐戦に挑むとは、想定し得なかったのだから、これは無理もない。

 言葉を失ったサトニラ氏を前にして、ショコラビスケが口を挟む。


「大きくて強い獲物を狙う俺たちの全神経がたかぶるってえのも、釣り師(フィシャマン)のサトニラさんだったら、把握できるはずでさあ?」

「まさしく道理ですけれど、ラムシュレーズン女王陛下の大切なお身体に、万が一の酷い事態トラブルでもございましたら、このバトルド‐サトニラ、後悔のしようもございません」

「そんな心配は無用ですぜ。この俺さまが全身全霊で戦うばかりか、首領キャプテンラムシュレーズン女史は、死鏡デスミラとかってえ名の、生命ライフを守ってくれる魔法具アイテムをお持ちですからねえ。がほほほ!」


 ショコラビスケが、さも得意気な顔になって話す。

 死鏡の効果を聞いたサトニラ氏は、渋々ながら、ラムシュレーズンたちが銀海竜討伐に挑むことを許諾する。

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