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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART1 キャロリーヌの運命》呪われたメルフィル公爵家の秘密
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《★~ パンゲア帝国皇太子暗殺の話~》

 老魔女は冷め切った茶を啜りながら、物語を続けた。

 命の半分を捨てる覚悟を決めた公爵夫人のこと。呪われた子を身篭っているマーガリーナは、出産する直前まで欠かさず毎日、オイルレーズンが増幅効果アンプリファイという魔法を掛けた銀海竜逆鱗の粉末を服用し続け、無事に赤ん坊を産む。

 それはキャロリーヌが愛し続けた弟、トースターである。


 メルフィル家の子たちは順調に育ち、キャロリーヌが十三歳になった頃のこと。

 パンゲア帝国王室の後宮では、密かに陰謀が企てられていた。それは、第一王妃(ファースト‐レディ)の娘で皇太子、シーサラッドを暗殺するという不敬なこと。

 悪事の主謀者は、第三王妃(サード‐レディ)の立場にある魔女、ベイクドアラスカである。彼女にはボンブアラスカという名の娘がいる。

 先に生まれているシーサラッドが健在である限り、自分の子を次代の女王に就かせるという、第三王妃の切願が叶うことはない。

 実はこの数年前から、ベイクドアラスカは、ローラシア皇国へ手先の魔女を送り込むことで準備を進めてきた。虎視眈眈と、シーサラッドを死に追いやる瞬間を待ち続けたのである。

 パンゲア帝国と形の上では同盟関係にある隣国、ローラシア皇国では、毎年の定例行事として、パンゲア帝国の皇太子をもてなす立食会を行っており、その日が近づいていた。

 ベイクドアラスカがローラシア皇国に送り込んだ手先は、ホーリィ‐シュリンプという偽名を使って、善良な魔女に成り済まし、宮廷で三等調理官に就いていた。

 ホーリィの職務は、料理の毒視どくみをする係の責任者である。要人に出される料理を口にすることなく、魔法を使って毒の有無を調べる役割なのである。

 毒視それは決して失敗の許されない重要な職務だから、四人の調理官が、その任に就いていた。

 立食会の当日、十二歳の少女にしてパンゲア帝国皇太子、シーサラッドに出す前菜アペタイザを、一等調理官であるグリルが四人の魔女に毒視をさせて、問題のないことを確認した。

 しかしながら、大きな落とし穴があった。ホーリィ以外の三人も優秀な魔女だけれど、魔法の実力ではホーリィに敵わず、毒視の魔法が無効化キャンセルされたのである。そしてホーリィ自らも、毒視をしなかった。

 このためにシーサラッドは、グリルから手渡された皿の前菜を口にすることで、苦しみながら倒れ、その場で命を落とすこととなる。

 話を聞いたキャロリーヌは、とても黙っていられない。


「あんまりですわ! 悪いのはすべて、毒観係の責任者をしていたホーリィなのですもの!」

「そうじゃとも」

「なのに、それなのにどうして、お父さまや他の調理官までが、官職を剥がれなければならないというのですか! あまりに非道な話です!」

「それが連帯責任というものじゃ」


 ホーリィたち四人の毒視係は、この大事変が起こるまでずっと、一度も失敗フェイリャせず完璧に職務を遂行してきた。だからこそ、彼女たちが同時に毒視を誤ったりするはずはないと、誰もが考えたのである。

 つまり、優秀な魔女たちでも毒視に失敗するくらいに、極めて巧妙な毒が仕掛けられていたと判断されることになったのだという。

 このような道理を聞かされたキャロリーヌは、決して納得できないけれど、それでも黙るしかなかった。歯を強く噛みながら、老魔女の話を聞くのである。


「立食会で命を落としたシーサラッドのことじゃが、実は、その者の父親はパンゲア帝国王、バゲット三世ではなかった」

「えっ!?」

「本当の父親は竜族なのじゃ」

「そそっ、それでは、パンゲア帝国皇太子は、竜魔女だったのですかっ!」

「ふむ。その通り」

「だからそれで、あたくしのお父さまは、竜魔の呪いを受け……」


 キャロリーヌは言葉を続けることができず、咽び泣くのであった。

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