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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART9 新しいパンゲア帝国王室》ラムシュレーズンの政策
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《☆~ 統治しない女王(一) ~》

 エルフルト共和国の大統領公邸、食堂でキャロリーヌたちの探索者イクスプローラ集団(‐パーティ)と相談役を務めるマトンが、大統領(ファースト‐)夫人レディであるチュトロと一緒に昼餉を済ませ、大統領府御用達の玉葱アニョンの皮茶(ピール‐ティー)を飲んでいるところ。

 チュトロが手にしていた茶碗を置き、穏やかな表情で口を開く。


「キャロリーヌさん、よい機会チャンスでしょうから、例の一件について、この場で打ち明けてみては?」

「ええ、あたくしも丁度、そう思っておりましたの」

「おうおう、首領キャプテンキャロリーヌ女史、一体なんの話ですかい?」

「次のパンゲア帝国女王には、あたくしが就任しますわ」

「がっほ!」

「きゅっ!」

「本当に??」


 当惑した気色で声を発したショコラビスケとシルキーとキャトフィシュ、および無言のシロミを前にして、キャロリーヌが平然と答える。


「はい、紛れもなく本当ですわ。先日、黄土オークル色湖畔(‐レイクサイド)でサトニラさんと密談し、そのように決断するに至りました。以前、先代の首領さまから、あたくしには王位継承者としての義務デューティがあるとお聞きしました。ですから、いざという時には、女王となる覚悟を持っておりましたの」

「そいつは初耳だぜ!」


 突如、政務官パーラメントの女性にいざなわれて、パースリが入ってきた。


「母上、お呼びと聞き及び、急いで駆けつけました」

「お座りなさい」

「はい」


 パースリは、空いている席の一つに腰掛けた。

 シロミが丸壺ポットを手に取り、新しい茶碗に玉葱の皮茶を注いで差し出す。


「ありがとう」

「どう致しまして」

「ふう~、いい香りだなあ。心も身体も落ち着くよ。ところで母上、今日は、どのような用件でしょうか?」

「まずは、パンゲア帝国で見聞きしたことを報告して頂戴」

「了解しました」


 パースリは、サトニラ氏の演説内容、および参列者の反応について、ありのままに一部始終を伝える。

 彼の話が終わるや否や、ショコラビスケが真っ先に声を上げる。


「この俺さまにとって唯一無二と呼ぶに値する大切な釣り師(フィシャマン)の仲間に、あろうことか泥の玉を投げつけやがり、無礼言ディスリスペクトまで働いたってえ不埒な輩には、その後どんな処罰パニシュが与えられたでさあ?」

「パエリア氏なら、なにごともありませんでしたよ」

「無罪放免ですかい。さすがに、サトニラさんは温厚だぜ。がっほほほ!」


 朗らかな顔面を見せるショコラビスケである。

 パースリが、少なからず嬉しそうに問う。


「サトニラ氏が演説で話していたラムシュレーズン王女殿下というのは、他でもなく、キャロリーヌ嬢なのですね?」

「仰せの通りですわ」

「パースリさんよお、女王就任の話題が持ち上がっていたところでさあ!」

「それなら、ボクもじっくり聞かせて貰いましょう」

「俺は歓迎ウェルカムするぜ。首領もそうでさあ?」

「もちろんですとも」


 キャロリーヌは、改めて女王就任を決断するに至った経緯いきさつを話した。

 これを聞いたパースリが神妙そうな表情で尋ねる。


「女王の地位ポジションに就かれるのでしたら、キャロリーヌ嬢は探索者集団をお抜けになるのでしょうか?」

「がほっ、そうなってしまうのですかい??」

「帝国女王として君臨すれば、もう探索へ出掛けられませんね……」


 ショコラビスケとキャトフィシュは、当惑の表情を隠し切れない。

 その一方で、キャロリーヌが頭を横に振る。


「あたくしは、女王となってからも、探索者の首領を続けるつもりです。国の王であろうと民であろうと、誰もが働かなければなりません。君主こそ先頭に立って働くことが、国家を豊かにする上で一番に大切と思うからです」

「女王の生業なりわいが探索者というのは、きっと前代未聞ですね」

「そうでしょうね」


 キャトフィシュに向かって、キャロリーヌが微笑んだ。

 続いて、ショコラビスケが疑問の言葉を投げる。


「だけどよお、民を支配しねえのですかい?」

「支配なぞ致しません。政治はサトニラさんたち政策官のお仕事ですし、パンゲア軍の総大将にしましても、衛兵のどなたかにお任せするのがよいに決まっていますから。あたくしは、あたくしの成し遂げられる職務に専念しますわ」

「つまり、女王は君臨するけれど、統治しないのだね」


 マトンが簡明な説明を加えたお陰で、皆が得心に至るのだった。

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