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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART9 新しいパンゲア帝国王室》揺るぐパンゲア帝国の権威
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《★~ キャロリーヌの選択 ~》

 こちらはエルフルト共和国の中央情報局、長官キャプテンを務めるチュトロ‐ハタケーツが少なからず緊迫した面持ちで、諜報員エイヂェントからの報告に耳を傾けている。

 パンゲア帝国王室で起きた一大事に関する御布令之書ノウティフィケイションが、帝国の至るところで大量に出され、騒然とした状況に陥っているという。

 諜報員が、持ち帰ってきた木材製紙ウドパルプペイパをチュトロに手渡した。

 その文面には、「ボンブアラスカ帝国女王陛下、並びに帝国女王の母殿下は、お立場を退き遊ばす英断をなさり、地下牢獄へお隠れになられた。次の帝国王がご就任遊ばすまでの期間、国民は慎ましく暮らすべし。パンゲア帝国、政策官長、バトルド‐サトニラ」と記されている。

 チュトロが素早く目を通し、平静を装ったまま口を開く。


「ご苦労でした。続報を待つとしましょう」

「はっ!」


 諜報員は腰を折ってお辞儀した上で、そそくさと部屋を後にする。

 その一方で、チュトロは木材製紙を見つめながら、しばらく思案を続けた。


《このような御布令之書を見た国民が不安に駆られることくらい、聡明な政策官長として評判の高いサトニラ氏は承知のはずよね。きっと、なにか大きな意図があるに違いないわ》


 ここに政務官パーラメントの女性が、ひょっこり姿を現す。


「首領キャロリーヌ女史の探索者イクスプローラ集団(‐パーティ)が、パンゲア帝国からご帰還されましてございます。お呼び致しましょうか?」

「そうね、キャロリーヌさんには、きて貰いたいところです。他の方々は、迎賓館で待機して頂きましょう。それから、剣の指導を務めて下さっているマトンさんもお呼びして頂戴」

「はっ、承知致しました!」


 政務官は深々と頭を下げてから、颯爽と立ち去る。

 十分刻(ミニト)ばかりが経ち、キャロリーヌとマトンが赴いてきた。

 チュトロは安楽椅子カンフォトチェアを立ち、部屋の中央にある円卓に二人をいざなって、早速、入手したばかりの御布令之書を見せる。

 読み終えたマトンが、眉をひそめながら話す。


「パンゲア帝国で、また穏やかでない事態トラブルが起きてしまったか……」

「そのようです。お二人にきて頂いたのも、この件について、早いうちに意見を交わしておきたいと考えたからです。特に、帝国王室から戻られたキャロリーヌさんは、きっと詳しい経緯いきさつを知っておられましょうし、お話を聞かせて貰えると期待しています」

「仰せの通りです。あたくしは、先日、黄土オークル色湖畔(‐レイクサイド)へ出掛け、そこでサトニラさんと密談をしました」

「なるほど、あの素晴らしい景観は、政治的な話をするのに打ってつけだよ」


 マトンは得心に至った。

 黄土色湖畔を知らないチュトロは、怪訝そうな表情で問う。


「キャロリーヌさん、密談とは、一体どのような話題ものですか?」

「最初、それを聞くには覚悟が必要との旨、釘を刺されました。そして、この御布令之書に記されている通りの事態をお伝え下さいました」

「どうして、こんな酷い状況に陥ったのだろうか?」


 ふと疑問を口にするマトンだった。


「帝国女王の母殿下がご発狂なさり、お倒れになったのです」


 キャロリーヌは、サトニラ氏から聞いた一部始終を説明した上で、誰にも口外しなかった女王就任の件について打ち明ける。

 聞かされたチュトロとマトンは、驚愕せざるを得ない。


「まあ、なんと!!」

「キャロル、本当かい!?」


 二人を前にして、キャロリーヌは毅然と答える。


「もちろんですとも。あたくしは、正統な王位継承者のラムシュレーズンとして、サトニラさんに、固くお約束しました」

「そんな大役をあっさり引き受けてしまうなんて、キャロルは慎重な性格を失ったのだろうか?」

「仰せの通りです。あたくしは、選択を誤ったのかもしれません。でも、たといそうであっても、傾いたパンゲア帝国を立て直すのに、少しでも貢献したいと思い、決断に至った次第です」

「うん。僕はそれでいいと思うよ。正しいと信じた人生の選択なら、誤りは一つとしてないはずだからね」

「私もマトンさんに同意します。キャロリーヌさん、いえラムシュレーズンさん、あなたが次の帝国女王に就任なさった暁には、エルフルト共和国は、国を挙げて祝福の辞をお送りします」

「ありがとうございます!」


 キャロリーヌは大いに励まされ、もう後戻りできないと覚悟を固めた。

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