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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART1 キャロリーヌの運命》呪われたメルフィル公爵家の秘密
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《★~ 呪詛されるメルフィル家(八) ~》

 老魔女は、キャロリーヌに五杯目の香草茶(ハーブ‐ティー)を注いで貰い、それを啜りながら、物語を続けた。

 魔女族の実質年齢というのは、その者が生まれてから経過した年数に、魔法スペルを使用したことによる副作用の老化分を加えて決まってくるという。


 当時のオイルレーズンは、生後四十四年だったけれど、未成年の頃から魔法をよく使ってきたために、魔女年齢は二百二十歳になっていた。

 使用人が使う女性浴場に仕掛けられていた呪い「脱水症状ディーハイドレイション」は高等魔法(ハイ‐スペル)の一つなので、それを無効化キャンセルするための魔法を使えば、魔女の老化が十年ばかり進んでしまう。

 このために、オイルレーズンの魔女年齢が二百三十歳に達した。

 平均的な魔女族の魔女寿命は三百歳くらいであるから、平均寿命がおよそ六十歳だという「人族年齢」に換算すると、四十六歳ということになる。

 魔女族の保健知識として、「人族年齢に換算した歳が生後年数より少し若いくらいでいるのが健康の秘訣」という学説があるそうだ。魔女族なら誰でも知っているような、こういう豆知識トリヴィアなども、老魔女がキャロリーヌに詳しく話して聞かせるのだった。


「あらまあ、そうしますと当時のオイルレーズンさんは、人族年齢で健康の基準より二歳も老けてしまったのですね?」

「ふむ。その通りじゃとも」

「それなのに、メルフィル家を危機から救って下さいまして、あたくしからもお礼を言わなければなりませんわ」

「なんのなんの、メルフィル家が呪詛された原因は、ラムシュレーズンをグリル殿たちに託したことにあったのじゃ。このあたしが、その全責任を負って対処するのは道理というもの。人族から亜人類なぞと呼ばれておる魔女族じゃけれど、その善良な者であるなら、善良な人族以上に、人の仁義を大切にしている類族じゃからのう。ふぁっははは!」

「そうですわね……」

「兎も角、あたしが生涯で初めて使った無効化キャンセル魔法(‐スペル)によって、メルフィル家の邸に漂っておったは消えた。そして、あたしが命懸けで奪ってきた金竜逆鱗を細かく粉砕して顆粒状となったものを、脱水症状で弱っている女性たちに飲ませてやった。当然のこと、水もたっぷり飲ませた。そうすることで、彼女たちは健康を取り戻せたという訳じゃ。ふぁっはっはっは!」


 オイルレーズンは顎の調子を気にすることもなく、大声で笑っている。

 けれども、話を聞いていたキャロリーヌの表情は暗い。


「ふん? キャロルや、どうした?」

「いえ、その……」

「遠慮なく話せばよい」

「はい。あたくしが疑問に思うのは、ラムシュレーズンさんを狙い、メルフィル家にやってきた魔女なのに、どうして他の者を呪ったのかということです」

「ふむ。それこそが、あの性根の腐った悪魔女、オリーブサラッドの狡猾なところなのじゃ。このあたしが近いうちに戻ってくることを見越して、メルフィル公爵家に厄災事をもたらしおったということ。そうしておけば、仁義を重んじるあたしに無効化魔法を使わせたり、探索で手に入れてきた希少な品目アイテムを消費させたりできるからのう。そういう悪巧みを働くような、善良でない魔女族が、この大陸に沢山おるのも事実。特にパンゲア帝国では、それが顕著なのじゃ」


 ローラシア皇国では、善良でない魔女族を見つけると国外へ追放する方針を貫いているので、他国と比較すると悪魔女が極めて少ない。それでも、監視の目を欺いて密かに潜り込んでくる悪い魔女も、決して少なくはないという。

 一方、パンゲア帝国では規制が緩く、優秀であれば性根の善悪を問わず魔女族を迎え入れたりする。オリーブサラッドのような悪魔女が、第一王妃(ファースト‐レディ)として帝国王室の後宮に君臨し続けてきたことは、その最たる悪例なのである。

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