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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART9 新しいパンゲア帝国王室》少数精鋭の探索者集団
354/438

《★~ 弓を取り戻す作戦(一) ~》

 ディアの逸話エピソウドを語り終えたマトンは、「ずいぶん疲れたから、もう眠るよ」と言い残した上で、よたよたと客用の第六寝室へ向かう。

 そんな弱々しい姿を見送りながら、ショコラビスケが悲しそうにつぶやく。


「颯爽としていたマトンさんが、すっかりじいさんだぜ」

「……」


 キャロリーヌは、言葉が出なかった。

 一方、キャトフィシュが、しっかりした口調で話す。


親爺ファーザは五十年も生きてきたのですから、真の姿と言えましょう。今後は、穏やかな余生を過ごして貰いたいです。そのためにも、この僕は是非とも、なすべき使命を全うしてみせなければなりません。首領キャプテンキャロリーヌ女史、僕らの最初となる任務をお示し下さい!」

「あたくしたちの探索者イクスプローラ集団(‐パーティ)が一番に果たすのは、他でもなく、奪われてしまったシロミさんの弓を取り戻すことですわ」

「え、それを最初に選んでよろしいのでしょうか?」


 驚いた様子で尋ねたシロミに向かって、キャロリーヌが即答する。


「もちろんですとも。先代の首領さまが、あたくしたちにお与え下さった最後の指示ですもの」


 キャロリーヌは、懐に入れていた羊皮紙パーチメントを取り出して、皆に見せる。オイルレーズンがシロミに託した伝書だった。

 これを一瞥した上で、ショコラビスケが問い掛ける。


「シロミさんよお、そもそもあんたの弓を奪ったのは、どこの誰ですかい?」

「パンゲア帝国で道具屋を営む男爵のカカオマス‐サイフォンです。彼は、裏の顔を持っていまして、山賊バンディト集団(‐パーティ)に悪巧みを命じる親玉リーダの立場にあります」


 話を聞いていたチュトロが、おもむろに口を開く。


「カカオマスにはデミタスという名前の娘がいて、パンゲア帝国王室の後宮で、第三女官を務めていることが知られていますよ」

「そのデミタスってえのは、なんだか聞き覚えがあるなあ……」


 首を傾げるショコラビスケを前にして、キャロリーヌが言葉を掛ける。


「お忘れになりましたかしら。月系統の魔女族を蔑む悪い噂を広めたり、アタゴー山麓西門食堂で食材を腐敗させて、大勢をお腹痛(スタマクエイク)で苦しめたりなぞ、悪事を働いた張本人ですわよ」

「おうおう、そうだったぜ! 首領キャロリーヌ女史、俺は、すぐにでも、悪党ヴィレンのデミタスを懲らしめてやりたいでさあ」

「カカオマスというお方から、シロミさんの弓を取り戻す任務が先ですわ」

「首領の仰る通りですぜ! 早速、作戦を練らねえとなあ。がほほ」

「この続きは、夜が明けてからにしましょう」


 キャロリーヌがキッパリと答えた。

 その一方で、ショコラビスケは得心できない。


「がほっ、首領、そりゃあどうしてでさあ?」

「あたくしたちの集団には、相談役のマトンさんがおられます。彼が不在の場で、作戦を練るなぞいけませんわ」

「おうおう、ご尤もでさあ! がっほほ」

「今宵はゆるりと休んで、明日に備えましょう」


 キャロリーヌは、毅然と号令を発した。


 ・   ・  ・


 朝餉を済ませた食堂の中、皆で、玉葱アニョンの皮茶(ピール‐ティー)を飲んでいるところ、この時を待ち構えていたショコラビスケが、意気揚々と口を開く。


「それじゃあ、今から作戦を練りましょうぜ。がっほほほ」

「おいショコラ、それは一体どういう話の流れかな?」

「昨晩、マトンさんが就寝になった後、首領キャロリーヌ女史が、俺たちの探索者集団がやるべき最初の任務を決めて下さいましてね、他のなんでもなく、シロミさんの弓を取り戻す作戦でさあ」

「なるほど、そうだったのか。つまり作戦を練る会合には、相談役である僕が加わる必要があるのだね?」

「さすがはマトンさんですぜ! 爺さんになっても、頭は冴えていらっしゃる」


 これには、キャロリーヌが黙っていられない。


「ショコラビスケさん、いくらマトンさんのお顔に皺が増えてしまい、髪が沢山抜けているからといって、()()()だなんて、あまりに失礼ですわよ?」

「キャロル、ありがとう。でも、そんなことは、砂粒の大きさすらも気にしなくていいよ。なにしろ今の僕は、正真正銘の爺さんだからね。あははは」

「はい。マトンさんがそう仰せでしたら、あたくしに異論なぞ毛頭ありません」


 キャロリーヌが気持ちを抑えて、冷静に言ってのけた。

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