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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART9 新しいパンゲア帝国王室》少数精鋭の探索者集団
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《☆~ 不意にきた客人 ~》

 テリーヌ高原へ出掛けていたキャロリーヌたちが、大統領公邸に戻った。

 第一迎賓室へ向かう途中、政務官の女性が、静かな口調で「お客人の訪問がございました。あなたさま方との面会を希望されておられ、待機なさっています」と教えてくれた。


「あら、どなたかしら?」

「私は一切存じておりませんので、詳しい経緯いきさつにつきましては、大統領夫人からお聞き下さいまし」

「分かりましたわ」


 第一迎賓室の中、若い女性が一人、席に座っている。この不意にきた客人が見知らない者なので、キャロリーヌは、困惑の表情を隠し切れない。

 すぐにチュトロが姿を現し、事情を話してくれる。


「こちらのお譲さんは、あなた方に大切なご用向きがおありとのことで、はるばるローラシア皇国からお越しになりました。お義姉ねえさまの紹介らしいのよ」

「え、首領キャプテンさまと面識がおありですの!?」


 客人が席を立ち、こちらに向かって一礼した。

 キャロリーヌたちも軽く会釈してみせたところ、その者が早速、口を開く。


「シロミ‐デッシュと申します。最初に、謝罪アパロジの言葉をお聞き入れ下さい」

「あらまあ、謝罪ですって??」

「はい。覚えておられないかもしれませんけれど、以前、私は歩むべき道を大きく踏み外してしまったがため、あろうことか、あなたさまとオイルレーズン女史を標的として襲撃を働きました」

「えっ、そうですの!?」


 黙って聞いていたマトンが口を挟んでくる。


「襲撃というのは、もしかすると、第八月の一日目、ローラシア東部国境門に通じる道中でのことかな?」

「はい。私は山賊バンディト集団(‐パーティ)に加わり、この上ない愚行ファリを犯した一人です」

「そうでしたか」


 キャロリーヌが見つめたので、シロミは恥ずかしそうな表情をしながら、折り畳まれた羊皮紙パーチメントを懐から取り出す。


「ラムシュレーズンを名乗るお方がお書きになりました。けれども、あのお方が偉大な魔女族、オイルレーズン女史ではないかと私は推察しておりました。先ほど大統領夫人が、この伝書をご覧になりましたところ、紛れもなく、オイルレーズン女史の筆跡に相違ないと判明した次第でございます」


 シロミは、羊皮紙を開いて、キャロリーヌに差し出す。

 それには、「キャロルや、マトンたちと協力して、シロミ‐デッシュを手伝ってやるのじゃよ。そうした上で、弓使い(アーチャ)のシロミを新しく面子フェイスとして迎え入れ、少数精鋭の探索者イクスプローラ集団(‐パーティ)を目指すがよい」と記されていた。

 キャロリーヌが読み終えて口を開く。


「これは確かに、首領さまのお書きになった字ですわ」


 再びマトンが横から口を挟む。


「シロミ嬢、一つお尋ねしてもよいでしょうか」

「なんなりとどうぞ」

「あなたは捕らえられて、皇国中央の牢獄塔に入っておられたと思いますけれど、大赦たいしゃが実施されたのでしょうか?」

「はい。一昨日、私たち罪人のすべてが釈放されました」

「そうしますと、首領さまも首を跳ねられたりしないで、無事に牢獄塔を出られましたのね!」

「オイルレーズン女史のことでしたら、ホイップサブレーというご親友の営まれている魔法具の(インストルメント‐)工房アトリエへお向かいになりました」


 キャロリーヌは、オイルレーズンが今なお存命と思い、少しばかり瞳を潤ませながらシロミに頭を下げる。


「お教え下さり、ありがとうございます」

「いいえ、どう致しまして」

「それであたくしたちは、どのようにして、シロミさんをお手伝いすればよろしいのかしら?」

「デッシュ家が先祖代々受け継いできました弓の奪還、およびデッシュ家の再興なのですけれど、このように厄介なことをお頼みするなんて、図図ずうずうしいにもほどがあるかと思いまして、恐縮の至りです」


 シロミは、申し訳なさそうな表情で述べた。

 これに対して、キャロリーヌが穏やかな口調で話す。


「あたくしたちは図図しいだなんて思ったりしませんわ。ラムシュレーズンさんのお言葉は、あたくしの思うところと同じですから、恐縮なさる必要なぞ、砂粒の大きさすらもありませんのよ」

「なんと心根のお優しいご令嬢なのでしょう!」

「いえそんな……」


 シロミに凝視ステアされて、今度はキャロリーヌが恥ずかしそうに下を向く。

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