表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART8 月系統魔女族に及ぶ受難》ラムシュレーズンの断罪
333/438

《☆~ 入国拒否の勅令(一) ~》

 キャロリーヌたちは、あと一晩をパニーニ大旅館で過ごし、明日の朝、ローラシア皇国へ帰るという方針を定めた。

 夕餉の料理として総員の賛同で選んだパンゲア銀毛牛ぎんげうし鋤焼すきやきに「舌鼓」を打った後、皆でお茶を飲みながら雑談しているところ。

 武術の競い会合が全世界ユーニヴァースに与える影響について、色々と意見を交わしてから、次の話題に持ち上がったのは、パースリとロッソを結ぶ華燭の典(ウェディング)の日に起きた忌々しい事変について。

 二ヶ月と数日前、ヴィニガ夫妻は、グレート‐ローラシア大陸を一周しようという旅行を計画していた。結婚したばかりの二人にとって、楽しい新婚旅行ハニムーンになるはずなのに、運悪くパンゲア帝国軍によって国境が封鎖され、彼らの予定は変更を余儀なくされてしまう。

 パースリが当時をふり返り、憤りを隠せない。


()()()()()()()という表現は、あのような事態トラブルに見舞われた際に使うのでしょうね。なにしろ、馬車に乗り込み、お馬が最初の一歩を踏み出そうとした途端、国境封鎖の事実を、父上から聞かされたのですから」

「ふむ。その件について、コラーゲンが大いに嘆いておった」


 オイルレーズンも、昨日のことのように覚えている。

 横からキャロリーヌが口を挟む。


「お二人揃って、丁度この国に赴いてこられたのですから、もう一度、新婚旅行をなさればよろしいのでは?」

「都合が悪くないようじゃったら、そうするがよい」

「キャロリーヌ嬢、オイル伯母おばさん、ご提言下さり、ありがとうございます。幸いにして、機械人形オートマタの調査が一段落となりましたし、せっかくの機会チャンスですから、ロッソと二人で、大陸一周の旅を満喫しようと思います」

「ブイヨン公爵との約束は大丈夫ですか。土壌清浄石の調合を、依頼しておられたようですけれど」


 マトンが、少なからず心配そうに尋ねた。

 これにはオイルレーズンが助言する。


「伝書をアントレ殿に送って、予定を遅らせて貰えばよかろう?」

「はい。そのようにしましょう」


 朝を迎え、ヴィニガ夫妻が二度目の新婚旅行に出掛けた。

 キャロリーヌたちは、少し遅れて出立し、アタゴー山麓東門へ向かう。


 ・   ・  ・


 こちらはパンゲア帝国王室、ボンブアラスカ女王の居室である。

 帝国女王の(ザ・クウィーンズ・)マザであるベイクドアラスカが、政策官長を務めるバトルド‐サトニラを従えて入ったところ。

 ベイクドアラスカが替え玉(スタンド・イン)の女王に向かい、おもむろに口を開く。


「そなたの婿が決まったぞ」

「……」


 玉座にいる少女は、あくまで無言を貫く。自身が傀儡パペトで、自身と同じように次の傀儡となる子供を産む()()だけが、彼女の生かされている理由であり、なにをどのように訴えようと、すべてが無駄になると承知しているのだから、それは無理もないこと。

 ベイクドアラスカは、なんら気に掛けず、玉座の近く、絢爛豪華な安楽椅子カンフォトチェアに腰を掛ける。そして、政策官長に険しい視線を浴びせながら話す。


「どのような男が選ばれたのか奏上せよ」

「はっ、僭越ながら、ボンブアラスカ女王陛下の()()()にお入れ奉ります」


 サトニラ氏は、平身ハンブル低頭アパロヂで言葉を続ける。


「幸運の極みにも婿殿下の座をお射止めになった男は、ドリンク軍第二大隊において、一等兵員の階級で所属していたイベリコ‐パエリアという人族にございまして、稀有レアな大剣のお腕をお持ちになっておられます。数々の強い相手を前にして、見事な大剣捌きで次々と打ち倒し、勝ち上がり続けて、いよいよ最終の手合わせを迎えた時、あろうことか、相手が辞退を申し出ました。その男は紛れもなく十分過ぎるほどの強者つわもので、《大陸一の剣士》と名を轟かせるマトン‐ストロガノフ」

「サトニラ!」

「はっ、な、なんでございましょう??」

「そのくらいで済ませておけ。お前は無駄に話が長く、退屈で鬱陶うっとうしいのだ」

「申し訳なく存じます……」


 サトニラ氏が頭を床につけて、丁重に謝罪アパロジの態度を示した。

 その一方で、ベイクドアラスカは別のことを問う。


「新たな衛兵は多く集まったか?」

「総勢三十五名です」

「少ないぞ!」

「ははっ、仰せの通りです。しかしながら、弱い者を軍に加えても役には立ちませんし、武術の競い会合を定期的に開催すれば、ゆくゆくは、大勢の衛兵団員を集められる見通しにございます」

「ふん。釣らぬ鯰の肉算用にくざんようだな」


 ベイクドアラスカが冷たい眼差しで、皮肉の言葉を繰り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ