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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART8 月系統魔女族に及ぶ受難》月系統魔女族を蔑む悪い噂
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《★~ 武術の競い会合(十) ~》

 昼餉の料理は、総員が賛同して、パンゲア銀毛牛しゃぶ鍋に決まった。

 それはオイルレーズンの話していた通り、最高級と呼ぶに値する逸品で、皆は心ゆくまで堪能した。シルキーには、生のままで肩肉の薄切り(スライス)が与えられたけれど、慎ましい彼にしては珍しいことに、お代わりを望んだ。

 ショコラビスケに至っては、食べ過ぎて動けなくなった。それにも懲りず、夕餉の際に、二十枚の厚切り(ステイク‐)牛肉ビーフをお腹に収めて、またしても苦しむのだった。

 このパニーニ大旅館で一夜を明かしたキャロリーヌたちは、立食(ブフェイ‐)形式スタイルと呼ばれる斬新な朝餉を済ませる。そして四つ刻半、貸し馬車に乗り込み、パンゲア帝国王室に向かって出立した。

 十分刻(ミニト)ばかり進んだところ、馭者ドライヴァを務めるマトンが口を開く。


「ラムシュ、右側の窓から、帝国王室が見えるよ」

「わあ、本当に凄い!」


 あまりにも大きいため、建物の全貌を見渡すことは叶わないけれど、白銀に輝く煉瓦の壁を目の当たりにするだけでも、その美しさに、ラムシュは感服せざるを得なかった。

 横からオイルレーズンが口を挟む。


「このパンゲア帝国では、昔から家や施設を造る際に、高さや幅をパニーニ大旅館より大きくしてはならぬと決められておってな、それがため、王室の建物が一番に大きいという状況が続いておるのじゃよ」

「もっと大きい家を造ったら?」

問答無用ノウアーギュメントで取り壊され、家の所有者は、首を跳ねられてしまうわい」

「えっ、なんとおそろしい!」


 思わず身震いをするラムシュだった。

 馬車がさらに走り、帝国王室の敷地へと通じる入場門の前で停まったところ、たちまちにして、四十騎で編成されたパンゲア衛兵の小隊が集結してきた。

 先頭にいる、臙脂色ダークレッド外衣マントを纏った小隊長が、お馬の背中に乗ったまま近寄って、マトンの顔面および背中の剣を、交互に睨みながら話し掛けてくる。


「痩せ馭者、なんの用だ?」

「武術の競い会合に、参加しようと思ってきました」

「後ろにいる連中も皆、そのつもりか?」

「いいえ。僕と竜族の男を除いた者たちは、見物を望んでいます」

「よし。我らについてこい!」


 小隊長が、彼のお馬を駆けさせる。他の騎兵たちは、馬車を取り囲んだ上で、マトンに発車を促す。

 敷地内を、ゆっくりと五分刻ばかり進んだところ、地面が綺麗に均されている、広々とした現場フィールドに辿り着いた。

 馬車の中で、オイルレーズンが囁く。


「ここがパンゲア帝国軍の第一演習場じゃよ」

「沢山の人たちがたむろしているわ」


 ラムシュの言う通り、パンゲア衛兵団に混じり、軍服を着ていない人族および亜人類も、大勢が辺り一帯にいるのだった。


「全員、さっさと降りろ!」

「分かりました」


 マトンが軽やかに下馬する。

 彼に続いて、シルキーを肩に乗せたショコラビスケ、キャロリーヌ、オイルレーズン、ラムシュ、パースリとロッソの順で地面に降りた。


「武術の競い会合に出たいという二人、我と一緒にこい! 見物する者らは、観覧席へ案内させるから、ここで大人しく待機しておれ!」


 小隊長に連れられて、マトンとショコラビスケが立ち去る。

 キャロリーヌたちが指示された通り待っていると、女性の竜族兵が現れた。

 彼女にいざなわれて辿り着いた場所に、土を階段のようにして積み上げる形で、観覧席が造られてあった。その横方向は、お馬の縦幅で百頭にも及ぶほど長く伸びており、六段目が一番上の席で、お馬の背丈だと三頭分の高さに位置している。ざっと見渡したところ、少なくとも三百人が思い思いの席に陣取っていた。

 観覧席前の地面には、白い石を敷いて、六つの円形サークルが描かれている。それらを指差しながら、竜族兵が説明する。


「こちらの端は人族の男性、次が人族の女性、そして竜族の男性、女性、獣族の男性、女性というように分かれ、それぞれ円形の中で手合わせをします。見物を希望の方々は、お好きな席で観覧して下さい。なお、応援の声は許されませんので、くれぐれもお静かに」

「承知したわい。ここまでの案内、ご苦労じゃった」

「どう致しまして」


 竜族兵が軽く一礼し、歩いてきた道を引き返した。

 キャロリーヌたちは、取りあえず、人族の男性が戦う円形の前、三段目の席に横並びで腰を下ろす。

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