表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》利口な金竜から逆鱗を奪う策
298/438

《☆~ 共同戦法(二) ~》

 オイルレーズンが、落ち着いた口調で話す。


「分かり切った道理じゃが、利口な金竜から逆鱗を奪うには、相応の策を用意して臨まねばなるまい」

「はい。首領さまの仰る通りですわ」

「それであたしは、いくつか考えついた戦法のうち、最も危険な一つを採用するのがよいと決めた。じゃから、念のために尋ねておくとしよう。皆、決死の覚悟を持ち合わせておるかのう?」


 老魔女は目を細め、周囲の者たちの顔を順番に覗く。

 ジャンバラヤ氏は、マトンとの手合わせで敗北したことによる心痛が大きく、まるで岩にでもなったかのように、無言で座っていた。そんな彼が、ようやく活気を取り戻したらしく、力強い決心の言葉を吐く。


「今さら言うまでもなく、オレさまの覚悟は万全だ!」

「おうおう、この俺も同じですぜ!」

「あたくしも、全身全霊で戦いますわ!」

「きゅい!」


 ショコラビスケとキャロリーヌおよびシルキーも、躊躇ためらいなく答えた。


「私たちにも覚悟はあります。叔父さま、そうでしょう?」

「ああ、当然その通りだとも」


 ブイヨン公爵が、自信に満ちた笑顔を見せる。

 一方、マトンは黙り込んでいるのだった。そのため、横からジャンバラヤ氏が、怪訝そうな表情で問い掛ける。


「剣士殿どうした! この期に及んで、臆病風に吹かれでもしたのか?」

「いいや、僕に限って、そんなことは毛頭ないよ」

「だったらどうして、死んだ貝のように口を閉ざしていたのだ!」

心外リグレトだなあ。僕の覚悟は、いくらか重いものだからね、それがため最後の最後になってから、口に出そうと考えていたのさ」

「なんだ、そういう理由か。まさしく小賢こざかしい魂胆だ!」


 ここへショコラビスケが割り込んでくる。


「マトンさんよお、()()()()()()ってえのは、一体どんな意味でさあ?」

「それはつまりねえ、街で僕の帰りを待ち詫びている淑女レディたちに、再び僕の明るい顔を見せて、彼女たちを喜ばせてやりたいという思いが強いから、その分だけ覚悟が重くなるのさ」

「なんだそりゃ! いつになく神妙な面持ちで仰るものだから、てっきり俺は、よほど深刻な一大事かと、少なからず心配になりましたぜ!」

「ふむ。マトンは、相変わらず気障り(アフェクテド)な男じゃのう」


 オイルレーズンが苦言を呈した上で、話を元に戻す。


「あたしらの共同戦法についてじゃが、金竜が現れ、芋の酒(ヤム-スピリツ)を飲んで酔いが回るまでは、誰も手を出してはならぬ。アントレ殿、この約束を守って頂けますかな?」

「もちろんですとも」

「ならば続きを話すとしよう。金竜が業火フレイムを吐きおったなら、酔いの回った証じゃから、それを合図サインとして、アンドゥイユが正面に立って、鎖鎌で攻撃を仕掛けるのじゃよ」

「オイルレーズン女史、このオレは、威嚇でなく、真っ向から金竜を攻撃するのですね?」

「そうじゃとも」

「了解!!」

「キャロルとシルキーには、決めてあった通り、空から牽制チェクをして貰う」

「分かりましたわ!」

「きゅい!」


 共同戦法においても、キャロリーヌとシルキーの役割に変更はなかった。


「ショコラは石を投げて、アンドゥイユの援護をするのじゃ。その際、無理に金竜の目玉を狙わずともよい」

「おう、分かりましたぜ!!」

「アントレ殿は、金竜の背後から、小瓶を結んだ矢を放てばよい」

「了解です」

「そしてデセールの役目は、アントレ殿の護衛に徹するのじゃな」

「はい、承知しました」


 ブイヨン公爵たちも、彼らの考えていた働きと、おおよそ同じである。


「あたしは、マトンを連れて空中を飛び、急襲を仕掛ける。金竜の胸元へ一直線ビーラインに突き進み、マトンが剣で逆鱗を斬り刻む。一気に決着エンドをつける策じゃわい」

「首領、そんな見事に、大成功を収められますかねえ?」

「分からぬが、迅速にせねばなるまい。なにしろ利口な金竜じゃから、自身の活力が減っていると気づけば、死にもの狂いで猛反撃してきよるに違いない」

「それもそうでさあ」

「兎も角、首領さまのお考えになった共同戦法に従うことが大切ですわ」

「ふむ。これで話は終わりじゃよ」


 誰一人として、オイルレーズンに異を唱える者はいなかった。

 早速、総員が腰を上げて、シシカバブ湖へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ