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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》利口な金竜から逆鱗を奪う策
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《☆~ 臨戦態勢(一) ~》

 各自が金竜討伐の準備に勤しむ間、オイルレーズンだけは毛布にくるまり、ぐっすり眠っていた。

 石集めをしているショコラビスケは、自身の頭上をキャロリーヌとシルキーが飛び回るので、気になって空を見上げたりした。そのため、マトンから「僕たちは、やるべき仕事に集中しなければならないよ」と咎められる。


 八つ刻半、オイルレーズンが目醒めた。

 それから数分刻の後、役割を終えたマトンとショコラビスケが、こちらに帰ってくる。オイルレーズンは、早速、二人に問い掛ける。


「石は、どれほど用意できたのじゃな?」

「ざっと二百はあるはずでさあ! ですが、それだけ沢山を集めるのに、俺たちの労力は多大なものでしたぜ。なにしろ、そこら中に石が転がっていやがりますが、ほとんど丸いのばかりですからねえ。そいつを鋭く尖らせるために、片っ端から砕くのが大変だってえ訳でさあ」

「確かにそうだね」

「ふむ。二人ともご苦労じゃった」

「へいへい、なかなかに気張きばりましたぜ。がっほほほ!」


 収集した石は、四つの箇所ポイントに分けて配置したという。

 丁度ここへ、キャロリーヌとシルキーが空から降りてきた。


首領キャプテンさま、ただ今、戻りました」

「きゅれりぃー!」

「牽制の修練は、それなりにはかどったかのう?」

「はい。シルキーさんが、とても丁寧に模範を見せて下さいましたお陰で、本当に調子よく、練習に打ち込めました」

「それはなによりじゃわい。シルキーや、よく務めを果たしてくれたのう」

「きゅえ、くうっこぉ」


 彼は、「いいえ、どう致しまして」と謙遜した。

 横からショコラビスケが割って入る。


「なるほど、そんな事情があったのでさあ。キャロリーヌさんとシルキーが、俺の頭上を飛び回るから、なんの真似だろうかと、少しばかり悩んだのですが、やっと得心に至りましたぜ。がほほほ!」


 キャロリーヌたちが牽制の練習をするに当たり、ショコラビスケは、金竜に見立てられていたということ。


「兎も角、早めに夕餉を済ませておくとしよう」

「はい、すぐに仕度しますわ」

「キャロル、僕も手伝うよ」

「あらマトンさん、助かります!」


 用意されたのは、乾麺麭ビスケット乾燥肉ヂャーキ、および瓶詰の果汁という簡素な品々だけれど、誰一人として、不服に思うことなく食した。

 それから、鍋で毒消し十(カミーリオン)薬草プラントを大量に作り、オイルレーズンが三杯、キャロリーヌとマトンが一杯ずつを飲んだ。ショコラビスケも、茶碗カップに半分を注ぎ、渋々ながら喉に流し込む。


「さあて、金竜を迎えるとしよう」


 腰を上げたオイルレーズンが、いくつか指示を出す。

 ショコラビスケが鍋を岩陰まで運び、キャロリーヌは、杓子を使って丸壺ポットに薬草茶を満たす。背袋リュックなども抜かりなく、岩陰に隠しておく。

 マトンは、湖畔に置かれた酒樽バレルの上蓋を割ってから、こちらへ駆けてきた。

 彼らの動きを見守っていたオイルレーズンが、おもむろに口を開く。


「ふむ。準備が万端に整ったわい」

「おうおう、今度こそ臨戦態勢でさあ!!」

「いいや違う」

「がほっ、違うってえのは、一体どういうことでさあ!?」

「ショコラたちは、今から寝るのじゃよ」

「へっ、そりゃあ本当ですかい??」

「もちろんじゃとも。いつ金竜が現れるか、推察のしようもないのでな、皆が夜通し起きて待つ必要なぞない。あたしが一人、見張っておれば十分じゃよ」


 オイルレーズンは、懐から小袋を取り出して開く。その中に、三種類の豆が数粒ずつ入っている。


「白を一つ食すがよい」

安眠豆あんみんずですわね?」

「その通りじゃよ」

「美味いのですかい?」

「ただの豆と同じ味わい(フレイヴァ)じゃよ。ショコラは、食したことがないかのう?」

「白いのは、たぶん初めてですぜ。赤と黒は、アラビアーナの地下迷宮で、パースリさんから頂いたと思いますがねえ」


 ショコラビスケは、豆を口に入れて噛み砕いた。

 マトンとキャロリーヌも、受け取って食す。


「この一粒で、僕たちは静かに眠れるね」

「仰せの通りですわ」


 キャロリーヌたち三人が並んで腰を下ろし、毛布ブランケトを纏って就寝する。

 その一方で、オイルレーズンがシルキーにも言葉を掛ける。


「遠慮することなく、今のうちに休んでおくがよい」

「きゅい」


 いつどのような場所であろうと、わざわざ安眠豆に頼るまでもなく、望むままに眠れるのが、シルキーの長所と言えよう。

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