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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》シシカバブ湖への険しい山道
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《★~ 蒼の洞窟(二) ~》

 釣りの競い合いには、キャロリーヌも、いわゆる「飛び入り」での参加を決め、オイルレーズンだけが一人、傍観者バイスタンダに徹する。

 少しばかり緊張した面持ちのキャロリーヌに、マトンが微笑みながら問う。


「確か、魚釣りは二度目になるね?」

「仰る通りですわ。以前、パンゲア帝国の王室へ訪れました折が、初めての体験でしたから」


 黄土オークル色湖畔(‐レイクサイド)へ散策に出掛けた時の思い出が、キャロリーヌの脳裏に蘇った。

 開始早々、ショコラビスケが一匹目を釣り上げるけれど、その獲物は、残念ながら、小さな山岳さんがく泥鰌どじょうだった。

 こうして、三人による競い合いが半刻ばかり続き、オイルレーズンが終了を呼び掛ける。


「さあてと。ここまでにするかのう」

「はい。あたくしは、蒼竜鯰そうりゅうなまずが二匹だけでしたわ」

「僕は、鯰が二匹と泥鰌が五匹だったよ」

「つまり、俺さまが勝ちだぜ! がっほほほほ!!」


 八匹の山岳泥鰌を釣ったショコラビスケは、誇らしげに胸を張る。

 しかしながら、オイルレーズンが即座に異を唱える。


「違うわい」

「がほっ! 首領キャプテン、違うってえのは、一体どういう訳でさあ!? 俺の釣った数が一番多いはずですぜ?」

「蒼竜鯰を釣る競い合いじゃったからな、キャロルとマトンが引き分けて、ショコラは負けたのじゃよ」

「がほ……」


 肩を落とすショコラビスケであった。

 マトンが火を熾し、鯰を姿焼き(ホウル‐グリルド)にする。発酵豆油ソイソースを塗って調理するので、芳ばしい香りが辺り一帯に漂い、それのお陰で、ショコラビスケが元気を取り戻す。


「おう、美味そうな匂いだぜ! がっほほ!」

「本当にそうですわね。うふふ」


 丁度ここへ、シルキーが飛んできた。


「あら、お帰りなさい」

「きゅれりぃー!」

「ご苦労じゃった。ブリオッシュに会えたのじゃな」

「きゅい!」


 キャロリーヌが泥鰌を差し出すけれど、シルキーは「ありがとうございます。でも夕餉は済ませてきました」と辞退する。伝書を届けた謝礼で、一つ角(ユーニコーン)穴兎(‐ラビト)の新鮮な肉を振る舞って貰えたという。


「ならば泥鰌それらは、油で揚げて、あたしらが食すとするかのう」

「ええ、是非そうしましょう」

「がほほ、そいつは名案でさあ!」


 ショコラビスケが喜んで、背袋から丸鍋と菜種油(カノーラ‐オイル)を取り出す。


「味つけは、どのようにしますかい?」

「揚げた上で、塩をパラパラふり掛ければよかろう」

「了解でさあ!」


 キャロリーヌたちが食事を楽しんでいる間、シルキーは自ら進んで偵察の任務を引き受けた。アイスミント湖の周辺を飛び回って、危険や異常な事態がないかどうか、目を光らせようというのである。


「いつもながら、懸命に働いてくれるものじゃわい。ふぁっはは!」

「ええ、ご立派な使い鷲さんですわねえ」

「その点は、この俺もよく分かっていますぜ。がほほ」


 夕餉の後、キャロリーヌが用意した香草茶(ハーブ‐ティー)を飲みながら話しているところ、シルキーが舞い戻り、あわてた様子で報告する。

 話を聞いたオイルレーズンが、思わず声を震わせる。


「なんじゃと、魔女族が倒れておるのか!?」

「きゅい!」


 シルキーは見てきた状況を、ありのままに伝えた。魔女年齢で九十歳くらいの者が一人、湖の向こう岸に横たわっており、彼女のすぐ近くには、赤毛の牝馬も倒れていた。これは放っておけない事態だと判断したシルキーは、「もしもし、大丈夫ですか?」と二度ずつ呼び掛けてみるけれど、なんら返答がなかった。両者ともに呼吸はあったので、ただ気を失っているだけらしいと推察し、知らせるために帰還したとのこと。

 キャロリーヌが心配そうな表情で提案する。


「そのお方とお馬さんを、急ぎ救助しませんと!」

「ふむ。そうするとしよう」


 オイルレーズンは三杯目の香草茶を飲み干し、直ちに腰を上げる。


「シルキーや、先に現場そこへ行って、悪い虫や鼠なぞが寄りついてこぬよう、しっかり見張ってくれるかのう?」

「きゅい!!」


 威勢よく答えるや否や、シルキーは湖上を一直線ビーライン、疾風のように飛ぶ。


首領キャプテン、キャロリーヌさん、俺の肩にお乗り下せえ」

「そうするとしよう」

「はい!」

「そんじゃ、しっかり掴まってて下せえよお!!」


 ショコラビスケもまた、威勢のよい掛け声とともに駆け出し、マトンが後れを取らないように全速力で続く。

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