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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》シシカバブ湖への険しい山道
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《★~ 蒼の洞窟(一) ~》

 やがて川はすっかり消えてしまい、おそろしい毒蟹の姿もなくなった。


「マトンさんよお、危険な霧の渓谷が、ようやく終わりですかい?」

「うん、その通りだよ」

「怪我もなく、こうして無事に進めてよかったぜ。がほほほ!」


 喜びを顔面で表わすショコラビスケだった。

 キャロリーヌがオイルレーズンの方を見ながら、ふと抱いた疑問を口にする。


「先ほどの渓流は、どのようにしてできますのかしら?」

「山の内部に湖があってな、その水が地中を通って湧き出ておるのじゃよ」

「あら、そういう仕組みですのね」


 突如、崖の上から、白頭鷲ボールドイーグルが疾風のように舞い下ってきた。


「あらシルキーさん、お帰りなさい」

「きゅれりぃー!」

「ご苦労じゃった。フォカッチャに会えたのじゃな」

「きゅい!」


 防竜砦ヶ村の長老エルダと金竜討伐隊がどういう状況にあったか、シルキーが詳しく説明してくれた。

 その話によると、シシカバブ湖に到達する手前の難所で、一人だけが集団パーティからはぐれてしまうという事態トラブルが起きたらしい。そのため今日まで懸命に捜し続け、先ほどやっと見つけ出すことができた。その者は両足を負傷しており、自力で動けないけれど、兎も角、命に別状がなかった。シルキーが届けた伝書で村の一大事を知った長老は、金竜討伐の即刻中止を決断するに至る。


「つまり、フォカッチャらは、こちらへ向かっておるのじゃな。ブリオッシュも大いに気掛かりじゃろうから、一刻でも早く知らせてやるのがよいわい」

「そうですわね」

「ショコラや、道具アイテムを頼む」

「了解でさあ!」


 ショコラビスケは、背袋の中からペン木材製紙ウドパルプペイパを取り出す。

 オイルレーズンが受け取り、シルキーから聞いて知り得たフォカッチャたちの動向を簡潔に記す。


「ブリオッシュは、防竜砦ヶ村から南の渓谷に沿って斜面を西へ進んだ先、馬栗マロニエの樹林を抜けたところへ行っておる。急ぎ届けてやってくれるかのう?」

「きゅい!!」


 伝書がまた一つ、シルキーに託された。

 キャロリーヌたちは、乾いた岩場を進む。谷の幅が次第に狭くなり、ついに左と右の崖がぶつかる地点ポイントに到達した。目前に巨大な岩が横たわっている。


「おうおう、行き止まりですぜ!?」

「いいや違う」

「がっほ! まさか、こんな絶壁を登ろうってえことですかい?」

「いいや、それも違っておるわい」


 オイルレーズンが、真っすぐ前方を指差す。


「岩の裏へ回ると、地面に穴があってな、あおの洞窟へ続いておる」

「洞窟ですかい??」

「そうじゃとも。さあ進むとしよう」

「へい、分かりましたでさあ!」


 ショコラビスケが松明トーチを持ち、意気揚々と先頭に立つ。

 地面が裂けるようにしてできた穴は、緩やかな下り坂になっていた。歩き続けて一つ刻ばかり経った頃、先の方から光が見えた。

 さらに四半刻を掛けて進み、広い空間に辿り着いた。壁や地面が蒼い輝きを放っている。


「地面の中だってえのに、やけに明るいでさあ!」

「本当に美しい光景ですこと!」

「ここが蒼の洞窟じゃよ。蒼竜石そうりゅうせきと呼ばれる発光鉱石(ルーミナス‐オー)を沢山含むのでな、このように輝いておる」


 もう少し先へ進むと、目前に湖が広がっていた。

 いっそう蒼い水面が静かに揺れており、キャロリーヌが感嘆の声を上げる。


「あら、まさに()()()ですわ!」

「アイスミント湖という名じゃよ。地中でシシカバブ湖と繋がっておる」

「そうしますと、不浄な水ですの?」

「いいや、シシカバブ湖とは違って、不浄というほど悪くはないわい。毒蟹なぞもおらぬよ。ふぁっはは!」

「それは安心ですわね」


 夕刻を迎えているから、この場所で夜を過ごすことに決まった。

 オイルレーズンがショコラビスケに向かって話す。


蒼竜鯰そうりゅうなまずというのがおるから、釣ってみるがよい」

「そいつは美味いですかい?」

「味のよさじゃったら、銀竜鯰ぎんりゅうなまずに劣らぬわい」

「おうおう、そうと知ったからには、釣り好きの俺さまが活躍しますぜ!」


 ショコラビスケが背袋を地面に置き、早速、鯰を釣る仕掛けを用意する。


「マトンさんも、やりなさいますかい?」

「そうだね」

「だったら、どちらが多く釣るか、競い合いましょうでさあ!」

「受けて立つよ」


 マトンは意気込んで、挑戦に応じるのだった。

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