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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》シシカバブ湖への険しい山道
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《☆~ 防竜砦ヶ村(二) ~》

 キャロリーヌたちは、取りあえず昼餉を再開した。

 料理は、山荘を出立する際に、トングが餞別ギフトとして持たせてくれたもの。どれも美味だから、いわゆる「舌鼓」を打って味わう。


「この野菜汁ヂュースは、粘り気があって濃厚ですわね」

「擂ったヤムが入っておるのじゃよ」

「こりゃ俺にとって、大切な風味フレイヴァだぜ!」

「あら、そうですの?」

「おうよ! 俺さまは、肉が一番の好物だから、つい忘れちまうけれど、肉の次に芋が好きなのでさあ。この野菜汁が思い出させてくれたぜ。がっほほほ!」


 楽しげなショコラビスケである。

 その一方で、キャロリーヌは、離れて待つ少女を気にしていた。


「ブリオッシュさんは、シシカバブ湖へ出向かれている長老エルダさんと金竜討伐隊の方々を、心配しておいでなのでしょうね。お気の毒ですわ……」

「そうじゃのう」

「長老さんは、ブリオッシュさんのお爺さまに当たりますのね?」

「いいや違う」

「え、違いますの??」

「ふむ。長老は、フォカッチャという女性じゃからのう」


 ここへショコラビスケが口を挟む。


「つまり、ブリオッシュさんの婆さんですかい?」

「そうじゃとも」

「だったら、爺さんの方はどうしたでさあ?」

「あたしが以前この地を訪れた折、フォカッチャの主人ハズバンドは他界したと聞いた。息子が一人おったが、それがブリオッシュの父親なのじゃろう」

「おうおう、後で尋ねましょうぜ!」


 キャロリーヌが、ふと思った疑問を口にする。


防竜ぼうりゅう砦ヶ村(とりでがむら)の方々は、どうして金竜討伐なぞに赴かれますの?」

「エルフルト共和国内で最大の芋作(ヤム‐)地帯エアリアだからね。金竜が麓へ下りないようにする、まさに砦としての役割を担っているのさ」

「マトンさんよお、金竜と芋作地帯に、どんな関係があるのですかい?」

「金竜は芋が大好物だから、収穫前の畑を食い荒らしにくるのだよ。すると村人が討伐隊を編成して、シシカバブ湖に赴き痛めつける。金竜も懲りるから、しばらく村にやってこない。次の収穫時期を迎えれば同じことが繰り返されるけれど、結果として、金竜を麓へ行かせないで済んでいるという訳さ」


 このような説明を聞いたところで、キャロリーヌは得心に至らない。


「村の方々は、お芋が収穫できませんと、さぞお困りになりますでしょ?」

「いやあ、取り立てて困りはしていないと思うよ。芋は、金竜をおびき寄せるためだけに栽培しているのだからね」

「そうしますと、村での暮らしは、どのように支えられていますの?」

「エルフルト共和国が、十分な金貨を支給しているのだよ。そのお陰で生活するのには、なんら困りはしないのさ」

「そうですのね」

「畑を荒らしにきやがるなら、どうして、その場で討伐しねえのでさあ?」


 これには、マトンに代わってオイルレーズンが答える。


「金竜を畑で怒らせると、村に甚大な被害が及ぶわい。辺り一帯が焼き尽くされてしまうでのう。そうならぬよう、わざわざシシカバブ湖まで討伐隊が赴いておるのじゃよ」

「おう、言われてみると、確かにそうでさあ。がほほほ!」


 昼餉を済ませた後、一行は直ちに出立する。台地には広大な芋畑があって、その先に、防竜砦ヶ村があるという。

 道中、ショコラビスケがブリオッシュに問い掛ける。


「フォカッチャさんの息子は、あんたの親爺ファーザさんでさあ?」

「まさしくその通りです。名をディニッシュと称します」

「がほほ、やっぱりそうだったぜ。親爺さんは息災ですかい?」

「三年前の今頃、命を落としました。金竜の業火で、丸焼きにされたのです」

「がほっ! 余計なことを聞いちまって済まないぜ!」

「拙者は平気です。父の後を継いで前線フラント隊長(‐リーダ)という大役を担っておりますゆえ、誰よりも強くあらねばなりません」


 ブリオッシュが笑顔で、誇らしげに話すけれど、その健気な姿を目の当たりにして、ショコラビスケの胸が痛むのだった。


「ずいぶんと昔だがよお、俺の親爺も、金竜と戦って丸焼きだぜ」

「それは、誠にお気の毒です」

「おっ、おう。あんたの親爺さんもな……」


 とても気不味くなってしまい、しばらく誰も話さない。

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