表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》シシカバブ湖への険しい山道
276/438

《☆~ 防竜砦ヶ村(一) ~》

 キャロリーヌは、ちょっとした疑問を抱く。金竜が、どのような方法で山を大爆発させたのか。その際に現れた機械人形オートマタは、どうして大空を飛べたのか。トロコンブ遺跡にいた少女の人形は、その一つなのか。

 これに対して、オイルレーズンたちが考えを述べる。


「なにしろ大昔のことじゃから、あたしらには、知る由もないのう」

「はい。言い伝えというのは、なにかと尾鰭がつくからものですし、どこまでが真実なのか、見極めは難しいと思います」

「俺さまよりずっと利口なマトンさんが、そう仰せになるのだから、俺さまの頭では、砂粒の大きさすらも分かりゃしねえぜ。がほほ!」


 キャロリーヌの疑問は解消されないまま、オイルレーズンが、「さあて、休憩は終わりとするかのう」と号令を発して、一行は腰を上げる。

 道が急激に険しくなるので、登山用命綱ライフラインを身体に結び、ゆっくり進む。四人の頭上をシルキーが飛び、周囲に危険はないか、目を鋭く光らせた。


 黙って半刻ばかり進み、岩の多い坂もようやく終わる。そして、開けた台地に達したところ、ショコラビスケが、大きなお腹をさすりながら問う。


首領キャプテンオイルレーズン女史、そろそろ昼飯の頃合いでさあ?」

「ふむ。六つ刻じゃから、ここらでまた、休憩を挟むとするかのう」

「おうおう、その言葉を待っていましたぜ!」


 喜ぶショコラビスケに、マトンが話し掛ける。


「いつもながらキミは、昼餉の刻限を知らせる()()と呼ぶに値するね」

「マトンさんよお、そいつは逆ですぜ」

「えっ、一体どういう意味だい?」

「刻限の方が、俺さまに空腹を知らせてくれるのでさあ。がほほ!」

「なるほどね」


 ここにキャロリーヌが、笑みを浮かべながら口を挟む。


「刻限が空腹をお知らせ下さるって、あたくしにもありますわよ」

「がほほ! キャロリーヌさんも、そうだったでさあ」

「はい」

「つまりよお、俺とキャロリーヌさんは、まったく同じってえ訳だぜ!」

「あ、あの、まったく同じというのでもなく……」


 キャロリーヌは苦笑いして、ショコラビスケのお腹をチラリと見る。

 兎も角、休憩しやすい場所へ移動して腰を下ろす。山荘で貰っておいた乾燥肉ヂャーキ麺麭パン野菜汁ヂュースを食し始めると、幼い少女が一人、杖を地面に突き立てながら、こちらに向かってきた。


「おう、マトンさんよお、ありゃまさか、機械人形ですかい?」

「いやあ、そんなはずはないだろう」


 キャロリーヌが少女に話し掛ける。


「あたくしはキャロリーヌ‐メルフィルですわ。あなたは?」

拙者せっしゃ防竜ぼうりゅう砦ヶ村(とりでがむら)長老エルダが第一番目の孫にして前線フラント隊長(‐リーダ)、名をブリオッシュと称します」


 少女は、杖で身体を支えながら、深々と頭を下げる。


「お若いようですのに、隊長さんでいらっしゃるのね。あたくしたちになにか、ご用でもありますのかしら?」

「配下の斥候スカウトより、探索者イクスプローラ集団(‐パーティ)おぼしき人族と亜人類が四名、並びに白頭鷲の一羽が目下もっか接近中アプロウチと申し送りのありましたゆえ、前線隊長である拙者が拙い足にて、お出迎えにまかり越しました次第です」


 オイルレーズンが横から、少女に労いの言葉を掛ける。


「ご苦労じゃった。足は痛まぬかのう?」

「お気遣いのほど、かたじけなく存じます。なれど、なんのこれしきです」

「ほほう、さすがは長老の孫じゃわい。ふぁっははは!」

「旧知の間柄でいらっしゃいますのね」

「いいや違う」

「え、違いますの!?」

「彼女と会うのは、今日が初めてじゃわい」

「あら、そうでしたか……」


 てっきり二人が知り合い同士なのだと思ったけれど、いわゆる「早合点」に過ぎなかった。


「あたしが以前、この地を訪れたのは、十七年ばかり昔じゃった。当時、そなたは生まれておらんかったじゃろう?」

「まさしくその通りです。拙者、よわい十一ですゆえ」

「時に、長老エルダは息災かのう?」

「十五日前、金竜討伐隊を率いてシシカバブ湖へと出向き、まだ戻りません」

「そうじゃったか。無事であればよいがな」

「まさしくそう祈ります。あっ、お食事のところを遮ってしまい、大変申し訳ございませんでした。あちらにてお待ち申し上げますゆえ、拙者に構うことなく、どうぞお続けなさいませ」


 ブリオッシュは、お辞儀した上で、少しばかり離れて待機する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ