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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》シシカバブ湖への険しい山道
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《☆~ 金竜に纏わる伝説 ~》

 アイスミント山岳は、五千年あるいは一万年ともいう遙かな昔、大空を突き破る高さを誇っていたとされている。

 いつしか、空の上を探索する目的で、人族が多く踏み込むようになった。

 美しく穏やかな山岳が、広い範囲に渡って荒らされる。それがため、この地帯ゾウンを守る金竜の怒りが頂点に達し、人族たちを戒めるために大爆発を起こす。山頂が大きく崩れてしまい、巨大な穴が広がる。永い年月を経るうちに、そこへ水や泥が溜まり、やがてシシカバブ湖ができ上がった。

 キャロリーヌは、この逸話エピソウドを聞いて、壮絶な光景を思い描きながら、率直に感想を述べる。


「遠い大昔、そのように劇的な物語ドラーマがありましたなんてこと、あたくし、とっても驚きましたわ!」

「ふむ。金竜にまつわる伝説として、アイスミント山岳だけでなく、広く大陸の各地で語り継がれておるのじゃよ」

「あたくしたちが、こうして山に足を踏み入れてしまい、金竜は、きっと激しく怒りますわね?」

「まさしく、怒り狂うに違いない。じゃが、その怒りが大きければ大きいほど、得られる逆鱗げきりんの質も高まる」


 ここにショコラビスケが、威勢よく口を挟んでくる。


「だったら存分に怒らせた上で、極上等マクスィマムの逆鱗を奪ってやりましょうぜ!」

「ショコラや、怒らせ過ぎて丸焼きとなってしまわぬよう、くれぐれも気をつけるのじゃよ。ヴァニラの二の舞いじゃからのう」

「がほほ、了解でさあ……」


 金竜の吐く灼熱の業火フレイムで、父親が命を落とした。ショコラビスケは、幼い頃に知らされた悲劇を思い出すと、どうしようもなく気分が滅入めいってしまう。

 一方、キャロリーヌは、トロコンブ遺跡の五階層で遭遇した機械人形オートマタの杖が気に掛かっている。


赤熱光(グロウ‐レイ)は、一体どのように生じますのかしら?」

「鉄の刃を一瞬にして溶かしおったからのう。自然の炎では無理じゃし、そうかといって、魔女族が放つ雷金光ライトニングの類でもないわい」


 オイルレーズンですら、あのように強烈な赤熱光を放つ魔法具インストルメントは、長い生涯で初めて目の当たりにした。そもそも、たった一日だけですべてを調べ尽くせる訳もなく、ほんの僅かを知ったに過ぎない。


「おそらくパースリたち全世界ユーニヴァース学者(‐スコラ)の集団が、改めて調査するじゃろう」

「僕は、ヴィニガ子爵の話された推察が気になります」

「機械人形が、人族をあやめるということかのう?」

「はい、まさしくそれです。あんなにも危ない機械が多く集まって部隊になれば、人族にとって、大きな脅威になります……」

「ふむ。それが杞憂のまま、済んでくれればよいがのう」


 横からショコラビスケが話す。


首領キャプテンもマトンさんも、深刻に悩まねえで下せえ。たとい機械人形の部隊が攻めてきやがっても、片っ端から壊せばいいだけでさあ。がほほほ!」

「ショコラの考えは、いつもながら単純でいいね」

「マトンさんよお、俺を褒めてくれたところで、なにも出しませんぜ?」

「いやいや、さすがにキミから、なにかを貰おうだなんて、僕は砂粒の大きさすらも考えてはいないよ」

「おうおう、そりゃあ助かったぜ。なにしろ俺も、進呈できるような品とか、ほとんど持ってねえですからねえ。がほほほ」

「ショコラビスケさんらしいですわねえ。うふふふ」

「キャロルの言っている通りだよ。あはは」

「そんなに褒められると、この俺さまも困っちまうぜ。がっほほほ!」


 愉快に笑い合う三人を前にして、オイルレーズンが神妙に話す。


「金竜にまつわる伝説には、驚くような結末があるのじゃよ」

「がほっ、そりゃあ一体、どんなことでさあ!?」

「あたくしも、お聞きしたいですわ」

「僕もキャロルと同じ気持ちですよ。是非、お話し下さい」


 三人が興味を抱き、揃ってオイルレーズンに視線を浴びせる。


「金竜の起こす大爆発で、山の中から、沢山の機械人形が出てきおった」

「あらまあ、そんなこともありますのね!」

「機械人形は、どうなったでさあ?」

「大空に高く飛び、すっかり消え失せたのじゃよ」

「がほっ!?」

「うーん、確かに驚くような結末ですね……」

「あたくしも、そう思いますわ」


 本当に奇妙な伝説だった。

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