表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》金竜の棲むアイスミント山岳
268/438

《★~ トロコンブ遺跡(一) ~》

 トングが少しの迷いもなく、首を縦に振ってのける。


「もちろんのこと、オイラの言葉に偽りはありませんよ」

「ふぅむ。トロコンブかのう……」


 それは、アイスミント山岳の中腹、広い樹林フォレストの中央にある遺跡で、上級(ハイ‐)探索者イクスプローラを目指す者なら、いつかは挑んでみたいと思う魔窟の一つ。

 しかもオイルレーズンにとって、忘れられない場所なのだった。


「今から三十五年ばかり昔は、誰もが自由に入場できたものじゃわい。あたしは竜族たちが多くいる集団パーティに加わり、大陸のあちこちを探索しておった。トロコンブにしても、一度だけ出向いたが、収集品アイテムの分配で不満が多く、首領キャプテンと対立があってな、竜族の二番手と三番手に誘われ、集団から抜け出たのじゃよ」

「おうおう、その二番手が、俺さまの親爺ファーザってえ訳でさあ!」

「いいや違う」

「がほっ、違っていますかい!?」

「ふむ。ショコラの父親、ヴァニラビスケは三番手じゃったわい。まあ、どうでもよいがのう」

「がほほほ……」

「兎も角、その後、入場するのに金貨が必要となってしもうた。しかも、枚数は次第に増え、今では、一人につき三百枚を出さねばなるまい」


 オイルレーズンは、嘆かわしそうな表情を見せた。

 代わってトングが口を開く。


「金貨は、山岳や遺跡を保全するために使います」

「それは重重に分かっておるわい。じゃがどうして、あたしらの分まで支払ってくれるのか、少しばかり気になってのう。なにか魂胆でも、あるのじゃろう?」

「包み隠さず、正直に話しましょう。実は近頃、トロコンブを訪れる探索者が減ってしまったことで、逆に魔獣が増えました。やがて遺跡が壊されてしまうのではないかと懸念が生じ、オイラたちは困っています」

「ふむ。やはり、そんな事情を抱えておるのじゃな」


 オイルレーズンは、ようやく得心に至る。

 この時、ショコラビスケが、ふと思ったことを口にする。


「だったら金貨の支払いなんて、一切なくすといいでさあ?」

「それも違うわい。そうしてしまうと、探索者がまた大勢押し寄せ、遺跡が以前のように荒らされるでのう。探索者と魔獣、どちらが増えても困るのじゃろう」

「はい。そこで、せっかくお越しになった優秀な探索者集団と見込んで、あなた方に、魔獣討伐をお頼みしたいのです。お引き受け下さいますか?」

「どうしたものかのう……」


 しばらくこの辺りで滞在するつもりだったけれど、遺跡探索が長引くと、それだけ金竜討伐は先延ばしとなってしまう。

 横からマトンが口を挟んでくる。


「首領オイルレーズン女史、五日くらいなら、丁度よくありませんか? なにしろ僕は、まだ新しい剣の扱いに慣れていませんからね。魔獣討伐ともなれば、打ってつけの鍛錬になるでしょうし」

「俺さまだって、金竜と相見あいまみえる前に、トロコンブでもどこでも、身体を動かしておくのは都合がいいでさあ。がほほ!」

「ふむ。キャロルは、どう考えるておるじゃろうか?」

「あたくしは、トングさんたちがお困りのようですから、是非お助けして差し上げるのがよろしいかと思います」

「そうじゃな、ここは一つ引き受けるとするかのう」

「ありがとうございます。どうか、よろしくお頼みします」


 このように話が決まり、キャロリーヌたちは、翌朝から五日間、山荘を拠点にして、魔獣討伐に向かうこととなる。トングと二人の使用人、そしてシルキーも同行する。

 約束していた通り、入場に必要な金貨は支払って貰えた。


「オイラたちも、一緒に入った方がよろしいでしょうか? 足手纏いになってしまうなら、ご迷惑でしょうから、ここでお待ちしていますけれど」

「安全のため、そうするがよい」


 トングと使用人たちを残し、オイルレーズンの集団だけが奥へと進む。

 この一帯で遥か昔、アイスミント山岳民族が斜面に高く砦を築き、五階層の堅牢な山城を建築し、他の民族が侵入するのを阻んでいた。その大部分が形を残して魔窟となった。これがトロコンブ遺跡のすべてである。

 最初の二日間で、砦のすぐ内側に茂る魔植物を刈り取り、一階層と二階層に棲む小型の魔獣を一掃クリーナプした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ