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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART7 危険な金竜討伐探索》金竜の棲むアイスミント山岳
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《★~ 老魔女の決心(二) ~》

 パンゲア帝国で起こった大動乱アプヒーヴァルが拡大し、被害は甚大だという。一部の衛兵までが造反行為に及ぶ状況に陥り、一向に収拾がつかないため、業を煮やした政策官長のバトルド‐サトニラが、助けを求める伝書をローラシア皇国に寄越した。

 第三玉の間に集まったジェラートたちは、今なお続く動乱の鎮圧と負傷者を救援することを目的とした訪問団について、意見を交わしているところ。


「そうしますと、一等護衛官殿は、一万人の派遣をお考えなのですね?」

「まさにその通りだよ。先ほど、四個大隊を選び抜き、出立の仕度を始めろという指令を出しておいた。総指揮は、ウィート二等護衛官に任せる」

「そうですか」


 ジェラートは首を縦に一つ振ってから、視線を一等医療官に向ける。


「ではオマール、負傷者救援隊の編成は、どうなっているかな?」

「五十人に申し渡し、準備も整っています。隊長リーダはアズキさんです」

「うん、分かった」


 ウィートとアズキは、チャプスティクス侯爵家の兄妹で、ジェラートとは親戚になっている。

 丁度この時、オイルレーズンたち四人が入ってきた。その中に、アカシャコの姿を見たので、オマールが思わず声を発する。


「お父ちゃん! どうしてここへ??」

「会合で一等政策官が話して下さるから、すぐに得心できるぞ」

「そう、分かったわ」


 オマールは口を閉じた。そしてジェラートが第一玉の間へ向かう。

 二分刻(ミニト)ばかりが経過する頃、皇帝陛下がお渡りになり、皆がいっせいに、深々と頭を下げる。陛下は、悠然としたご様子で、お黙り遊ばしたまま玉座へお着きなされる。

 一同が頭を上げた。早速、チャプスーイが口を開く。


「皇帝陛下におかれましては、お健やかにあられまして、誠におめでたき本日この刻限、臨時会合を開会と致します。皆さん、どうぞお手をよろしく」


 チャプスーイの言葉が号令となり、八人が同時に手を一つ打ち鳴らす。会合の始まりである。


「最初に私から、一つ提案を申し上げます。空席の宮廷相談役に、ラブスタ子爵を強く推薦します。ご存知の通り、彼は医療官として大いにご活躍し、その輝かしい功績と信頼により、誉れ高き二等大綬章を受勲されました。私は、相談役として彼こそ最もふさわしいと思っています」


 仔細を伝えられていなかったジェラート、ボイルド、オマール、ピックの四人は、どうしてアカシャコが連れてこられたのか、ようやく得心に至る。


「この件に関しては、皇国重要案件、水準レヴェルワンで対応したいと考えます」


 総勢八名が、いっせいに皇帝陛下のご尊顔を拝する。

 この「お伺い」に対して、陛下は、玉座でお黙り遊ばしたまま、微動だになされない。チャプスーイの出した提案を否定しないという意味である。

 キャロリーヌとアカシャコを除く六人が協議し、「水準の一‐ラブスタ子爵を相談役に抜擢」は、多数決で採択された。

 次に、アカシャコを含めた七人で、「水準の二‐パンゲア帝国の大動乱に対応する策」を協議し、七人すべてが賛成して採択となる。実際に、どのような行動をするかは、ジェラートたちが練り上げた方針の通りである。

 最後の協議は、「水準の一‐アラビアーナの地下道路を造る策」で、チャプスーイが詳しく説明する。


「アラビアーナの地下迷宮ダンヂョンと呼ばれる魔窟は、小妖魔の協会ギルドが管理していて、種主雑多な店の並ぶ上層部に限り、比較的に安全だと聞いています。その西端の壁から西へ向かって穴を掘り、パンゲア地下牢獄に通じる洞道とうどうを造るという策です。私とハターケーツ大統領が話し合い、考えつきました。これが採択となれば、ローラシア皇国とエルフルト共和国が協力して、計画を進めます」


 キャロリーヌが、思わず所感を述べる。


「道路が完成すると、地下のお方たちが、自在に地上へ出られますわね」

「そうじゃな。しかし、あの者たちは、どう考えるかのう……」


 眉をひそめるオイルレーズンに代わり、ジェラートが口を開く。


「地下住人の意向も気に掛かりますが、パンゲア帝国の反応が、いっそう懸念されます。なにしろ、彼らの領地の下を、二つの隣国が掘るのですからね」

「一等管理官が心配するのも無理はないが、俺たちは、窮地に陥った帝国を助けるために、わざわざ一万の護衛官と優秀な五十の医療官を派遣するのだ! 地上を救ってくれと頼んでおきながら、地下には手出し無用だなんて戯けたこと、言わせてなるものか!!」


 意気揚々と気焔きえんを吐いたボイルドに続き、オマール、ピック、アカシャコも、それぞれが全身全霊で意見を述べる。

 こうして議論が尽くされ、多数決を採るのみとなった。

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