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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》明るみになるパンゲア地下牢獄
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《☆~ 獣骨加工所 ~》

 ホイップサブレーの工房アトリエを出た後、マトンは、キャロリーヌとオイルレーズンに別れを告げ、中央門の外にある宿屋に立ち寄った。

 いつも泊まる部屋に入ったところ、巨体の竜族が寝転がっている。


「やあショコラ、帰っていたのだね」

「お、おう……」


 ショコラビスケの声には、珍しく普段の活気が感じられない。


「シラタマジルコさんには、会えなかったのかい。彼女なら、今は東部国境門にいると思うよ」

「知っていますぜ。そこから戻ったばかりでさあ」

求婚プロポウズは?」

「ちゃんとできたぜ。けどあねさんには、とっくに婚約した相手がいて……」

「ああそうか、残念だったねえ」

「いやあ、俺は心から祝福したぜ。シラタマの姐さんが幸せになるなら、それこそ最善と思うからなあ。がほほ……」


 涙を流しながらも、笑顔を見せるショコラビスケである。

 マトンは話題を変えた。三十年間、ずっと大切にしてきた愛剣のイナズマストロガーノが、ラディシュグラッセの唱えた魔法スペルによって粉々にされたことを、悲愴な表情で語った。


「あの魔女族、マトンさんに求婚したのじゃあねえですかい?」

「その話も、今となっては反故だよ」

「つまりマトンさんは、婚約者フィアンセと愛剣を、一度に失ったのでさあ!」

「求婚に応じていないから、婚約者とは違うけれどね」

「いやあ同じようなものですぜ。この俺さまは愛剣を失っていないのだから、悲しみも少ないはず。そう考えてみれば、気分も楽だぜ!」


 ショコラビスケが笑顔を取り戻した。

 一方のマトンは、胸の内で「やっぱりショコラは、単純な性格をしているなあ」とつぶやく。


「けどマトンさんよお、剣がないと困りませんかねえ?」

「大いに困るよ。それで新しい剣を作って貰うため、魔獣の骨を探さなければならない。ショコラ、もしもよければ、手伝ってくれないか?」

「おうよ! スティーマビーンズに聞いてみるかな。獣骨(ボウン‐)加工所ファクトリで働いていやがるのでさあ」

「それはどこにあるのかな?」

「ヒエイー山麓西街でさあ。今から行きましょうぜ!」

「うん、そうしよう」


 二人は、意気揚々と部屋を出る。

 宿屋に預けていた愛馬のチェスナトヂューエルにマトンが乗って、国道二号線を南へ向かう。ショコラビスケは、自らの足で追い掛ける。

 ヒエイー山麓北門の検問所を通過した後、もう少し進んだところ、獣骨加工所に辿り着く。

 チェスナトヂューエルを厩舎に預けた上で建物に入った。ショコラビスケが、近くにいた人族に問い掛ける。


「ここに、スティーマビーンズというガイがいるはずでさあ?」

「スティーマだったら、食堂にいるだろう」

「おう、親切に教えてくれてありがとな。がほほ!」


 ショコラビスケとマトンは、加工所に備わっている食堂へ向かう。


「せっかくだから、俺たちも昼飯にしましょうぜ?」

「そうだね」


 ショコラビスケが牙猪ボーの骨つき炙り肉(ロウスト)、マトンが山羊ゴウトの肉を使った茹で団子(ダンプリング)を購入した。スティーマビーンズの姿はすぐ見つかり、一緒に円卓を囲む。


「ところでショコラビスケ、なにをしにきた?」

「マトンさんの用件だぜ。新しい剣を作るのに魔獣の骨が必要だから、この加工所にあるかと思って、確かめにきた訳でさあ」

「お前、知らないのか? 魔獣骨は、魂をり減らすのだよ」

「がほっ! そいつは本当かよ!!」


 これにはマトンが答える。


「うん。それを承知の上で、魔獣骨剣が欲しいのだよ。なぜなら、僕の精神を鍛え直すのに、最も適しているからねえ」

「事情は分かりました。そういう剣を作るのであれば、魔獣化した灰色熊(グリズリ‐ベア)の上腕骨を使うのがよいと思いますよ。おいらが保管庫へ案内しましょう」

「お代の方は、どのくらいですか?」

「魔獣骨は加工が難しいため、需要が少なく、使わないまま残っています。せいぜい銀貨一枚というところ」

「それは助かります」


 三人は食事を終えてから、保管庫に向かった。魔獣化した灰色熊の上腕骨もいくつかあり、その中から格別ベストなのを選ぶ。

 マトンとショコラビスケは、皇国の中央に戻った。早速、魔法具の(インストルメント‐)工房アトリエへ赴き、入手した骨をホイップサブレーに託す。魔獣骨剣を作って貰うのに、お代は金貨が四百枚、でき上がるまでに十五日が必要だという。

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