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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》明るみになるパンゲア地下牢獄
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《☆~ 護衛官軍の部隊 ~》

 張り詰めた雰囲気の漂う中、ラディシュグラッセが口を開く。


「死鏡という魔法具インストルメントを、お持ちなのよねえ?」

「ええ、仰せの通りですわ」


 キャロリーヌが胴着内の代物アイテムを取り出し、ラディシュグラッセに見せる。


「だったら、それを遠くへ投げ捨てなさい」

「あら、どうしてかしら?」


 少し離れたところで、マトンが叫ぶ。


「キャロル、それを手放してはいけないよ!」

「おいこら剣士殿、動くなと言っただろ」


 背後からジャンバラヤ氏が、鎖鎌を握る手に力を加えて威嚇した。

 マトンは、落ち着いた口調で反論する。


「僕は少しも動いていないよ?」

「いいや、口が動いた!」

「……」


 マトンは閉口へいこうせざるを得ない。

 その一方で、ジャンバラヤ氏が大声を放つ。


「おいラムシュレーズン、姉さんの命令に従わないと、大切な愛剣を失ってしまった哀れな剣士殿が、もっと大切な命まで失うことになるぞ! そうなって欲しくなければ、言われた通り、さっさと死鏡を投げ捨てろ!」


 この時、地面に倒れているオイルレーズンが、すっと立ち上がった。

 ラディシュグラッセは、驚愕の気色を隠し切れない。


「えっ、オイルレーズン女史、気を失っていらしたのでは!?」

刻短こくたんの効果じゃよ」

「いつの間に、そんな魔法ことを??」

「一瞬にのう。ふぁっははは!」


 先ほどラディシュグラッセが強烈(ストロング‐)雷光痺ライトニングナムを施す際、オイルレーズンも、密かに「刻削減リダクション」と詠唱していた。それで気絶が短縮されるという訳だった。

 キャロリーヌが駆け寄ってくる。


「一等栄養官さま、ご無事でなによりでした」

「ふむ。ところでキャロルや、死鏡それを、どうするつもりかのう?」

「遠くへ投げ捨てるようにと、ラディシュグラッセさんから命じられました」

「ならば、力を込めて投げるがよい。アンドゥイユにぶつけるのじゃよ」

「分かりましたわ」


 キャロリーヌは、勢いよく死鏡を投げる。


「おわっ、危ない!! なにをするのだ!」


 ジャンバラヤ氏は、急ぎ退避する。

 この瞬間にマトンが素早く動き、鎖鎌の刃から遠ざかった。そればかりか、山賊バンディトの一人から長槍を奪い取り、その鋭い先端をジャンバラヤ氏に向ける。


「鎖鎌殿、動いたらいけないよ」

「うっ、しまった!」


 顔を歪めて悔しがるジャンバラヤ氏である。そんな彼を助けるために、山賊たちが駆け寄って、マトンを捕らえようとする。

 しかしながら、ここへ突進する巨体の姿があった。


「わあっ!」

「うげぇ!」

「あがっ!」


 山賊たちが、次々に突き飛ばされる。

 彼らに身体を激突させたのは、軍服姿の逞しい竜族女性だった。


「あら、シラタマジルコさん!?」

「キャロリーヌさん、オイルレーズン女史、お美しいお顔のマトンさま、窮地からお救いするため、まかり越しました! そして、見事に魔石の粉砕を成し遂げて下さったこと、感謝を申し上げましてございます!!」


 この光景を目の当たりにしたアニョンは、飛竜ワイバンの背中に乗って逃亡を謀ろうとするけれど、ローラシア皇国からきた護衛官軍の部隊に捕縛される。

 ジャンバラヤ氏とラディシュグラッセも、抵抗をやめにして、大人しく縄で縛られた。

 部隊を指揮している二等護衛官のウィート‐チャプスティクスが、オイルレーズンに問う。


「一等栄養官さま、この者たちの処遇、いかように致しましょう?」

「皇国宮廷へ連行し、入念に取り調べるがよい。あたしらを襲撃した目的がなんであるか、洗いざらい話させるのじゃよ」

「了解しました!」


 ウィートは頭を深く下げる。

 オイルレーズンの視線が、シラタマジルコに向けられた。この竜族は、蒼色の軍服を着ており、肩章かたじるしは白地で、薄茶ベージュの横線の上に駱駝キャメル色の星が描かれている。


「四等護衛官になったのじゃな」

「はい、仰る通りです」

「ショコラとは、会っておらぬのか?」

「会いませんでした」

「ふむ。行き違いと、なってしもうたか……」

「五日前、あたいはパンゲア帝国から逃れて、まずは故郷の村に帰り、この元気な姿を両親に見せました。それから、一分刻(ミニト)をも惜しむかのように、ローラシア皇国へ赴き、護衛官軍に加わった次第です」

「祝着じゃわい。ふぁっははは!」

「おめでとうございます、シラタマジルコさん」


 キャロリーヌたちは、嬉しそうに笑い合うのだった。

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