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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》明るみになるパンゲア地下牢獄
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《★~ シラタマジルコ中隊長さま ~》

 こちらは、ローラシア皇国の中央門から少し離れた場所、各方面へ向かう道の交差した、いわゆる「交通の要衝」と呼ぶに値する賑わった地点ポイント。今、パースリたちを乗せた馬車と、ミルクドの騎乗する武装乙女ファルキリー号が通過するところ。

 突如、ショコラビスケが叫び声を発する。


「おうおう、馬車を止めてくれ!!」

「がおす!」


 馭者ドライヴァを務めるピーツァが指示に従った。

 パースリが、怪訝そうな表情で問う。


「どうかなさいましたか?」

「あそこにいるガイらに、あねさんの居場所を知っているか、ちょっと聞いてみたいだけでさ」


 ショコラビスケは広場の方を指差す。そちらには、人族が沢山いる中、暗碧色ダークブルーの同じ軍服を着た竜族たち三人の姿があった。


「だから俺は、ここでお別れですぜ。がほほほ!」

「分かりました、どうか気をつけて行って下さい。シラタマジルコさんと、早く会えるとよいですね?」

「おうよ、パースリさんもな。奥さんの元へ、無事に帰り着いてくれよ!」


 馬車から降りたショコラビスケが、馭者席の方に声を掛ける。


「ピーツァさんよお、今度また一緒に、厚切り(ステイク‐)牛肉ビーフでも食おうぜ!」

「がおっす!」


 武装乙女号の上にいるミルクドとも別れの言葉を交わし、急ぎ広場へ向かう。

 茹で団子(ダンプリング)を売る屋台スタンドの前に、若い竜族の男が三人立っており、なにか楽しげに話している。ショコラビスケは、彼らに近づいて、少しの遠慮もなく口を挟む。


「よおガイたち、ちょっとばかり、聞きたいことがあってよお」

「あ、なんだお前は!?」

「おう俺か。この俺さまは新進気鋭の(アパンカミング‐)探索者イクスプローラ、ショコラビスケだ!」

「たかが探索者の身分で威張るな。それより、なにを聞きたい?」

にいさんたち、パンゲア衛兵団の竜族兵だろ? その暗碧色の軍服こそが、なによりの証拠だぜ。がほほほ!」


 陽気に笑うショコラビスケを前にして、竜族の一人が反論する。


「オイラたち、もう衛兵団員なんかじゃない。この前、パンゲア帝国で大きな混乱が起こり、その機に乗じて、これ幸いと逃れてきたのだからな」

「それならよく知っているぜ。なにしろ、あんたら竜族兵を帝国の土地に縛っていた魔石は、この俺さまの拳で破壊してやったのだからな。がっほほほ!」

「こいつ、見え透いた偽りを好き放題ほざいていやがる。オイラたちを解き放って下さったお方は、勇敢な中隊長さまなのだよ」

「お前のようなとぼけ顔、なんの役にも立ちはしない。あははは」

「そりゃそうだ、わっはははは!」


 三人の竜族に笑い飛ばされてしまったけれど、ショコラビスケは、冷静に大人の態度を示そうと、堪えることにした。


「その勇敢な中隊長さまってえのは、もしかすると、シラタマジルコという美しい名前を持ち、大陸一に美しい容姿をしたあねさんじゃねえかい?」

「おいこら、中隊長さまを美しいと褒めるのは誠に殊勝な心掛けだが、ちゃんと敬意を表して、()()()()()()()()()()()()とお呼びしろ!!」

「おう、承知したぜ。これからは気をつけるとしよう、がほほ」

「へらへらしやがって。しかし、なぜお前のような惚け顔が、お偉いシラタマジルコ中隊長さまを知っているのだい?」

「いやあ、実は昔馴染みでな、ちょっとした関係だぜ。がっほほほほ!!」


 誇らしげに大声で笑うショコラビスケである。

 そんな彼に対して、軍服姿のうち一人が、疑いの視線を注ぎながらも、丁寧な言葉使いで尋ねる。


「今のお言葉、本当でしょうか?」

「おうおう、もちろんだぜ!」

「そうだったとは知らずに、大変失礼を致しました。それでショコラビスケさまは、オイラたちから、なにをお聞きになりたいのですか?」

「他でもなく、()()()()()()()()()()()()が、今どこにおられるかだ」

「そういうことですか」

「おうよ!」

「シラタマジルコ中隊長さまは、ドリンク民国に向かわれたようです。確か、お生まれになった故郷の村へ、お帰りになるとか」

「教えてくれて助かったぜ! お代だ、少ないが受け取ってくれ」


 ショコラビスケは、彼らに銀貨を二枚ずつ与える。


「あ、こりゃどうも」

「遠慮なく頂きますです」

「ありがたく存じます」

「それじゃあ、俺は行くぜ!」

「「「道中、お気をつけ下さいませ」」」


 三人に見送られ、ショコラビスケが颯爽と駆けてゆく。

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