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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》明るみになるパンゲア地下牢獄
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《★~ 別行動 ~》

 シルキーの脚に結んであった木材製紙ウドパルプペイパを、オイルレーズンが確かめる。

 伝書それには、パンゲア帝国から逃げ出した竜族兵の数、国境門の付近やメン自治区で起きている混乱の状況などが、細かく記されていた。


「ふむ、ふん……」


 眉をひそめて黙り込んだオイルレーズンに、パースリが問い掛ける。


「オイル伯母おばさん、額に皺を寄せて、どうされました?」

「ふうむ」


 ここへショコラビスケが口を挟む。


「パースリさんよお、年寄りを相手に()の話なんて、しないに限りますぜ?」

「ショコラの方こそ、余計なことは、言わぬのが無難じゃよ」

「へい、承知でさあ」


 オイルレーズンがパースリの方に向き直って、先ほどの問いに答える。


「伝書には、目を引く話が書いてあるのでな、あたしは、これからどうするのがよいか、考えておった」

「目を引くというのは、一体どのような?」

「メン自治区内、西部の領域からパンゲア軍が撤退したとな。それがために、帝国に親しい者らは力を失ってしまい、《西メン国》なぞと、手前セルフ勝手センタドな独立を宣言しておった軍勢も、すっかり衰えたようじゃ。ふぁっははは!」


 高らかと笑うオイルレーズンに、パースリが尋ねる。


「これからボクたちは、どう致しますか?」

「パースリは、大切な家族を残してきておるからのう、任務は終わりじゃよ。ミルクド、ピーツァ、ショコラとともに陸路を南へ進み、アタゴー山麓東門を通って、皇国宮廷に赴くがよい。その先は、念のため、皇国護衛官に守って貰い、急ぎエルフルトに帰国せよ」

「分かりました」


 結婚の二日後に家を出て、作戦に参加したパースリは、妻のロッソと、半月も離れ離れになっている。ロッソは、夫の帰宅を待ち侘びているに違いない。


「ミルクドとピーツァは皇国宮廷に留まって、パンゲア地下牢獄のことなぞ、帝国王室の悪事を、洗いざらい打ち明けてくれるかのう?」

「承知しました」

「がおっす!」


 横から、ショコラビスケが問う。


首領キャプテン、この俺は、なにをやればいいのですかねえ?」

「あたしに聞かずとも、とっくに決めておるじゃろう」

「なんでしたか??」

たわけ。シラタマジルコに会うのでなかったかのう」

「おうおう、あねさんに求婚プロポウズだぜ!」

「念願だった瞬間も、いよいよとなりますわね?」

「おうよ! キャロリーヌさんたちのお陰でさあ! がっほほほ!」


 大喜びするショコラビスケを尻目に、マトンが尋ねる。


「僕とキャロルとシルキーは、どうするのでしょうか?」

「あたしと一緒に、海域からメン自治区へ渡るのじゃよ。ラディシュとアンドゥイユは好きにするがよい」

「了解しました」

「われは、マトンさまについてゆきます」

「だったら、このオレもだ!」


 別行動をする方針が定まり、パースリが貸し馬車屋へ向かう。

 オイルレーズンは、一等政策官のチャプスーイ‐スィルヴァストウンに宛てた手紙に、パースリたちについて記す。それを皇国宮廷で見せると、彼らが客人として丁重に迎えられるという、いわゆる「推薦状」である。

 少しして、パースリが貸し馬車を運んできた。それにショコラビスケとピーツァが乗り込み、ミルクドは武装乙女ファルキリー号に騎乗する。


 キャロリーヌたちは、しばらく船で波に揺られ、メン自治区の北部地方、海域に面したスープという小さい街に到着した。

 近くの宿屋に、オイルレーズンの一等官馬車を預けてあったので、それに乗り込んで、南に向かって進む。

 広い範囲に、戦いの痕跡が数多く残っている。メン自治区を東西に分断していた壁は壊され、沢山の瓦礫が散乱していた。マトンが馭者ドライヴァを務める馬車は、そのようにすさんだ街の中を、注意深く通行する。

 オイルレーズンが周囲を見渡し、つぶやくように話す。


「争いは、憎しみと荒廃を生むのみじゃわい。キャロルや、この風景を、皇国は当然のこと、他の地でも、繰り返さぬようにせねばなるまいのう」

「はい、その通りだと思いますわ」


 夕刻を迎える頃、製麺(ヌードル‐)工房ファクトリに到着する。ここは、純水ウォータ系統の魔女族、シェドソーメンの嫁ぎ先だという。

 キャロリーヌたちは、店に立ち寄り、極細乾麺(スィン‐ヌードル)を調理して貰う。

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