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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》明るみになるパンゲア地下牢獄
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《★~ 替え玉の正体 ~》

 話を聞いて、帝国内の現状を把握できたけれど、オイルレーズンの胸の内には、まだ少しばかり疑問が残っており、それについて尋ねる。


「ミルクドは、固く忠誠を誓っておったのに、命の危険を冒してまで、造反行為に及んだのは、どうしてかのう?」

「以前の私は、ベイクドアラスカさまが帝国女王の(ザ・クウィーンズ・)マザとして専制君主とおなりになることを、心から喜んでおりましたものです。しかし、あのお方さまが、大陸全土を征服しようという、おそろしい野望アンヴィションをお持ちになっていると知り、気持ちが移ろいでしまったのです。他国へ攻め込むなんて、きっと逆に、パンゲア帝国が滅びてしまうでしょうから……」

「ふむ。やはりベイクドは、そのように、邪悪な企てを謀っておったか」


 オイルレーズンは、ようやく得心できた。

 一方、今度はミルクドが、ピーツァに問い掛ける。


「第七月の二日目と記憶しておりますけれど、その頃、帝国王室の食客でいらしたあなたは、ローラシア皇国から譲られてきたお馬が、本物のファルキリーであるかどうか、お確かめになりましたね?」

「がおっす!」


 ピーツァは、正確な日数を覚えていないけれど、一ヶ月ほど前、真夜中に、第二女官のアニョン‐ピュアレイに頼まれ、白馬の真贋を見定めた。直後、地下牢獄へ追いやられるという、忘れてはならない屈辱の事件である。


「もう一度、それを確認して頂きたいのです」

「がおす??」

「ミルクドよ、どういう経緯いきさつじゃろうか」

「実は、その白馬を連れてきているのです」


 大胆にもミルクドは、帝国女王馬の武装乙女ファルキリー号を駆って、この辺境の地まで逃れてきたという。


「近くの宿屋に預けています」

「よいじゃろう。キャロルや、出掛けるとするかのう?」

「はい!」


 こうしてキャロリーヌたちは、キャビヂグラッセの邸宅を後にする。

 ラディシュグラッセがマトンを慕って同行するので、姉が心配なジャンバラヤ氏もついてくる。

 宿屋の厩舎には、四頭のお馬がいて、そのうち一頭だけ白毛である。

 ミルクドが率直に問う。


「どうでしょうか?」

「こんがは、ファルキリーでねえがおす」


 キッパリと答えてのけるピーツァだった。

 オイルレーズンが説明する。


「ローラシア皇国が帝国に進呈した白馬は、別のファルキリーじゃった」

「がおす??」

「つまり、バゲット三世王が皇国を訪問して見物したファルキリーとは異なる牝馬を()()()()()()と名づけ、水鏡アクワミラという魔法スペルを掛けた上で、帝国へ贈ったという訳じゃよ」

「そのような方策でしたか。私どもはすっかり、ローラシア皇国に騙されました」

「あたしらも帝国に謀られたわい。替え玉(スタンド・イン)のバゲット三世を、宮廷に迎えさせられたのじゃからな。足を骨折したというのも、演技であろう?」

「まさに、すべてがピーツァさんの働きでした」


 これで、替え玉の正体が判明した。

 深く頭を下げるミルクドに、オイルレーズンが問う。


「バゲット三世は、他界しておるのじゃな?」

「今も伏せておりますけれど、仰せの通り、身罷みまかりになっておられます……」

「ふむ。そこまで話すからには、帝国へ帰る気なぞ、砂粒の大きさすらも残っておらぬはず。この先、どうするつもりかのう?」

「帝国王室の横暴を、大陸中に知らしめたいと思います。まずはパンゲア地下牢獄の存在を、明るみにしたいのです。ご協力を願えますでしょうか?」

「もちろん、一向に構わぬよ。相当な覚悟をしておるようじゃから、あたしらにとっては、心強いことこの上ないわい。ふぁっははは!」

「ありがとうございます」


 突如、立派な白頭鷲ボールドイーグルが舞い下って、オイルレーズンの肩に乗る。


「おおシルキー、ご苦労じゃった。宮廷から伝書を運んでくれたのじゃな」

「きゅい!」


 この利口な使い鷲は、魔石粉砕の成功をシラタマジルコに知らせるだけでなく、いくつかの国境門へ伝達する役目も担っていた。パンゲア帝国から逃れてくる竜族兵たちが円滑スムーズに通過できたのも、任務を遂行したお陰である。

 それから彼は、ローラシア皇国の中央へ向かい、キャロリーヌたちが地上に帰還する今日を待って、この地に飛んできた。すべて予定通り、忠実な働きをしてくれたと言えよう。

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