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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》魔石破壊の前夜および当日
244/438

《☆~ 唐突な求婚 ~》

 広い通りを進む途中、珍しいことに、ラディシュグラッセの方から、マトンに話し掛けてくる。


「剣士さんは、優しい顔つきに似合わず、なかなかの業物わざものをお持ちね」

「僕の顔と剣に、興味がおありでしょうか?」

「ええ、少なからず」

「それは、大変光栄なことです」


 マトンが、意図的に嬉しそうな顔を見せる。

 その一方で、ラディシュグラッセは単刀直入に問う。


「どなたが打ちましたの?」

「ホイップサブレーというお方です」

雷金光ライトニング系統の魔女族ですか?」

「系統は確か、樹林フォレストだと思います」

「そう。でも、その剣には雷金光の魔法が……」


 ラディシュグラッセは得心できなかった。

 マトンに代わって、オイルレーズンが打ち明ける。


「ラディシュの感じ取った通り、マトンの愛剣、イナズマストロガーノには、雷金光の魔法が施されておる。その見事な仕事をしたのは、他の誰でもなくラディシュの祖母、シャロトグラッセ」

「お婆上ばばうえが!」

「そうじゃとも」

「やはり、われの目に狂いがないわ。剣士さん、いえ、()()()()()!」


 ラディシュグラッセが、マトンの腕にしがみつく。

 想定外の事態で、彼の肩に乗っていたシルキーが飛び上がり、キャロリーヌとオイルレーズンも、思わず足を止めた。

 マトンが、眉をひそめながら問い掛ける。


「どういうことですか?」

「われは、あなたさまの妻となります。これは、いえ、()()()、われの宿命フェイトです」

「は??」


 唐突な求婚プロポウズに、マトンは呆然となるのだった。

 ここへキャロリーヌが口を挟んでくる。


「マトンさん、ラディシュグラッセさん、ご成婚おめでとうございます!」

「いやキャロル、ちょっと待って! 話の進展が、まるで()()()()()()()()だよ」


 いつも冷静でいるはずのマトンが、明らかに動揺している。彼に代わって、オイルレーズンが、彼の身の上を説明する。


「ラディシュや、よく聞くがよい。マトンは、高等(ハイ‐)魔法スペル老化防止アンチエイヂングが施されておってな、二十歳の若者に見えようとも、本当は五十歳になっておる。つまり、爺さんじゃわい」

「結婚するのに、年齢は関係ありません。マトンさま、そうでしょ?」

「いや、それはどうかなあ……」


 戸惑うマトンに、ラディシュグラッセが詰め寄る。


「われには、どこか至らぬところなど、ありましょうか?」

「えっと、あまり言いたくないことだけれど、働かない女性と結婚する気など、砂粒の大きさすらもないのです。至らぬところは、それに尽きます」

「われは、マトンさまのためでしたら、いくらでもお働き致しましょう! ですから、われを妻にめとって下さいまし!」

「しかしねえ……」


 マトンは、すっかり困り果てる。

 横からオイルレーズンが、救いの言葉を投げ掛ける。


「ならば、その()()を見てから決めるのがよい。手始めに、アラビアーナの地下迷宮で、魔物を退治して貰おう。どうじゃな?」

「ええ、望むところです!」

「マトンや、面白くなったのう。ふぁっはは」

「……」


 勝手に決まり、マトンにとっては不本意極まりのないこと。

 少しして、一行が中央大(セントラル‐)市場マーケトの入り口に到着した。ラディシュグラッセが小声で話す。


「われとマトンさまが結婚することは、しばらく伏せておいて下さい。弟のアンドゥイユが知ってしまうと、焼き餅(グリルド‐ライス)を焼くでしょうから」

「はい、分かりましたわ!」


 キャロリーヌが快く約束した。

 突如、すぐ近くから、聞き覚えのある竜族の声が届く。


「焼き餅ですかい? それなら、美味うまそうなのを売っていますぜ!」


 ショコラビスケが、通りに沢山並ぶ屋台の一つを指差す。そちらには、パースリとジャンバラヤ氏の姿もあった。

 屋台の方を眺めながら、オイルレーズンが問う。


「必要になる品目アイテムの調達は、済んだじゃろうか?」

「水の他は、すっかり買い込みましたぜ。がっほほほ!」

「ふむ。ならば先に、腹拵えをするかのう」

「おうおう、そいつは名案でさあ!」

「ショコラや、今度ばかりは食べ過ぎてはならぬよ。魔石破壊の決行を控えておるのじゃからな」

「へいへい、分かっていますぜ!」


 取りあえず昼餉を済ませることになり、各自が屋台で品定めをする。

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