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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》魔石破壊の前夜および当日
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《☆~ オクラ氏との会談 ~》

 間もなく、十の刻を迎える。この地下に広がる暗い街は、昼間よりも、むしろ夜の方が、蒼い輝きを増す発光茸ルーミナスのお陰で、少なからず明るい。

 キャロリーヌが、オイルレーズン、マトン、パースリと一緒に、ラクトウス食品配給所の隣りに建つ、フォンデュ氏の邸宅にやってきた。ショコラビスケが同行していないのは、牛肉を食べ過ぎて、動くのが辛くなったから。そしてジャンバラヤ氏の姿もないけれど、彼は、今もなおラディシュグラッセを地上へ連れ戻そうとして、熱心に説得を続けている。

 邸宅の中に、オクラ氏とフォンデュ氏が待っていて、キャロリーヌたちを快く迎え入れてくれた。

 オクラ氏が、ここを会談の場に選んだ理由を話す。


「私の自宅は、二日前、丸焼けになってしまいました。そのために今は、こちら、フォンデュさんの邸宅に住まわせて貰っているのです」

「そのような、酷いことに遭われましたの!?」

「なにが原因だったのですか」


 マトンが、眉をひそめて尋ねた。

 この問い掛けに対し、オクラ氏の顔面も、深刻そうな表情に変わる。


「ハッキリしたことは一つとして分かりません。もしかすると、隷属サボーディ支持ネイションの者が、この私、ニシメ‐オクラを葬り去ろうとしたのかもしれません」

「まあ、おそろしいこと!!」

「そうです」


 オクラ氏は頭を一つ縦に振ってから、話題を変えようとする。


「ところでオイルレーズン女史、相談があると仰っておられましたけれど、早速それをお聞きします」

「ふむ。単刀直入に尋ねるとしよう。暴動を起こしたことで捕らえられたヨガトから、魔石を没収したじゃろうか?」

「はい、こちらにあります」


 オクラ氏が、衣服の小物袋パケトから巾着を取り出して開く。

 オイルレーズンは、「ようやく魔石を見つけられたわい」と思うけれど、その期待が、大きく外れてしまう。


「なんと、二つ入っておる!」

「そうです。一つは、ヨガトが四代目のパンゲア地下牢獄長老になることが定まった時点で、彼女に譲り渡されました。もう一つは、それ以前から、彼女自身が所有していたようです」

「どちらが、先に持っておった方じゃろうか?」

「さあ、どうでしょう。私には同じに見えて、分かりようがありません」


 オイルレーズンが調べても、二つの魔石の区別ができない。今さら後悔しても遅いけれど、「今朝、ケバブ氏に見せて貰った時、もっとしっかり観察しておくべきじゃったわい」と残念に思うのだった。

 横から、キャロリーヌが口を挟んでくる。


「一等栄養官さま、困った事態となりましたわね?」

「ふむ。キャロルの言う通りじゃわい」


 オイルレーズンは、本当に困惑した表情を見せる。

 ここへ、先ほどから黙っていたフォンデュ氏が割り込む。


「魔石が二つあると、どうしてお困りになるのでしょうか?」

「二つあること自体、なんら問題なぞない。あたしらは、ヨガトが以前から持っておった方に、大切な用があるのじゃよ」

「つまり、魔石それの区別ができなくなってしまい、お困りなのですね?」

「そうじゃとも。さあて、どうするかのう……」

()()()()とは、どのようなことでしょうか?」


 オクラ氏が率直に尋ねた。

 それでオイルレーズンは、地上でパンゲア帝国の領土に縛られている竜族兵たちを救う計画について、洗いざらい打ち明ける。

 話を聞き終えたオクラ氏が、真剣な口調で話す。


「これらの二つともを破壊すれば、オイルレーズン女史の大切な用を果たすことができましょう。しかし、この私、ニシメ‐オクラは、三代目長老の代理人エイヂェントとして、長老の権威である魔石を手放すことはできません。この事情を、どうか理解して貰いたいのです」

「もちろん、よく分かっておるわい……」


 オイルレーズンは悩まざるを得ない。多くの竜族兵を縛りつけている呪いの魔石に辿り着けたのも束の間(モウメンテリ)で、それを識別する術がないと思い知ったのだから、無理もないこと。

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