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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》パンゲア地下牢獄を巡る騒ぎ
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《★~ 中央大広場での騒ぎ(二) ~》

 一つに整然と列をなしていた参列者の多くが、迫る厄災事から逃れるために、四方八方へと散り散りに走り出している。その中には、お互いに衝突して転ぶ者たちも少なくない。

 パースリは、速やかに退避した方がよいと考えたけれど、「お伺い」を立てるかのように、控え目な口調で尋ねる。


「オイル伯母さん、ボクたちも安全なところへ移動するのがよいでしょうか?」

「いいや違う。こんなにも混乱を極めた状況とあっては、動かぬままでおるのが、かえって安全じゃわい。ふぁっははは!」

「おうおう、さすがは首領キャプテンオイルレーズン女史でさあ!」


 ショコラビスケが、大きな笑い声を放つと同時に、キャロリーヌとオイルレーズンの前へ歩み出た。自らの巨体を防壁にして、二人を守ろうということ。その反対側にも、マトンとパースリが立って、守りを強化する。


 緊迫した状況は、しばらく続く。

 十分刻(ミニト)ばかり経過する頃、ようやく騒ぎが沈静に向かってきた。暴動を起こしていたのは、どうやら人族の集団で、獣族の長槍部隊が、それら沢山の男性どもを捕らえて、民生事務所の方へ連れてゆく。最後に連行される一人だけ女性だった。

 この光景を眺めながら、マトンがつぶやく。


「まさしく()()()だね」

「俺たちの中に、キャロリーヌさんがいるのと、同じってえことですね?」

「ショコラや、あたしはどうなのじゃろうか」

「がほっ、こりゃあ済みませんでさあ!」

藪蛇やぶへびになってしまったね?」

「へいへい、マトンさんの言う通りですぜ……」


 暴動がすっかり鎮圧されたとあって、散り散りとなっていた参列者たちが、三三五五、集まり始めている。その中に、キャロリーヌたちの見知った顔がある。


牛肉食堂ビーフレストラントさん!」

「おや、先ほどの方々ですね。働いたら負け王妃との面会は終わりましたか?」

「あたくしたちの用は済みましてよ。ジャンバラヤさんが、まだお話をなさっておられると思います」

「鎖鎌をお持ちの旦那さんですね」


 ここへオイルレーズンが口を挟んでくる。


「牛肉食堂の主人マスタや、暴動のことを、なにか知っておるじゃろうか?」

「わてにも詳しいことは分かりませんけれど、暴動を起こしたのが民生事務所の役人で、鎮圧したのは、民生事務所に雇われている槍部隊のようです」

「一人だけ、人族の女性が連れてゆかれたのう」

「はい、ラクトウス食品配給所の女です」

「なんと!! あの者がヨガトじゃったのか!」


 顔を知らないのだから仕方がないけれど、捜している者が通るのを、雑談をしながら見過ごしたのだから、残念に思わざるを得ない。


「はい、ヨガト‐ラクトウスです。お知り合いでしたか?」

「名前だけ知っておる。あの者は、どこへ連行されるのじゃろうか?」

「悪事を働いたのなら、牢獄に入れられるでしょう」


 横からショコラビスケが話に割り込む。


「この地下牢獄に、別の()()があるのですかい?」

「戯け!! つまらぬことばかりを抜かしおって!」

「がほっ、重ね重ね、済まねえでさあ……」


 また余計なことを言ってしまい、深々と頭を下げるショコラビスケ。

 マトンがオイルレーズンに問い掛ける。


「彼女を追いますか?」

「どうするかのう」


 もしもヨガトが罪人として扱われているのなら、彼女に用があると伝えたところで、民生事務所の役人が快く応じてくれるとは限らない。そればかりか、ともに悪事を働いた仲間と誤解され、捕らえられるかもしれない。

 オイルレーズンが迷っているところ、また一人、見知った女性が、長槍を持った数人の獣族を従えて、目の前を通り過ぎようとするのだった。

 キャロリーヌが呼び掛ける。


「あら、オクラさん!」

「クッパプさんの邸宅にいらした、お方たちですね」

「仰せの通りです。あ、名乗っていませんでした。あたくしは、キャロリーヌ‐メルフィルですわ」

「そうですか。この私、ニシメ‐オクラは、今から先ほどの暴動について、ここにお集まりの方たちに説明をする務めがありますので、お話は、また次の機会ということにしましょう」


 オクラ氏と獣族の集団は、急ぎ立ち去る。


「取りあえず、オクラ女史の説明とやらを、聞くとするかのう」


 オイルレーズンの提案に総員が賛同し、できるだけ広場の中心近くまで移動することとなる。

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