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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART6 パンゲア地下牢獄の騒動》パンゲア地下牢獄を巡る騒ぎ
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《☆~ 魔石を持つ者(四) ~》

 キャロリーヌたちは、二十分刻(ミニト)ばかり歩いた末、長老エルダの邸宅に到着する。

 マトンが呼び鈴に手を伸ばすけれど、オイルレーズンが「酷く錆びついておって、まったく使えぬわい」と教えた。それで今度は、扉をコツコツと鳴らす。


「マトンさんよお、そんな叩き方じゃあ、中まで音が届かないでさあ?」

「聞こえないようなら、次はもっと強めればいいのさ。最初からゴンゴンと鳴らすと、迷惑を掛けるおそれもあるのだよ。だから慎重にしないとね」

「がほ。なかなかに深い話ですぜ」


 少し待ったところ、扉がゆっくり開いた。獣族の男子が姿を現して、マトンの顔を見上げ「なんど」と尋ねる。

 横からオイルレーズンが話し掛ける。


「グラタンじゃな。あたしのことを覚えておるかのう?」

「ひゃい、いらさあまし」

「ふむ。長老に今一度、用があるのでな。入って、よいじゃろうか?」

「ひゃい、どうぢょ」


 オイルレーズンが後ろに向かって話す。


「キャロルたちは、ここで少しばかり待っておるがよい」

「分かりましたわ」

首領キャプテン、僕もお供しましょうか?」


 マトンが積極的に申し出た。


「いいや、その必要はない。調()()()はかどっておるか、長老に聞くだけじゃからのう」

「了解しました」


 調べ物というのは、この地下牢獄で暮らす住人のうち、三年と七ヶ月くらい前にやってきた者たちを割り出すこと。その中から、魔石を持つ者が見つかるに違いないと、オイルレーズンは考えていた。

 ここへショコラビスケが口を挟んでくる。


「美味い厚切り(ステイク‐)牛肉ビーフを食える場所のことも、忘れずに頼みますぜ!」

「分かっておるわい」


 オイルレーズンが、グラタンと一緒に邸宅の中へと進む。

 キャロリーヌたちは、他愛のない雑談をして待った。特にショコラビスケが、厚切り牛肉のことばかりを話すのだった。

 三分刻(ミニト)ばかりでオイルレーズンが戻り、キャロリーヌが問い掛ける。


「調べ物は、済んでいまして?」

「いいや。まだ始まってもおらんかったわい」


 どういう訳かを、オイルレーズンが説明する。三年と七ヶ月くらい前にやってきた者を調べるのは、長老ではなく、民生事務所で働く役人だという。その事務所は四つ刻に始まるので、グラタンが、ケバブ氏の用意した依頼書を持って、そろそろ出立することになっている。最初に一つ刻ばかり掛かると言われたのは、こういう事情によるもの。


「四つ刻までには、あと四半刻あるのう。グラタンが行って戻るには、少なくとも半刻が必要なようじゃから、あたしらは牛肉を食して待つとしよう」

「おうおう、そりゃあ優れた(エクセレント‐)考え(アイディア)でさあ!!」

「うふふ。ショコラビスケさん、よかったですわね?」

「おうよ!」


 こうしてキャロリーヌたちは、オイルレーズンが長老から聞いてきた一推いちおしの料理屋へ向かうことにする。そこは「牛肉食堂ビーフレストラント」という名の食事処ビストロで、パンゲア牢獄街で一番に美味しいと評判が高いらしい。

 料理屋の場所は、ケバブ氏がマプを描いくれたけれど、不得手らしく、とても分かり辛い代物アイテムになっている。

 それで全世界学者のパースリが、先導リーダの役を担い、それを見ながら進む。

 途中に、「小料理屋マトン」という食事処もあった。ショコラビスケが「マトンさんのお店ですかい?」と尋ねるけれど、当のマトンは「あはは、そんなはずないだろう」と一笑にふした。

 およそ五分刻(ミニト)、少しも迷うことなく、目的の「牛肉食堂」に辿り着く。

 シルキーだけは、朝餉で中空脊柱シーラカンスを沢山食べており、まだ一つ刻しか経っていないので、自ら辞退した。それで彼には、オイルレーズンから、洞窟の天井に地上へ通じる、いわゆる「抜け穴」がないか、調査する役目が与えられた。

 オイルレーズンは、朝餉にほとんど手をつけていなかったので、キャロリーヌたちと一緒に料理屋の中へ入る。

 ショコラビスケが、待ち切れないので、厚切り牛肉を生のまま、果油ソースを塗って食すことを望んだ。

 当然のこと、他の者は皆、しっかり焼いて貰う。それでキャロリーヌたちが食べ始める時には、ショコラビスケが、本当に十枚を食べ尽くしていた。


「俺はまだまだ、さらに十枚でも軽くいけますぜ!」

「そんに沢山を一度に食すと身体に悪いわい。あと五枚でやめておくがよい」

「へいへい。取りあえず、それだけで我慢するでさ」


 ショコラビスケは渋々従うことにして、追加を注文する。他の者たちは、少なからず驚くと同時に、竜族が持つお腹(スタマク)の強さを思い知った。

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