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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》後戻りのできない艱難辛苦
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《★~ 迷宮の最深層(四) ~》

 垂直な壁に沿って上方へ進むにつれ、空間の幅が次第に狭くなってきた。やがて厚い氷が終わり、その先は、剥き出しの岩や砂利が層を形作り、なだらかに迫り出している。

 パースリが話していた通り、崖の上も洞窟だった。平坦な場所にキャロリーヌが着地し、背負子からマトンが降り立つ。続いて、すぐシルキーも到着する。

 足元に、お馬の縦幅一つ分くらいのみぞが、地面を横切っている。通り抜けてきた暗い隙間をマトンが眺め、感じたことを率直に述べる。


「地の()()()に到達する、落とし穴といったところだね」

「ええ、仰せの通りですわ。崖の下が、よく見えませんもの」


 二人は、周囲の様子を慎重に調べる。

 どうやら、危険はないように思われる。前後の二方向に道があり、後方を松明トーチで照らすと、少し先で行き止まりになっていることが分かった。

 マトンが、もう一方の道を指差す。


「パンゲア牢獄街があるとすると、向こうだね」

「はい。早速シルキーさんに、探して貰いましょう」

「きゅい!」


 シルキーは、洞道とうどうの先に向かって飛んだ。


「あたくしは、下へ戻りますわ」

「そうだね。気をつけるのだよ」

「はい」


 キャロリーヌが、マトンに松明を手渡し、替わりに賢者の石を受け取る。そうして地面の溝へ飛び込む。浮力が働いているお陰で、魔法を使わずとも、緩やかに降下できる。

 崖の下に戻ったキャロリーヌに、パースリが問い掛ける。


「上の状況はどうでしょうか?」

「危険がなさそうに思えましたので、シルキーさんに、パンゲア牢獄街を探して貰うことにしました」

「それはよかったです。今度は、用意したロウプが崖の上まで届くかどうか、確かめることにします」


 地面に、綱の束が置かれていて、一端をショコラビスケが握っている。

 パースリが、綱のもう一つの端を背負子に結びつける。そしてキャロリーヌから賢者の石を受け取り、背負子に腰掛ける。


「では、ゆっくりと上昇して下さい」

「はい」


 キャロリーヌが再び魔法を使って、崖の上へ向かう。

 その途中、背負子に結びつけた綱によって、上昇が妨げられた。


「崖の上まで届きませんね。ここは、どの辺りでしょうか?」

「おおよそ中間の地点ポイントですわ」

「そうですか。困りました……」


 用意してきた綱の長さは、お馬の縦幅で五十頭分あるけれど、崖の高さが、その二倍に及ぶということ。

 黙り込んでしまったパースリに、キャロリーヌが問い掛ける。


「次は、どのようにしますのかしら?」

「あ、取りあえず、下に戻って貰えるでしょうか」

「分かりましたわ」


 キャロリーヌは直ちに降下した。

 二人が帰り着くと、ショコラビスケが尋ねる。


「パースリさんよお、崖の上に届きましたかねえ?」

「いいえ。中間ほどの高さで、綱は尽きました」

「そうですかい……」


 ショコラビスケは、思わず肩を落とす。

 その一方で、キャロリーヌがパースリに問う。


「綱が短いと、どうしてお困りになりますの?」

「石の浮力と魔法だけでは、ショコラビスケさんを運べません。ですから彼の身体に綱を結びつけます。そして崖の上から、ジャンバラヤ氏とマトンさん、そしてボクの三人が一緒になって、引き上げる手助けをしようと考えていたのです。しかし綱が短いため、その方策は使えません」


 ショコラビスケが横から口を挟む。


「もしかして、保存食を十分に用意してなかったのは、俺の体重を減らそうってえことだったのですかい?」

「はい。でもボクの考えた方策が、まったく役に立ちません……」


 パースリの言葉には、普段であれば聡明さと力強さが含まれているけれど、今ばかりは、それらが消えていた。

 ジャンバラヤ氏が近寄って、パースリの肩に手を置く。


「お前は一流の全世界ユーニヴァース学者(‐スコラ)じゃなかったのか!」

「え!?」

「オレに鎖鎌の腕前があるように、お前には鋭利な頭脳があるんだ!!」

「鋭利な頭脳?」

「そうだ! 考えた方策が使えないと分かったら、すぐにまた別の方策を打ち出せる頭脳こそ、学者の真骨頂スペシャルティだろうがっ!!」

「は、はいっ、まさしく、その通りだと思います!」


 パースリが瞳の輝きを取り戻し、しばらく考えた末、力強く話す。


斜面スロウプを築きましょう!」

「がほっ! そんなのを、どうやって築くでさあ!?」

「崖の上と下、二手に分かれます。上から地面を削って下へ落とし、こちらでは、壁の氷を割って集めます。それらを積み上げて、斜面にするのです」

「パースリ、よく考えた! 今すぐ取り掛かるぞ!」

「おうよ! やりましょうぜ!」


 ジャンバラヤ氏とショコラビスケが、早速、壁の氷を割り始める。

 一方、キャロリーヌは、パースリとともに崖の上へ向かう。

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