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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》後戻りのできない艱難辛苦
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《★~ 迷宮の最深層(一) ~》

 今夜もまた順番に、ショコラビスケの担ぐ背負子に乗って眠る。今はジャンバラヤ氏が寝ているところ。

 巨体のショコラビスケを担げる者がいないため、この竜族だけは、休まずに歩かなければならない。それでも、不眠豆ふみんず力豆りょくずを服用しているお陰で、疲れるどころか、いつも以上に体調を良好に保っていられる。


「パースリさんよお」

「はい。どうかされましたか?」

「飯のことで、妙案を思いつきましたでさあ」

「え、妙案ですか!?」

「おうよ。次に魔植物が出てきやがったら、そいつらを根こそぎ刈り取って、食材として使うのでさあ」

「いけません。それは自滅へ向かう行為です。自然改変によって生じた魔植物や魔獣は、呪われた存在なので、ボクたち人族および亜人類はもちろんのこと、ありとあらゆる自然に生きる者は、魔物それらを食してはならないのです」


 パースリは、険しい表情でキッパリと言い放った。

 しかしながら、ショコラビスケが引き下がろうとしない。


「そのことは俺も知っていますぜ。だから、その厄介な魔の呪いを、賢者の石で消す方策を、思いついたでさあ。がほほ!」

「えっ、呪いを消す??」

「そうでさあ。こいつは、なかなかの妙案じゃあねえですかい?」

「うぅ、どうでしょう……」


 パースリは考え込んでしまった。

 横からマトンがショコラビスケに話す。


「一体どんなことかと思えば、確かに妙な思いつきだね」

「おうおう、マトンさんは、分かってくれたのですかい?」

「分からなくもないけれど、そう簡単にはいかないと思うよ。なにしろ、ヴィニガ子爵が仰せになっていた通り、賢者の石は決して万能ではないのだから」


 突如、ショコラビスケの背中で、声が発せられる。


「なんの話だ!」

「おうジャンバラヤさん、お目醒めでしたか」

「ああそうだ」


 ジャンバラヤ氏は、背負子から颯爽と飛び降りる。


「また世話になったな。お陰で心地よく眠れたぞ」

「いやあ、お礼には及びませんぜ。がほほほ!」

「それはそうと、オレさまが寝てる間に、なんの相談をしていた?」

「聞いて下せえ! ()()()を解決する妙案を考えたでさあ」

「なかなかに面白そうだから聞いてやる。さあ話せ!」

「へいへい」


 ショコラビスケが、さも得意気な顔で応じた。

 対するジャンバラヤ氏は、最後まで聞いた上で所感を述べる。


「六系統の魔石で、魔の呪いを消すのか。なるほど、妙案に違いない」

「がほほ! 話の通じるお方でさあ、ジャンバラヤさんはよお」

「そうだとも。このオレほど理解力のある男は滅多にいない」


 ここでマトンが口を挟む。


「魔の呪いを受けると、身体が次第に溶けて、一日で命を落とすそうだよ」

「だから、その呪いを消しちまうのでさあ」

「呪いが消えたかどうか、確かめることが簡単ではないと思う」

「その通りだ! おいショコラビスケ、どうやって確かめる?」

「がほっ、俺さまに聞かれてもなあ……」


 困惑するショコラビスケに代わって、パースリが話す。


「呪いというのは、魔力がもたらします。ですから、魔力が残っているなら、呪いも残っていると考えるべきでしょう。その逆に、魔力がなくなれば、呪いも消えたと判断できるかもしれません。この推察について、キャロリーヌ嬢のお考えを聞かせて貰えますか?」

「えっ、あたくしの考え??」


 唐突に尋ねられ、返答に窮するキャロリーヌだった。

 パースリが、さらに問い掛ける。


「魔力の扱いは、魔女族にしかできないことです。なにか、オイル伯母さんから教わっておられませんか?」

「ええっと、オイルレーズン女史があたくしにお教え下さったのは、魔女の存在についての知識や、魔法スペルの唱え方ですわ」

「分かりました。そうしますとボクたちは、魔の呪いが消えたかどうか、確かめる術を持っていないということになります。魔植物や魔獣を食材にできるかを、正しく判断できないのです」

「それなら仕方ねえでさあ。せっかく素晴らしい妙案を得られたと思ったが、残念だぜ、まったくよお」


 落胆で、ショコラビスケが肩を落とした。

 会話も途絶え、最深層の凍てつく道を進み続ける。

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