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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》後戻りのできない艱難辛苦
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《★~ 重い雰囲気 ~》

 兎も角、模造の焼き肉(バービキュー)を堪能して、一行は満腹するに至った。あと少しばかり足を休めていようと、休憩を続けていた。

 ジャンバラヤ氏は、先ほどからずっと静かにしている。そんな彼が、突如、話を持ち掛けてくる。


「キャロリーヌ嬢、昨日オレが言ったことは、すっかり忘れてくれ」

「ジャンバラヤさまが仰ったことをですか?」

「そうだ」

「えっと、昨日あたくしが、お名前を間違えてお呼びしてしまいましたところ、あなたさまは、《間違うなよ》と仰せでした。このお言葉を、忘れなければなりませんの?」

「いや、それでなく、他にも伝えたことがあるだろ!」

「他になにを、お伝え下さいましたかしら?」

「なんだ覚えていないか。まあ忘れたのなら、それでよいが」

「え??」


 問答を続ける二人の横から、マトンが割り込んでくる。


「昨日のことなら、鎖鎌のジャンバラヤ殿は、キャロルに結婚を申し込んだね」

「あ、そうでした!」


 ようやく思い出すキャロリーヌ。

 マトンが言葉を続ける。


「今日になって彼は、それを取り消すことにしたらしい」

「なあ剣士のストロガノフ殿」

「おや、僕の家名を覚えてくれていたのかい」

「当然だ。人の名前は、教えて貰ったら一度で覚えるのが礼儀だからな」

「うん、その通りだね」


 これでマトンとジャンバラヤ氏の会話が終わった。

 重い雰囲気の中、パースリが休憩終了の号令を発して、引き続き洞窟内を進むことにした。

 中深層の奥深くには、ところどころ小さな地底沼がある。水は毒が強く、魚などは、一匹も棲んでいないという。

 沼の畔を通っていると、突如、地面からロウプのようなものが伸びて、キャロリーヌの足首に巻きついた。


「きゃあーっ!!」


 それは、おそろしい人食い魔植物の地下茎なのだった。

 横からジャンバラヤ氏が俊敏に動く。


「やあっ!」


 危ない茎が、鎌で切断された。

 けれども、まだキャロリーヌの足を強く締めつけていた。ショコラビスケが急ぎ駆けつけ、それを両手の力で引き千切る。


「大丈夫ですかい?」

「はい。ありがとうございました」


 地下茎はこれだけに留まらず、地面から次々と伸びてきた。それらのすべてを、マトンが剣で切り裂く。

 しばらくして一段落となったけれど、魔植物が再び襲い掛かってくるかもしれないので、この危険な地帯を通り過ぎるまで、気を抜けなかった。

 やがて沼地が終わり、休憩を挟むことにした。マトンは眠りに就く。


 一行が、いよいよ迷宮の最深層へ入った。既に十の刻を過ぎている。

 それから少しばかりが経ち、マトンが目醒めた。この場で、乾麺麭ビスケット乾燥肉ヂャーキを少量ずつ食す。保存食は、まだいくらかあるけれど、パースリは、備えとして残しておくのがよいと考える。


「皆さんには、一日に三度の食事ができるのは、これが最後という心づもりをして頂かなければなりません」

「がほっ! そりゃあ一体、どういう意味でさあ?」

「つまり、この先は自然の獲物が手に入らなければ、食事もできず、水だけで凌がなければならないのです」

「飯にありつけねえのは、さすがに辛いですぜ! 賢者の石を使えば、料理はいくらでも得られるでさあ?」

微石症キャルキュラスになってしまうと、空腹よりも辛いですよ」

「そりゃあ、そうかもしれませんが……」


 肩を落とすショコラビスケである。

 そんな彼および他の者たちに、パースリが神妙な表情を見せる。


「最深層まできています。もう後戻りできないでしょう? 皆さんは、相当な覚悟をなさって、この探索に挑まれていると思います。二日間の空腹くらい耐えられないようでは、パンゲア地下牢獄へ辿り着くことなぞ、とうていできません。ショコラビスケさん、キャロリーヌ嬢、果たすべき目的があるのでしょう? なんのために大切な命を懸けて、こんなに危険の多い洞窟を進んでいるのか、今一度、しっかり思い出して下さい」


 パースリからの叱責と呼ぶに値するような言葉を、キャロリーヌたちは、黙って聞いた。誰一人として、異議を申し立てる者はいない。

 再び重い雰囲気となったところ、休憩を終えて、皆が腰を上げた。

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