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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》後戻りのできない艱難辛苦
205/438

《★~ 迷宮の上層(四) ~》

 小麦の粉汁焼き屋に到着すると、こちらにもケトルがいた。


「へへぇ、どうもでごぜえます」

「がほ??」

「あら!?」


 二つの店は裏で繋がっていて、一人で両方を営んでいるということ。


「そうだろうと思ったよ」


 マトンは最初から勘づいていた。

 一行が、三つある円卓の一つを囲んで、椅子に腰を下ろす。シルキーも、ショコラビスケの広い肩の上で、大きな翼を畳む。

 卓上には、鉄製の平皿が置いてある。キャロリーヌが、それを見つめながら、右隣りに座ったパースリに尋ねる。


「この大きなお皿に、お料理を載せますのかしら?」

「そうだと思います」


 ケトルが説明の言葉を添える。


熱鉄板ホトプレイトと呼んでごぜえます。下で火を点して、小麦粉汁を焼くですんに」

「調理の道具になっていますのね!」


 目を輝かせるキャロリーヌに、ケトルが注文を伺う。


「お嬢さん、牙猪ボーダク馴鹿トナカイ胴童ドウドウ虹色レインボウ蜥蜴(‐リザド)竜編(ドラゴン‐)笠茸マシュルーム烏賊スクウィド鞍紋貝アマナイト大海老ラブスタ山椒魚サラマンダがごぜえます。お好みの具材を、お決め下せえませ」

「まあ、沢山ありますのね。あたくし、迷ってしまいそうですわ……」

「鴨と胴童と大海老が、今日は新鮮のがへえってごぜえます」

「あたくしは、大海老に致しましょう。それと新鮮な鴨の生肉を、五切ればかり、シルキーさんに頂けますでしょうか?」

「へえへえ!」


 横からショコラビスケが注文する。


「俺は、全部の具材でさあ!」

「おいおいショコラ、そんなに欲張るのかい?」

「マトンさんよお、主人マスタは、好みの具材を決めるように仰いましたぜ。だから全部を好む俺さまは、そう答えざるを得ないでさあ」

「さすが竜族のお旦那さん! 小麦の粉汁焼きは、()()()()()とも呼ばれてごぜえます! お好みの具材を全部加えてこその、小麦粉汁焼きですんに!」

「おうおう、主人こそ、さすが分かっていますぜ! がっほっほ!」


 マトンは、少なからず呆れながら「烏賊」を注文する。最後まで考え抜いたパースリは、「虹色蜥蜴」と「竜編笠茸」を混ぜて貰うこと決めた。

 ケトルが、熱鉄板の下に備わっている燃料コウクに火を熾し、それから材料を取り揃えるために、店の奥へ向かう。

 待っているところ、突如、鎖鎌を手に持つ人族の男が現れ、大声を放つ。


「きていたのか、パースリ!」

「へっ??」

「お前、パンゲア牢獄街に通じる道を探しにきたのだろ?」

「どうしてそのことを!?」

「先に質問したのは、オレさまだ。さあ答えろ!」


 ここにキャロリーヌが口を挟む。


「ヴィニガ子爵さんの、お知り合いですの?」

「一度会って話したことがあります。お名前は確か」

「待て待て!」


 男が咄嗟に動き、両手を横に大きく振る。


「オレさまの名は、オレさまに名乗らせろ!」

「あ、どうぞ」


 彼の名前を覚えていなかったので、パースリは安堵するに至った。


「オレさまは、アンドゥイユ‐ジャンバラヤだ。そして美しいお嬢さん、キミが、キャロリーヌ‐メルフィルだよな」

「仰せの通りですわ。でも、なぜに、あたくしの名を、ご存知ですの?」

「母から聞いた。先ほど、やり合ったそうだな」

「あなたさまのお母さまは、キャビヂグラッセ女史なのかしら?」

「そうだ。母は感心していた。それで、キミを嫁として迎えることに決めた。キャロリーヌ嬢、オレさまと結婚してくれるだろ?」

「あらまあ、そんなっ!?」


 唐突に求婚されたキャロリーヌは、大きく戸惑っている。

 マトンが立ち上がり、間に割り込む。


「ちょっと待ってくれるかい」

「なんだ、お前?」

「僕の名はマトン‐ストロガノフ」

「そんなことは聞いちゃいないよ。お前がキャロリーヌ嬢と、どういう関係なのかを尋ねているのだ」

「知りたいのなら、率直に答えるとしよう。僕は、キャロルに近寄る男から、キャロルを守るという重役を仰せつかった剣士だよ。分かったら、さっさと失せて貰いたいな、アンバラヤ殿」

「ジャンバラヤだ!」

「ああ、間違ってしまい済まない。兎も角、ここから消えて欲しい」

「断る!」

「もう一度だけ言うよ。僕は、悪い()()()から、キャロルを守る役目を担っている。だから今すぐに、消え失せて貰いたい」

「虫けらだと?」


 ジャンバラヤ氏は、右手で柄を握っている鎌を掲げてみせた。

 しかしながら、マトンが怯むことはなく、さらに言葉を重ねる。


「虫けらよりも劣っているかな」

「そこまでの暴言を吐く度胸があるなら、オレさまと戦うか?」

「喜んでお受けしよう」


 一触即発の状態に陥ってしまった。

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