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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》後戻りのできない艱難辛苦
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《★~ 迷宮の上層(二) ~》

 店の前で、女性の小妖魔が忙しく立ち働いていた。

 彼女は、キャロリーヌたちのやってきたことに気づき、明るい笑顔で、お辞儀と挨拶をする。


「えらっさぁ~」

「お今晩は。あの、ここの主人マスタは、ご不在のようでしょうか?」


 パースリからの問いを受け、女性が店の奥に向かって叫ぶ。


にぃやぁ~!」


 すると男性の小妖魔が、小走りで姿を現す。


「ミリン、どったな?」

「お客さぁ、お呼びなすっての」

「そっけえ」


 出てきた男性が、パースリに向かって問う。


「あっしにご用でござい?」

「ボクは、ここの主人に尋ねたいことがあるのです」

「あっしが主人のケチャプでござい!」

「おや、ここはバジリコさんの、お店のはずでは??」


 パースリにとって、若い小妖魔の二人は、どちらも初顔なのだった。

 ケチャプと名乗った男性が、神妙な表情になって答える。


「おかぁ、腰ぎくりとっちまい、あっしが継いでござい」

「そういう事情がおありでしたか。バジリコさんも、お歳を召されておられるようですから、お大事になさって下さいと、お伝え下さいますでしょうか」

「了解してござい」


 畏まって頭を下げるケチャプである。

 この小妖魔は、ドリンク民国軍務省に勤めていたけれど、ついこの前、母親のバジリコが、いわゆる「ぎっくり腰」になってしまったので、退官して、故郷であるこの地に戻ってきた。軍務省の食堂で働いていた妹のミリンも、この機にケチャプと一緒に帰り、店の手伝いをしているという。


「お客さぁ、お尋ねなさりたいって、なんでござい?」

覇王樹キャクタスの果実を取り扱っているお店を、ご存知かどうかです」

「どっだな……」


 考え込んでしまったケチャプに、ミリンが助言する。


「ケトル殿さぁ、置いてなすっての」

「あぁ、ケトルじぃさぁ店な」

「そのお店は、どちらにありますでしょうか?」

「あっち、百歩ほどでござい」

「そうですか、どうもありがとうございます」


 パースリは、並んでいる品々から襟巻き(スカーフ)と火打ちを選び、四つずつ分のお代を支払う。

 それらの品目アイテムがキャロリーヌたちの手に渡る。


「ボクたちの命を守るために、これは大切です」

「分かりました」

「そうだね」


 キャロリーヌとマトンが素直に同意した。

 その一方で、ショコラビスケは、受け取りながら問い掛ける。


「襟巻きは、まだ早くないですかい?」

「こちらに収めておきましょう」


 キャロリーヌが、パースリの背袋リュックを差し出した。少しばかり前まで、金剛石棒ダイアモンドが百本も詰まっていたけれど、今は一本だけになっていて、襟巻きの四つくらい、簡単に入れることができる。


「それはボクが担ぎましょう」

「お願い致します」


 背袋は、持ち主であるパースリの手に戻る。

 火打ちは、受け取った各自で、衣服の小物袋パケトなどに入れておく。それは、石と鉄の塊に穴を開けて細い縄で結び、離れ離れにならないようにしたもので、打ち合わすと火の粉を散らし、木や布を燃やすことができる。


「ケチャプさん、松明トーチを二十本、購入します」

「あい!」


 松明の十本束が二つ、パースリの背袋に収められる。

 こうしてキャロリーヌたちは、ケチャプとミリンに別れを告げて、ケトルの店へと向かう。

 突如、「ぐるるぅ~」という音が、洞窟に響く。


「おうおう、つい腹の虫を鳴らしてしまいましたぜ!」

「夕餉の刻限ですものね。あたくしも、少し空腹を覚えてきましたわ」

「僕も同じだよ。でもキャロル、まずはシルキーを目醒めさせて、全員が揃って食べることにしようよ」

「ええ、仰る通りですわ」

「マトンさんよお、この俺も当然のこと、そうするのがよいと思いますぜ。なんといってもシルキーは、今回の作戦で重要な役目を担う、俺たちの大切な面子フェイスなのでさあ!」


 ここにパースリが、勢いよく口を挟んでくる。


「ボクの心は大きく揺さぶられました!」

「あらまあ、そうですの!?」

「はい!! ボクの探索は、いつも単独で行っていまして、今回このように集団パーティを組むのは、生涯初めての経験となりました。面子フェイス同士で、お互いを思いやる、深い気持ちを惜しまないことが、なによりも大切なのですね!!」


 間もなく、キャロリーヌたち一行がケトルの店に到着する。

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