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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》後戻りのできない艱難辛苦
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《★~ 迷宮の上層(一) ~》

 ゴンドワナ地方では人族の姿が少なく、遥かに多くの亜人類が住んでいる。獣にしても、先ほどショコラビスケと一戦を交えた水牛の他に、剣歯虎セイバタイガ馴鹿トナカイ胴童ドウドウというような珍しい種類の棲息している特殊な一帯である。この地方の極東に位置するアラビアーナの街は、大昔からずっと地上が寂しく、その逆に、地下の方で賑わいを極めてきた。

 地下迷宮ダンヂョンの全体は、パンゲア帝国の中央にまで広がる西北の方面、および海域の地下を通ってメン自治区へと続く東南の方面によって形作られている。まるで巨大な竜の横たわって眠る姿をしていることから、それら二つの部分は、いつしか人々の間で、「竜首圏(アパ‐ドラゴン)」、「竜脚圏(ロウア‐ドラゴン)」と呼ばれるようになったという。

 探索に挑んだ経験を有する者たちの中には、「アラビアーナから地下に張り巡らされた通路をすべて繋ぐと、グレート‐ローラシア大陸を、海域に沿って、百遍より多く周回する道のりに匹敵するだろう」などと自慢気に語るのも、少なからずいるけれど、真相を確かめる術はない。

 兎も角、この異様な空間に、キャロリーヌたち四人が下りてきた。


「お店が色々と沢山、並んでいますわ!」

「地下迷宮とはいっても、この辺り上層の一帯には、亜人類のうちの小妖魔だけでも、総勢で百万に及ぶ者がいて、生きるのに必要とする品目アイテムを売り買いすることで、お互いの暮らしを成り立たせているのだよ」

「まあ、そういうことですのね!」


 マトンに説明して貰い、キャロリーヌは一応の得心に至った。でも、目の前に広がっている光景を眺めながら、胸の内に疑問を一つ抱き、それを率直に問う。


「暮らしもお店も、なぜに、地上にてなさいませんの?」

「うーん、そこまでは、さすがに分からないよ。どうしてだろうか」

「おうおう、マトンさんでも、答えられない謎があったものでさあ。がほほほ!」


 愉快に笑うショコラビスケである。

 ここに意気揚々、パースリが口を挟んでくる。


「慣習によるものと一言で済ませてもよさそうですけれど、察するに、キャロリーヌ嬢は、もっと詳細に渡った説明を、お望みなのですね」

「はい。あたくし、少しばかり詳しく知りたいと思いましたの」

「先へ急ぎながらでよろしければ、お聞かせしましょうか?」

「ええ、よろしくお頼みしますわ」


 立ち止まっている暇はないので、パースリが歩きながら、小妖魔が地下に暮らす要因について話す。キャロリーヌはもちろんのこと、マトンとショコラビスケも同じように、耳を傾けている。


「ゴンドワナ大陸のあった大昔、そこに暮らす猿族、竜族、獣族、妖魔族という四つの亜人類が、しのぎを削り合い、特に猿族と妖魔族は、激しい衝突を繰り返していました。戦いで大きく数を減らした妖魔族のうち、小柄な種類だけが僅かに残り、地面の下へ逃げ延びるのです。ゴンドワナの陸地が海域の底に沈み、猿族、竜族、獣族は、隣りのローラシア大陸へと渡りました。やがて猿族は、元からローラシアにいた人族や亜人類との間に無益な争いを起こし、惜しくも、絶滅に至ってしまいます。その一方で、ゴンドワナからきた竜族と獣族は、ローラシアの地に住む者たちと共存することができました。一万と五千年も以前のことです。その頃には、アラビアーナの地下がローラシア大陸と繋がって、今の規模にまで大きくなっていました。長い地下生活で、いっそう身体の小さくなった妖魔族は、ボクたちが現在、()()()と呼んでいる亜人類のことです。彼らは、今なお、生き長らえていますし、その一部が、地上の辺境、あるいはドリンク民国にも暮らすようになっています。ただ、ここら上層は、一年を通して暑くも寒くもないところなので、地下ここで生き続ける小妖魔は、かなり多くが残っているのです。お分かり頂けましたか」

「はい。あたくし、とてもよく理解できましたわ!」


 キャロリーヌの抱く疑問は、まるで濃く立ち込めていた霧が、綺麗に晴れるかのように、跡形もなく消え去るのだった。

 丁度、一行は、パースリの知り合いが営む雑貨屋に着く。

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