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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》後戻りのできない艱難辛苦
201/438

《★~ 地下迷宮の入場門 ~》

 逃げる宝石ヂューエル泥棒(‐スィーフ)を追ってきたパースリとショコラビスケは、いくつかある脇道の一つに入ったところで、奇しくも、見失ってしまう。

 少し先に行くと、地下迷宮の入場門がある。番人を務めている小妖魔のオイスタに尋ねたけれど、期待に反して、なんの手掛かりも得られない。


「あの盗人ぬすっと、どこへ行きやがったのですかねえ、まったくよお」

「魔女族は、たいてい飛行フライトできますから、空へ逃げたと考えられます」

「そういうことですかい」


 二人が広い道に戻ったところ、突如、一頭の水牛バファロウが突進してきた。


「ぬおおーっ!」

「がっほ!!」


 ショコラビスケが自らの巨体を盾にして、パースリを庇う。弾き飛ばされそうになったけれど、よく耐えて、猛る牛を止める。

 竜族と水牛が固く組み合って動かなくなっているところに、キャロリーヌとマトンがやってきた。


「あら、大きな牛さんですわ!」

「そうだけれど、ショコラは、こんな道端で一体どうして、牛を相手に力比べのような真似をしているのだい?」


 この質問に、パースリが青ざめた顔で答える。


「いきなり水牛が、こちらに向かって暴走してきました。それで、ショコラビスケさんが前に出て、窮地を救ってくれたのです。もしボクが激突されていたら、ボクの腕や足などは、複雑な(カンパウンド‐)骨折フラクチャを被ったに違いありません」


 話を聞いたマトンは、牛とし合いを続けるショコラビスケに話す。


「兎も角、そこまでにしたらどうだろうか? 二人とも怪我はないようだし、牛に悪気はなかったと思うよ」

「言われてみると、その通りですぜ。がほほ」


 得心したショコラビスケが、牛の両肩から手を離し、謝罪する。


「済まなかった。この俺さまにだって、悪気はないぜ」

「ぬお~」


 自由を取り戻した水牛は、一つ声を発し、急ぎ走り去った。

 それを見送りながらマトンが言う。


「この辺りは、水牛のみならず、色々な獣が出没するから、気をつけないとね」

「はい。あたくし、用心しますわ」

「そういう心掛けが大切だよ」


 マトンは、この意見に続けて、「本当の危険は、地下迷宮の深層にこそ、多くあるのだよ」と話しそうになるけれど、喉元で飲み込む。

 ここにショコラビスケが割り込んでくる。


「マトンさんよお、宝石泥棒の魔女族は、どうなったのですかい?」

「彼女は自分の邸宅に帰ったさ。六系統(フル‐シェイド)にして貰った魔石の方は、この通り無事だったよ。キャロルが取り戻してくれたのさ」


 マトンは、喜びの表情を見せて、賢者の石をパースリに手渡す。

 一方、ショコラビスケが、キャロリーヌの腕の中を覗き込む。


「それはよかったですぜ。でもシルキーは、どうして眠っているのでさあ」

雷金光ライトニングの昏睡呪縛ですの。あたくしの身代わりとなるようにして、このシルキーさんが、犠牲となってしまいました」


 キャロリーヌは、涙ぐみながら、シルキーの身に起きた事件の一部始終を話して聞かせる。そして、昏睡呪縛を解くためには、覇王樹キャクタスの果実を購入して、その汁を飲み込ませる必要があることも伝えた。


「地下迷宮で商売をしている小妖魔の中には、ボクの知り合いも多くいるから、覇王樹は、きっと見つかるよ」

「それは心強いですわ」

「がほほ。それなら早速、迷宮に入りましょうぜ!」


 こうして一行が入場門へと進む。

 アラビアーナの地下は、小妖魔の協会ギルドが管理しており、そこへ入るには、人族と魔女族なら金貨二枚、竜族と獣族は金貨三枚を支払うように決められている。

 番人を務めるオイスタに、キャロリーヌが問い掛ける。


「白頭鷲の入場には、おいくら必要ですの?」

「死んどる鳥は、払わんでえがっさ」

「シルキーさんは、生きておられますわ。今は眠っておいでなの」

「眠っとるだけっさか!!」

「はい」

「ほっさあ、銀貨六枚であい」

「ボクが纏めてお支払いします」


 懐から巾着パウチを取り出しながら、パースリは話を続ける。


「この白頭鷲が、後日ここに戻ってきたら、問答無用ノウアーギュメントで通行をお認めになって下さい。謝礼として、銀貨十四枚を追加で支払っておきましょう」

「えがっさ、あいあい!」


 オイスタは、喜んでお代を受け取った。

 入場門が開かれ、キャロリーヌたちが地下迷宮に足を踏み入れる。

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