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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》アラビアーナの地下迷宮
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《★~ 大賢者の最上級宝石(二) ~》

 オイルレーズンが先ほどから、賢者の石や、ディグという高名な全世界学者の話を長々と続けているけれど、それらが竜族兵を救うための作戦と、どのように関係しているのか、シラタマジルコには、さっぱり分からない。

 それでも、余計な口を砂粒の大きさすら挟んだりはせず、黙黙もくもくと聞いていたところ、彼女の透き通る蒼い瞳に、オイルレーズンが鋭い視線を向ける。


「シラタマジルコさんや」

「はい、なんでございましょう」

「あたしが、どうして賢者の石や、叔父の昔話をしておるのか、少なからず疑問を感じるのでは、ないじゃろうか?」


 まるで胸の内を透かして見られたかのような問い掛けだったので、シラタマジルコは思わず目を伏せ、畏まった態度で返答する。


「オイルレーズン女史は、誠に高く鋭い洞察力を、お持ちにあらせられます。あたいは、真の意味で、心より感服させて頂くことになりました」

「ふむ」


 この瞬間、突如、「きゅるぅ~」という音が、部屋に響く。


「おお、つい腹の虫を鳴らしてしまったわい」


 平然としているけれど、オイルレーズンは、今朝、三つ刻を過ぎた頃に、エルフルト共和国から戻り、取るものも取りあえず、こちらに向かって出立した。そのため昨日の夕刻から、なにも口にしていないのだった。


「そのように空腹のご様子にあらせられますのに、なんの配慮を致すこともなく、呑気に構えておりまして、大変申し訳がないと存じます」

「なんのなんの、気にせずともよい」

「思いやりの深いお言葉、ありがたく感じ入りますが、せめて今からでも、お菓子の仕度を整えさせて下さいな」

「そうか。せっかくの好意じゃし、頼むとするかのう」

「畏まりまして存じます」


 部屋を出て、急ぎ調理場へ向かうシラタマジルコである。

 ショコラビスケが、嬉しそうに問い掛ける。


「どんなお菓子を、用意してくれるんですかねえ?」

「あたしが知るものか」

「へいへい、そりゃあご尤もでさあ。がほほ!」


 たとい高く鋭い洞察力を持っていても、これから出される菓子を言い当てるのは難しいので、答えられないのは無理もないこと。

 少しして、シラタマジルコが仲間の竜族兵に手伝って貰い、人数分の小鉢、茶碗など、そして大きな丸壺ポットを運んできた。


黒竜蜂こくりゅうばちの佃煮でございます」

「あら、蜂ですの!?」


 小鉢と匙を手渡されたキャロリーヌが、驚きの声を発するのだった。


「お嫌いでしたか」

「あたくし、蜂なぞ、食したことがありませんもので……」

「たいそう美味にございますよ」

「針や毒は、ありませんの?」

「黒竜蜂は強力な顎を持っておりますが、針も毒もございません」

「顎まで食しますの?」

「はい。しっかり煮込んでありますから、とても軟らかくなっております」


 続いて、丸壺から茶碗に注がれたのは、澄んだ赤紫の輝きを放っている。


「こちらは白松露トラフルのお茶にございます」

「白松露といいますと、マシュルームの一種ですわね?」

「その通りです」


 ここにオイルレーズンが口を挟む。


「キャロルや、せっかくの茶と菓子じゃから、ありがたく食すとしよう」

「はい、頂きますわ」

「この俺も、ありがたく食しますぜ。がっほほ!」

「マトンさんも、ご遠慮なく、どうぞお召し上がり下さいな」

「うん、ありがとう」


 蜂は、竜族なら好んで食するし、魔女族も、肉の代用にすることがある。

 しかしながら、人族のマトンと、人族の娘として育てられたキャロリーヌにとっては、初めて味わう料理である。


「とても上品な甘辛さで、本当に美味ですこと!」

「うん、最初はどうかと思ったけれど、丁度よい味だね」

「がほほ! さすがはあねさんの作ってくれたお菓子、大陸一に美味いですぜ!」

「それはパンゲア軍から支給されている保存食の一つで、あたいが作ったのではないぞ」

「がほっ、そうでしたか……」


 この後、一番に食べ終えたオイルレーズンが、三杯目の白松露茶(トラフル‐ティー)を飲みながら、先ほどからの話を続ける。


「魔石粉砕の作戦を成し遂げ、無事にまた地上へと戻ってくるには、賢者の石と、全世界学者の知恵が必要になる」

「得心しました。だからオイルレーズン女史は、それに関係するお話をなさっておいでなのですね?」

「そうじゃとも」


 オイルレーズンは、昨晩、パースリという全世界学者と会い、相談して決めたことについて、話し始める。

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