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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART5 過酷な地下迷宮探索》アラビアーナの地下迷宮
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《☆~ キャロリーヌの決意(四) ~》

 一行は、王室の御用達馬車に乗り、しばらく静かに揺られる。

 その道中も、ショコラビスケとサトニラ氏が楽しげに会話を続けている。


「ところで、今回どうして訪問団に、ご参加なさったのでしょうか」

「おうサトニラさん、よくぞ聞いてくれましたぜ! 実はなあ、知り合いで少なからず気にしている女が、パンゲア帝国衛兵の小隊長をしているのですがね、そのガイに会いたい一心で、はるばるやってきたってえ訳ですぜ。がっほほ!」

「その小隊長とは、どなたのことでしょうか」

「名はシラタマジルコですぜ」

「ああ、彼女のことでしたか」

「がほっ、知っておいでなのですかい?」

「はい。先日のこと、女王陛下の白馬譲り受け団の一人であったシラタマジルコさんは、先遣(アドヴァンス)部隊(‐パーティ)の長としての務めを立派に果たした功績が認められ、今では等級グレイド昇格アプして、中隊長になっていますよ」

「おうおう、そりゃあ、この俺も鼻が高いぜ!」


 大喜びするショコラビスケである。

 その一方で、馭者ドライヴァが目的の地に到着したことを伝えてきた。この先、湖まで少しばかり歩く必要があるという。

 馬車を降りると、一帯を占める色鮮やかな草花に迎えられた。黄林檎(イェロウ‐アプル)の樹林があり、甘そうな香りを漂わせている。

 緑色の果実を見つめ、キャロリーヌが目を輝かせざるを得ない。


「まあ、美味しそうですこと!」

「いいや違う」

「えっ、違いますの!?」

「まだ黄色く熟す前じゃから、美味ではないよ」

「そうなのですか?」

「キャロルは黄林檎を知らぬか」

「はい。あたくし、林檎は緑色のしか、見たことありませんもの」

「皮の色が違うだけで中身は同じようなものじゃよ。ただ、どのような料理に使うのが適しておるか、種類によって少なからず差があるがのう。ふぁっはは」

「まあ、林檎も、お料理によって、種類を使い分けますのね!」


 感心するキャロリーヌに、サトニラ氏が話し掛けてくる。


「この黄林檎を使って、林檎アプル麺麭(‐タルト)というお菓子を調理しますと、たいそう美味しゅうございますよ」

「あら、食べてみたいものですわ」

「奇遇ですねえ。なにしろ本日の夕餉後に、それを甘味ディザートとしてお出しすることになっております。是非、お楽しみになさっていて下さいませ」

「まあ、本当に奇遇ですわ!」


 このように林檎の話をしながら進み、湖に到着した。

 目の前は浅くて水が透き通っているので、底の黄土が見えている。その先は深くなっているのか、近いところは淡い水色をしていて、遠くへ向かうにつれて、徐々に濃く輝く妖魔コバルト群青ブルーの湖面が広がっている。

 キャロリーヌたち訪問客の四人は、「まさしくサトニラさんが一推いちおしするだけの見事な絶景」と、この眺めが秀逸であることを認めた。

 一方、湖底の泥は極めて不浄で、毒を多く含んでいるため、落ちないように気をつけなければならない。サトニラ氏が念のために、もう一度、その点を話しておく必要を感じる。


「湖の美しさに心が魅かれ、つい水の中に入りたいという衝動に駆られます。しかしながら、それは避けなければなりません。あの黄土色の泥に足を一歩でも踏み入れますと、のめり込んでしまいます。そうなりますと泥沼ですから、たちまちにして体勢を崩し、身体が沼底へと沈むのです」

「まあ、おそろしいこと!!」

「仰る通りです。昔から妖魔に引き込まれるという言い伝えもあります。どうか皆さま、くどく繰り返し申しますが、くれぐれも、ご警戒になって下さいませ」

「ふむ。用心するに越したことはないのう」


 代表で返答するオイルレーズンの顔を見て、マトンとショコラビスケは、無言で頭を一つ縦に振ることで同意を示す。

 キャロリーヌも、「あまり水辺に近づき過ぎないようにしましょう」と気を引き締めるのだった。

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