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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART4 パンゲア帝国の脅威》竜族を救い出す新しい任務
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《☆~ 竜族を救い出す策(二) ~》

 こちらはパンゲア帝国の後宮内。最も絢爛豪華な王妃居室、第一王妃(ファースト‐レディ)の間で、先代王の第三王妃、ベイクドアラスカは、帝国衛兵の軍が思うようにローラシア皇国へ侵攻できていないという報告を受けたことで、大きな不満を抱き、たいそう機嫌を損ねてしまっている。

 その傍には、剃髪姿シェイヴィングの男性、バトルド‐サトニラが低い腰の姿勢で、頭を床に届くほどに落としている。

 安楽椅子カンフォトチェアの上から、厳しい叱責の声が飛んでくる。


「メン自治区を制圧し、飛竜ワイバンをうまく使って迅速に敵地へ入ったところまではよいが、そこで足踏みとはなにごとか! この失態の咎は極めて重いぞ!」

「はい、ご尤もで、申し開きも立ちようにございません」


 このサトニラ氏は、政策官長の立場にあって、今回のローラシア侵攻作戦では、指令官長を任されている。そのためベイクドアラスカは、彼の失敗フェイリャを、容赦なく追及する。


「なぜ衛兵らを先に進ませぬか! 説明せよ!」

「では僭越ながら、少々申し開きをさせて頂きます。実はメン自治区の南部から国境の壁を越えてローラシアの地に入ったところ、相手側の軍が、大隊にして五個の規模で集結しておりました。こちらの兵数と比べますと倍ほどになりますもので、体勢を立て直す必要があると判断した次第にございます」

「その周辺は、皇国の兵が少ないのではなかったのか!」

「通常は、その通りにございます。昨日ばかりは、その想定が大きく外れてしまったようです」

「外れたとはどういうことか! 普段と異なる状況となっておったのには、なにか理由があるのだ。あっ、密偵スパイに違いない! こちらの作戦を向こうへ知らせる曲者がおったか!」


 もしもベイクドアラスカの推察した通りなら、サトニラ氏にとっては、少なからず厄介な事態である。この帝国の機密を漏らしている輩が野放しになっているとすると、そのことで責めを受けるのは政策官長である自身なのだから、そう思うのも無理はない。


帝国女王の(ザ・クウィーンズ・)マザ殿下、ローラシアの地で、普段と異なる状況となっていましたことについて、私の考えを述べてもよろしいでしょうか?」

「述べてみよ」

「昨日、あの近辺にローラシアの護衛官軍が集結していたのは、訓練のためだったのだと思います。そこでパンゲアの衛兵たちと遭遇し、それも訓練の一環だと勘違いをして、一部では戦いが始まったのです」

「なんだと、本当なのか?」

「おそらくはそうです。ところが両軍の大隊長は異変に気づき、取りあえず戦いをやめさせ、そのまま今日まで睨み合いの形になってしまったのでしょう」

「ほほう、そうだったか」


 ベイクドアラスカは、サトニラ氏の話を信用してしまった。

 ここに第一女官のミルクド‐カプチーノが、どこからか、音もなく現れる。


「帝国女王の母殿下、ローラシア皇国から、急ぎの親書が届いております」

「うむ」


 ベイクドアラスカは、ミルクドから紙片それを受け取り、この場で読んだ。


「ううむ」

「どうかなさいましたか?」

「……」


 考える様子を見せたまま返答しないベイクドアラスカである。サトニラ氏とミルクドは、黙って待つことにした。

 そのまま数分刻(ミニト)が過ぎ、ようやく言葉が発せられる。


「ローラシアめが、停戦交渉をしたいと申してきたのだ。どうしたものか」

「お受けしてみては、どうでございましょうか」

「交渉してどうする?」

「少しでも有利となるような形で、今回ばかりは矛を収めることが、最善の策かと思います。このまま大軍同士で正面衝突となりますと、たいそう多くの兵を失ってしまい、たといローラシアに勝ったところで、こちらが大きく疲弊してしまっては、エルフルト共和国に攻め入る隙を与えるおそれがありますので」

「うむ、それもそうだな」


 サトニラ氏の進言を、尤もな道理と思わざるを得ない。ベイクドアラスカの抱く野望は、あくまで大陸全土の支配であって、たった一つの国に勝つことではないのだから。


「よし、ローラシアに伝えて、交渉の準備を整えよ」

「承知致しました」


 サトニラ氏は、まず頭を深く下げ、速やかに立ち去った。

 その一方でミルクドは残り、ベイクドアラスカと別の話を始める。

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