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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART4 パンゲア帝国の脅威》竜族を救い出す新しい任務
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《★~ ショコラビスケの男気(三) ~》

 昨日の夕刻と今朝早くに伝書を届けてくれた使い鷲のシルキーが、ローラシア北西部国境門で待機している。

 たった今、キャロリーヌたちの一行が到着したところ。ここでヘドを務めている二等護衛官、フィッシュ‐チャウダがシルキーの脚に、新しい伝書を結びつけようとしているのだった。

 検問を一番に終えたオイルレーズンが、フィッシュの傍へやってくる。それで彼は手を止め、細長い形に折り畳んである紙片を差し出す。


「シルキーさんに、丁度これを届けて貰おうとしておりました」

「皇国宮廷から得られた、状況の報告じゃな」

「はい、仰せの通りです」


 オイルレーズンは、伝書を受け取って開き、取りあえず、この場で黙って最後まで目を通す。


「早朝に始まった交戦が、中断したのじゃな。パンゲアの兵士は、思うように前へ進めず、足踏みさせられておる」

「そのようです。皇国護衛官軍がこんなにも迅速に布陣できるものだとは、相手側にとって、さすがに想定し得ない、驚きの事態だったことでしょう」

「やはり、こちらが早く動けたのは、昨日の秘文書があったお陰じゃわい」

「まったく、そうだと思います」


 キャロリーヌたちの検問も済んだので、オイルレーズンはフィッシュとの会話を終え、まずはシルキーを空へ帰す。

 マトンが一足早く貸し馬屋へ向かい、二頭立ての馬車を借りてきた。一行が乗り込み、皇国中央へ向けて動き始める。

 馭者ドライヴァを務めるマトンが、なんとなく気になっていることを尋ねる。


「ところでオイルレーズン女史、美しい(ラヴリ‐)お嬢さん(ヤングレディ)と彼女の母君マザも一緒になるのかと思っていました。あの二人は、どうなさっているのでしょう?」

「エルフルトに、二日ほど滞在するそうじゃよ。今頃は、どこぞの名所へでも、見物に出掛けておるかのう」

「それは楽しそうで、よろしいことですね」

「ふむ」


 ここにショコラビスケが割り込んでくる。


「マトンさんよお、その()()()()()()()てえのは、キャロリーヌさんよりも、美しいお方なのですかい?」

「ショコラ、淑女レディの美しさというものは、比べることなどできないのだよ。キミは、キャロルとシラタマジルコさんとで、どちらが美しいか、答えられるかい?」

「おうおう、そう言われてみると確かに、比べられねえなあ。こりゃあマトンさんに、一本取られちまったぜ! シラタマの姐さんはもちろんだが、キャロリーヌさんも、この大陸で一番にお美しい。がっほほほ!」

「ええっ、この()()()()()と仰いますの!? ご冗談では??」

「冗談なものですか。本当のことですぜ」

「あらまあ、そんな滅相もない……」


 驚きと戸惑いを隠せないキャロリーヌである。


「ショコラや、このオイルレーズンも大陸で一番に、美しいかのう?」

「えっ!!」

「どうじゃな?」

「や、おっ、も、もちろん、お美しいかと……」

「戯け! 声が上擦うわずっておるわい」

「あははは!」


 笑い出したマトンに、ショコラビスケが背後から抗議する。


「そんなに笑わねえで下せえ。嫌味なマトンさんだぜ、まったくよお!」

「うん、悪かったよ。しかしショコラも偽りを語ることが苦手だね」

「へいへい、その通りですぜ」

「あら、偽りでしたの?」

「いえいえ、キャロリーヌさんがお美しいのは、本当ですぜ。ただ、その……」

「ショコラや、もうよいわい。藪蛇やぶへびじゃからのう」

「……」


 ショコラビスケは、老魔女に睨まれて黙るしかない。

 ここでマトンが話題を変えることにする。


「それはそうと、オイルレーズン女史」

「なんじゃな?」

「先ほど道端で仰せになった、パンゲア帝国との間に起きているという、銀海竜の逆鱗どころではないことについて、お教え下さいますか?」

「おお、そうじゃったわい」

「俺も聞きたいですぜ!」

「ふむ。順序立てて話すとしよう」


 オイルレーズンが、状況を知らない二人に、昨日から起きている厄介な事件について、一部始終を説明する。それは、当然のこと、マトンとショコラビスケを少なからず驚かせる。

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