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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART4 パンゲア帝国の脅威》竜族を救い出す新しい任務
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《★~ ショコラビスケの男気(二) ~》

 冷静さを保った頭でマトンが考えた末、落ち着いた声で話す。


「ショコラが十分に意欲を持っているのだと分かったよ。でも、集団パーティの活動方針はオイルレーズン女史が決めることだからね。相談したら、どうだろうか」

「おうおう、銀海竜の討伐はオイル婆さん次第ってことだな。がほほ」


 突如、背後から叱責の声が上がる。


「戯け!!」

「ほがっ」


 ふり返ると、すぐ傍にオイルレーズンが立っていた。


首領キャプテン、済みませんです!!」


 ついうっかり、馴れ馴れしく「オイル婆さん」と呼んでしまったことを深く反省するショコラビスケである。

 そんな彼に、オイルレーズンと一緒にやってきているキャロリーヌが、横から問い掛ける。


「銀海竜が、どうかしましたの?」

「おうキャロリーヌさん、よくぞ聞いてくれたぜ!」

「え??」

「俺は、シラタマの姐さんを救うために、銀海竜の逆鱗を奪いたいんだ!」

「まあ、そうですの!?」

「おうよ!」


 ここにオイルレーズンが口を挟んでくる。


()()とは、朽ち(ラト‐)果て(アウェイ)の効果を取り消してやるという意味かのう?」

「へいへい、その通りですぜ!」

「やはり、戯けじゃったわい」

「へっ、そりゃあ、どういうことですかい?」

「朽ち果てのような地縛りの魔法スペルを掛けられておるのなら、銀海竜の逆鱗を与えたところで、呪いの効果は、決して消えることがないのじゃよ」


 オイルレーズンが言っている()()()は、いわゆる「地帯エアリア呪縛(‐スペル)」に属する魔法だということ。それを施されている者は、ある範囲の領域から離れると、なんらかの害悪が生じる。朽ち果ての場合は、その言葉が示す通り、身体が次第に朽ちてゆき、二日もしないうちに命が果ててしまう。


「地縛りの効果を消すには、呪縛の根源になっておる魔石ませきを壊さねばなるまい」

「なんだ! そうするってえと、どんな秘薬を与えようが、シラタマの姐さんは、助からねえのですかい?」

「ふむ、そうじゃとも」

「そ、そんなあ……」


 オイルレーズンから話を聞いたショコラビスケは、言葉を失い、そして肩と頭を落とさざるを得なかった。銀海竜の逆鱗を手に入れて、シラタマジルコや竜族兵を救うという計画が、いわゆる「水泡に帰する」ことになったのだから、それも無理はない。

 キャロリーヌは、がっかりするショコラビスケを少なからず気の毒に思い、オイルレーズンに問い掛ける。


「その()()は、どこにありますの?」

「呪縛地帯の真ん中辺りじゃわい。パンゲアの竜族兵を縛る魔石のことなら、おそらく、帝国王室の内部か、その近いところに据えられておるはず」


 ここでショコラビスケが、威勢よく頭を上げた。


「それじゃあ、この俺さまがそこへ乗り込んで、そんな厄介でしかない石を、叩き壊してやろうじゃねえか!」

「それこそ戯けじゃわい!!」

「がほっ??」

「パンゲア帝国の王室内に、名もない竜族が、そう容易く入れるものか!」

「オイルレーズン女史、お待ちになって下せえ! この俺には、ちゃんと()()()()()()()という立派な名がありますぜ?」

「そんなことは、とっくに知っておる! あたしの言った《名もない》の意味は、《高名でもない》ということじゃ」

「そりゃあ、まあ……」

「しかもじゃよ、たとい魔石の場所に辿り着いて壊せたところで、その途端、あっけなく命を落としてしまうわい」

「へえっ、壊した者が、死んじまうというのですかい?」

「ふむ」

「ひっ、おそろしい石ですぜ、まったくよお」

「じゃから魔石と呼ばれておる」

「……」


 勢いがついたのも束の間(モウメンテリ)で、またしても肩を落とすショコラビスケ。

 会話が途切れたので、オイルレーズンがマトンに伝える。


「銀海竜の逆鱗どころではないことが、パンゲアとの間に起きておる」

「え、それはどのような?」

「詳しいことは、馬車の中で話すとしよう」

「承知しました」


 こうしてオイルレーズンたちは、エルフルト南部国境門の検問所に向かう。

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