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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART4 パンゲア帝国の脅威》竜族を救い出す新しい任務
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《★~ ショコラビスケの男気(一) ~》

 こちらは、エルフルト共和国の南部国境門へと続く国道一号線の路上。

 細身だけれど凛々しい容姿をしている人族、マトン‐ストロガノフ、そして逞しい巨体が目立つ竜族のショコラビスケが左右に並び、悠然と歩いてきた。

 一号線の出発点スタートを示す標識の前に着き、二人は立ち止まる。この後、キャロリーヌたちと合流し、ローラシア皇国へ帰る予定。

 ここでショコラビスケが、突如、真剣な顔をして叫ぶ。


「この俺さまは決めた、がほっ!!」

「な!? いきなりなんだい?」

「おうマトンさん、よくぞ聞いてくれたぜ!」

「うん、確かに聞いたけど、しかし珍しい表情をしているね」


 普段は陽気な笑顔で話すショコラビスケのはずが、今までにはなかった気色を見せている。そのために、まるで()()のある勇者に見えてしまい、「これはどうしたことか?」と驚かざるを得ないマトンである。

 その一方で、竜族の若者は、いわゆる「泰然自若コンポウジャ」に満ち溢れた顔面を、少しも崩そうとしない。


「いつもは隠しちゃいるが、これが俺さまの真実の顔(リアル‐フェイス)だ!」

「そ、そうか。でも、その()()()()とやらが、一体どんな真実を語りたい?」

「俺があねさんを救い出す!」

「え、その()()()って、アタゴー山麓東門で出会ったシラタマジルコという、帝国衛兵小隊長のことかな?」

「おうよ。必ずや救ってみせる! いや、そればかりか、パンゲアの帝国軍に捕らわれている、すべての竜族を救い出す!!」

「やれやれ。いつも以上に、大きく出たものだなあ」

「がっほほ! マトンさんよお、今日の俺さまは、()()()()()だぜ?」


 探索者や冒険者と呼ばれる者たちは、その中でも若者なら特に、自身の勇敢さや強さを、なにかと周囲の者に誇示したがるもので、大袈裟に言葉を重ねたりするけれど、このショコラビスケも、まさしく同じ部類クラスである。その点は、最初に話した時から十分に知っているから、「どうせまた威張っているだけだろう」くらいに軽く考え、退()()()()の一環として、適当に相手をするのでもよい。

 しかしながら、今日に限ってショコラビスケの燃えるような眼差しから、異常とも思えるほどの「真剣さ」を感じ取れるので、少しばかり心を動かされてしまったマトンは、敬意を示すために、真面目な態度で応じる。


「実際にね、たとい首尾よく救い出せたのだとしても、彼女たちは、生きていられないよ。おそろしい魔法、朽ち(ラト‐)果て(アウェイ)針五万本(ドウント‐テル)が施されているという話を聞いただろう。それなのにショコラ一人で、どうするつもりだい?」

「そのことなんだがなあ、ドリンク民族で知らねえ者などいない銀海竜ぎんかいりゅう逆鱗げきりんを使えば、どうにかなるだろうかと、この俺は考えてみたんだ」

「うん、僕も知っているよ。奪ったことが一度ある」


 幻の海竜と呼ばれる銀海竜の逆鱗は、延命効果の高い秘薬として、ドリンク民族だけでなく、この広い大陸中で、なかなかに有名な極上等(マクスィマム‐)品目アイテムなのだという。それを手に入れた者は極めて少ない。


「がほほ、まさか本当かよ?」

「もちろん」

「つくづく凄い人族だとは思ってたが、やっぱりマトンさんは、最上級の(スパーラティヴ‐)探索者イクスプローラに違いねえぜ!」

「今さら、なにを言うのだい」

「なあ頼む、もう一度だけ銀海竜から逆鱗を奪ってくれ!」

「ううーん。だけど、十数年も昔のことでね」

「次は、この俺が一緒に戦うんだ!! 絶対うまくいくぜ!」

「あの討伐では、面子フェイスとして戦いに参加した竜族の二人が、あっけなく丸飲みにされて、命を落としたのだよ」

「がほっ!」


 短い叫び声を発した竜族の顔を横目に、マトンが追い打ちを掛ける。


「命懸けの討伐戦になるだろうけど、それでも、やれるかい?」

「おっ、おうよ!! 俺たちの集団パーティは、金竜の討伐に挑もうとしてるところじゃねえか。だったら銀海竜の一匹や二匹、倒せないでどうするよ!」

狂暴の程度(ヴァイオレンス)なら銀海竜だって、金竜に劣らない部類だよ」

「おうおう、望むところだぜ!」


 いつもより声に力を込めるショコラビスケである。

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