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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART3 白馬ファルキリーの騒動》ローラシア皇国の危機
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《★~ 女王就任式(一) ~》

 アタゴー山の麓、東側と西側に国境門があって、ローラシア皇国へ入ろうとする者は、身分証や通行証を使った本人性オーセンティ証明ケイションを受けなければならない。

 天頂に黄土オークルの星(‐スター)が光る十一刻半、臙脂色ダークレッド外衣マントを纏う帝国衛兵小隊長の出で立ちをした竜族女性が、部下たち四十人を連れ、こちら「アタゴー山麓東門」にやってきた。

 その者が、突如、大声で問い掛ける。


「おいお前たち、ここのヘドは誰だ!」

「二等護衛官のクレソン‐ピューレさまです」


 返答したのは、三人いる門番のうち、すぐ近くに立つ人族の若者。

 竜族の女は、その者の顔を睨みつけながら命じる。


「すぐに呼べ!」

「どのような、ご用件がおありか。いやそれより、どなたです?」

「見れば分かることだろう。あたいは、パンゲア帝国の衛兵だ! 女王陛下の白馬譲り受け団、先遣(アドヴァンス)部隊(‐パーティ)の長、名はシラタマジルコという」

「そうですか。では、ご用件は?」

「帝国王室から、至急の知らせを伝えにきた! だから、そのクレソンとやらを、さっさと呼べ!」

「ピューレ二等護衛官さまは、仮眠ナプになっておられます」

「だったら今すぐ叩き起こして、ここへ連れてこい!!」


 シラタマジルコと問答をしている者は、他に二人いる門番の一方へ助けを求めようと、困惑した表情で視線を向ける。

 判断を委ねられる形となった年長者の門番が言う。


「帝国から至急の用件というのであれば、やむを得まい。起こして伝えよ」

「ええっ、叩き起こすのでしょうか!?」

「叩いてはならぬ。そっと揺り起こせ。そうでないと、後が怖いぞ」

「はっ、承知しました!」


 シラタマジルコは、急ぎ走って向かう若者の後ろ姿を眺めながら、残った二人に尋ねる。


「お前たちは、パンゲア帝国の王陛下が近々ご退位遊ばされ、皇太子殿下、ボンブアラスカさまが、新しい女王陛下として、ご即位になることを知っているか。それとも、まだ聞いていないか?」

「それは初耳ですね」


 年長者の門番が平然と答えた。そして、もう一人がつぶやく。


「本当なのかなあ」

「当たり前だ! このようなことを偽って話せば、死罪が待っている!」


 ここへ別の竜族が、人族と一緒に姿を現す。


「おいおい、こんな夜更けに怒鳴ってやがるガイは、どこのどいつだい?」


 背中へ、不意に声をぶつけられたシラタマジルコが、俊敏にふり返る。


「おのれ、なんだと! ああっ、お前は!!」

「よお、久しぶりだな、シラタマさんよ」

「ああ確かに。しかし、誰だったか」

「おいおい! そりゃあ、ツレないぜ。この俺を、忘れたのか!?」

「顔だけは覚えている。そんなにとぼけたつらは、一度でも見れば、そうそう忘れられないからな」

「おいこら、酷いじゃねえか! 俺さまはショコラビスケだ!」

「ああ思い出した。そういう締まりのない、名だったな」

「お前、いい加減にしねえと、この俺だって怒るぞ!!」

「少しも怖くない。はははは!」

「やれやれ、シラタマのあねさんにゃ、さすがの俺も敵わねえぜ」


 今まで黙って聞いていた人族が、ここに割って入る。


「知り合い同士みたいだね?」

「おうよ」

「ああっ、もしかして、あなたは!」


 シラタマジルコが、突如、瞳をギラリと輝かせ、人族を見つめるのだった。


「おや、僕の面も知ってくれているのかな?」

「はい! お美しいお顔ばかりか、あなたが、有名なマトン‐ストロガノフさまと仰る剣の達人でいらっしゃることも存じております。ずっと二十歳、今なお独身、女性に優しい素敵な殿方、そして最上級スパーラティヴ探索者イクスプローラ。ああ、こうして直接、言葉を交わすことができまして、誠に光栄です! うふふ」

「へえ、そうかい。このような凛々しいお姿をされた淑女レディから、そこまで言われてしまうと、さすがの僕も照れるよ。あはは」

「なんだそりゃ! 同じ竜族仲間の俺さまとは、五回より多く会って話したというのに、名前覚えねえで、初めて話してるガイのことは、いちからしちまで知ってやがるのかよ! しかも態度まで、ガラリと変わるときたもんだ。俺は、ますますやってられねえ!」


 ショコラビスケは、不貞腐れ(ペチュラント)ざるを得ないのだった。

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