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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART3 白馬ファルキリーの騒動》ローラシア皇国の危機
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《☆~ ロッソの縁談(一) ~》

 中央通りから脇道へ入って進んだ先に、二等の地帯があって、市場で働く者たちの多くが住んでいる。

 皇国から割り当てられた、貸宿ラヂングズと呼ばれる宿所の一室に、ロッソが、今は一人、ひっそりと暮らしている。ここにキャロリーヌとオイルレーズンが訪れた。

 ロッソの母親、ビアンカ‐ヴィニガの命日ということで、ロッソは、高級食材として知られる銀竜鯰ぎんりゅうなまずを手に入れていた。今宵、その姿焼き(ホウル‐グリルド)を、キャロリーヌたちにも振る舞ってくれるという。

 ビアンカが生前に愛用していた平皿にも、最初に焼き上がった銀竜鯰が載せてある。亡くなった者を偲んで捧げる、いわゆる「お供え(オーファリング)」である。


 女性たちの夕餉は、少なからず賑やかに進む。いつもは一人で静かに過ごしているロッソにしてみれば、本当に楽しい機会になった。

 鯰を一匹ずつ食べた後も、香草茶(ハーブ‐ティー)を飲みながら、会話を続けている。


「ロッソさん、結婚のことは、どのように考えておるかのう?」


 オイルレーズンが尋ねたのは、以前ロッソに持ち掛けた縁談のこと。

 エルフルト共和国の大統領プレズィデントが息子の嫁探しをしていて、婚約者フィアンセにならないかという話だった。キャロリーヌも、あの一件を思い返す。その際にロッソは、「少しばかり考えてさせて貰えますでしょうか」と答えていた。


「色々と、思案を巡らせました。それであの、オイルレーズン女史」

「ふむ。やはり気は進まぬかのう」

「いえ実は、お受けしようかと、決心しておりました。けれども、あれから数ヶ月が過ぎていることですし、お相手の方は、もう見つかってしまったとばかりに」

「いいや、まだ見つからぬわい。そもそも嫁を決めるのは、他でもなく、このあたしじゃからのう。ふぁっははは!」

「え、それは、どういうことでしょう??」

「二等栄養官さまがお決めになる!?」


 ロッソとキャロリーヌは、不思議に思うのだった。どうして嫁を決めることが、結婚しようとしている本人でなく、本人の親でもなく、別の国にいる魔女族に任されているのか、そう簡単には理解できそうにない。

 それでもキャロリーヌは、咄嗟に考えた推察を話してみる。


「ひょっとしますと、二等栄養官さまは、結婚を望まれている方たちを相手に、お嫁さんや、お婿さまを探すご商売を、お始めになったのかしら?」

「いいや違う」

「あら、違いますのね」

「あたしが嫁を見つけたところで、お代なぞ貰えぬわい」

「まあ、そうでしたか」


 想像が外れていたと知り、キャロリーヌは肩を落とした。

 その一方で、ロッソが思いつきを口にする。


「オイルレーズン女史は、エルフルト共和国の大統領と、なにか深いご縁でも、お持ちなのですか?」

「深い縁というのは、その通りじゃとも。なにしろ、エルフルトの大統領、コラーゲン‐ハタケーツは、あたしの弟じゃからのう」

「えっ!」


 ロッソは、思わず、短い叫び声を上げてしまった。

 もちろんのことキャロリーヌの方も、少なからず驚いている。


「あらまあ、そうとは知りませんでした」

「ふむ。キャロルにも、話しそびれておったわい。ハタケーツ家には、ずっと守り続ける家訓があるのじゃよ。男子に限って、その婚約者を選ぶのは、身内で一番の長老に任せるべしとな。そのために、このあたしが、コラーゲンから息子の嫁探しを頼まれた」


 オイルレーズンに一人だけいる兄弟は、ハタケーツ家に婿入りし、第四百四十六代の大統領に就任したという。

 キャロリーヌは、この話も初めて聞くことで、ロッソと二人、感嘆の声を上げるしかないのだった。

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