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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART3 白馬ファルキリーの騒動》ローラシア皇国の危機
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《★~ 水鏡の効果 ~》

 ワイトカミーリアが、馬場を快調に半周だけ疾駆ギャロプし、真っすぐ戻ってくる。

 ここでは既に、チャプスーイやオイルレーズンたちが集まり、白馬とジェラートの帰還を待っているのだった。

 お馬の背中から颯爽と降り立ったジェラートが、チャプスーイに話し掛ける。


「そちらの麗しい淑女レディが、この馬に、必要な魔法スペルを掛けて下さるのですね」

「はい、その通りです」


 チャプスーイが、従妹で純水ウォータ系統の魔女族、シェドソーメンに、ジェラートとワイトカミーリアを紹介した。

 麗しの魔女は、挨拶の言葉を短く終わらせ、やるべき仕事を、すぐ始めることにする。もたもたしていると日が暮れてしまうので、そうするのがよいと、考えてのことだった。


「魔法を唱え、ファルキリーさんの印象を、このワイトカミーリアさんに映すことにしますから、ジェラート殿は、お馬さんの目をしっかり見据えながら、ファルキリーさんの姿を、胸の内に強く、思い描いて下さいまし」

「はい」


 これで準備が整い、シェドソーメンは一つ、「水鏡アクワミラ」と詠唱する。


「済みましたわ」

「えっ?? もう、よいのですか」

「はい」


 魔法は瞬時に施された。彼女から受けた挨拶と同じく、あまりにも短く終わったので、ジェラートは、拍子抜けせざるを得なかった。

 ここにオイルレーズンが口を挟んでくる。


「ジェラート殿、ワイトカミーリアの姿を、よくご覧になってみなされ。どのように、感じますかな?」

「はっ、ワイトカミーリアに違いありませんが、なんとも不思議なことに、目の前にいる馬がファルキリーのように思えてきます。変な心地ですよ」

「ふぁっはは。それこそ、水鏡の効果なのじゃ!」


 今のワイトカミーリアを見て受ける印象は、ファルキリーに対して抱く印象と同じか、それより強くなっているので、知らない者に、このお馬を見せれば、簡単にファルキリーだと思い込ませることができるのだという。

 けれども、ジェラートが言ったように、以前からワイトカミーリアを知っている者なら、目の前に立つお馬がワイトカミーリアか、そうでないかは、一目瞭然ということに違いはない。

 ここでキャロリーヌが、一つ気になることを尋ねる。


「パンゲア帝国の王さまは、ワイトカミーリアを知っておられませんの?」

「先日やってきたバゲット三世を名乗る男は、見ておらぬそうじゃ。この場で、白い牝馬を順番に歩かせたのじゃが、ワイトカミーリアが出てくる前に、かの者は車から落ちて、帰国しおったからのう。そればかりか、その男はファルキリーを知らぬと、あたしゃ考えておる」

「そうですの?」

「ふむ。かの者は、ファルキリーを見て、輝かしい白馬と褒め、そして名を尋ねたそうじゃ。それでジェラート殿がシルキーローラと答えたのに対し、この白馬こそファルキリーじゃと叫んだそうではないか。目の前に現れた白い牝馬の姿があまりにも見事じゃったから、この馬が噂に聞いておった美しい駿馬、まさしくファルキリーに相違ないという印象を受けたのであろう。じゃが、本当にファルキリーであるという確信がないから、名を尋ねたのじゃ。つまり、かの者は、ファルキリーのことを知っておらぬはず。じゃから今のワイトカミーリアを見て、この馬こそ真のファルキリーと叫ぶに違いない。水鏡の効果で、より強く、ファルキリーの印象を受けるのじゃからのう」


 オイルレーズンが考えた策は、あくまで相手が真のファルキリーを知らないことを前提としているのだった。

 その相手、バゲット三世を名乗る男が、ファルキリーを知らないのなら、なんら問題はないはずと、キャロリーヌは思った。


「それでしたら、安心ですわね」

「いいや違う」

「えっ、違いますの!?」

「この策は、パンゲア帝国に、ワイトカミーリアとファルキリーの両方を知っておる者がおれば、最早どうにもならんわい」

「あらまあ、なんと危うい策でしょうか」

「ふむ。一か八か(ハイ‐ステイクス)、ふぁっはっはっは!」


 いつもより大きな声で陽気に笑うオイルレーズンを前にして、キャロリーヌは、少しばかり心配になってくるのだった。

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