表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART3 白馬ファルキリーの騒動》ローラシア皇国の危機
119/438

《☆~ シャルバートの話(六) ~》

 今度は、オイルレーズンが渋面を見せ、苦言を呈する立場になる。


「やれやれ。悪い賊どもがこなくとも、代わりに狂暴な獣が現れては、本末転倒とみなすしかないわい」

「ああ、それは儂も同じに思う。しかし、どうか信じてくれ。自然改変を行うことで、山賊バンディト集団(‐パーティ)を寄せつけないようにする解決策なぞ、この儂は、決して望んでおらなかった」

「その言葉に、偽りはなかろうか?」

「断じてないぞ。それからもう一つ、魔女のベイクドがシーサラッドの毒殺を計画しておったのも、儂のあずかり知らぬことなのだよ。皇帝陛下に誓ってなあ」

「そこまで言いおおせるのなら、最早、是非は問えぬわい。今日のところは、信じておくとしようかのう。ふぁっはは」

「ふん」


 いつものように、鼻を一つ鳴らすシャルバートである。

 一方、オイルレーズンの視線は、キャロリーヌの顔へと向かう。


「さあて、あたしらは撤退せねばなるまい。病人相手に長話をしておっては、さぞかし身体に、障るからのう」

「おいこら婆さん、もう十分に、長々と話しておるではないか!」

「それほど大きな声を出せるまで、回復できたのじゃな。やはり、白竜髄塩のお陰に違いない。よかったであろう?」

「勝手なことばかり抜かしおって。まったく、食えないババアだ」

「なんのなんの、食われてなるものか。ふぁっははは!」

「ぬ……」


 シャルバートは辟易させられた。オイルレーズンは、これで彼に対する糾弾を、いわゆる「幕引き」と決め、言葉通り、キャロリーヌを連れて部屋から退散することにした。

 二人は栄養官事務所へ向かう。その道中、キャロリーヌが尋ねる。


「伯爵さまの嫌疑は、晴れましたのね?」

「そうなるかのう」

「でも、あのお方が、よくお話しになったものです」

「キャロルや、覚えておくがよい。白竜髄塩は、あたしの顎の調子をよくしたり、弱っておる者の体力を回復させたりするが、その他にも、人族を素直にする働きがあることをな」

「まあ、本当ですの!?」

「もちろんじゃとも。そういう効能があるからこそ、あの頑固な爺さんから、包み隠さず真実を聞き出すことができた。あたしの計略も、見事に功を奏したものじゃわい。ふぁっははは!」


 今回、希少な白竜髄塩を分け与えたのは、シャルバートの自白を促すことが一番の目的なのだという。

 この真相を、もし本人が知れば、「煮ても焼いても食えないババアだ」などと言って、先ほど以上に辟易するに違いない。


「魔女族には、効きませんの?」

「少しばかりの効果は、あるじゃろうな」

「そうですのね」

「ふむ。実はな、シャルバート殿がネクタに交際を申し込みにきおった時、あたしも、その場におった。今でこそ、あのような爺さんになっておるが、若い頃は、なかなかの男でのう。その姿を一目見て、あたしゃ少しばかり、胸を高鳴らせたものじゃわい」

「もしや、恋心を抱かれましたの?」

「いいや違う。そこまでには、ならんわい」

「そうですか……」

「じゃが、もしネクタがおらなければ、あたしが、シャルバート殿と恋仲になっておったかもしれぬのう。ふぁっはは!」

「二等栄養官さまが初めて恋をなさったお相手は、確かマトンさんの、お兄さまでしたわね?」


 そういう恋愛話を以前、キャロリーヌは聞いたことがある。今となって、それを思い出すことになった。

 オイルレーズンが、得意気な顔で答える。


「その通り。ディア‐ストロガノフこそ、あたしが、この生涯で出会った男の中の男じゃったわい」

「え、男の中の男??」

「つまりそれは、一番の男という意味じゃよ」

「では、ご結婚されたお相手は、どうなのかしら?」

「せいぜい二十番目くらいじゃわい」

「あらまあ、そんなにも低い、順位ですの!?」

「そうじゃよ。なにしろ、若い頃のあたしゃ、恋することの多い、純真な乙女じゃったからのう。ふぁっはっはっは!」

「……」


 老魔女の恋愛話には、いつもながら、キャロリーヌも辟易せざるを得ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ