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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART3 白馬ファルキリーの騒動》白馬ファルキリーを巡る争い
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《★~ 水鏡という魔法の話 ~》

 これまで宮廷内で、オイルレーズンとシャルバートは、ローラシア皇国が向かうべき進路を選ぶ際、なにかと意見が衝突し、対立を続けてきた。

 竜族の栄養を管理する新しい官職についても、そうだった。十数年前からオイルレーズンが主張していた、「竜族兵の強化を推し進める機関の、迅速な立ち上げが必要じゃわい」という提案に、シャルバートは、「周辺の国や地域、特にパンゲア帝国とエルフルト共和国に、余計な警戒心を抱かせてしまう火種になる」と言って猛反対したため、栄養官の設置が遅れた。


 たった今、オイルレーズンは、貴重な白竜髄塩を、少しばかりシャルバートに譲り渡そうと、自ら進んで申し出た。これこそまさしく、「敵に(センド・)向けて(ソールト・)塩を(ツゥ・ザ)送る(・エネミ)」と呼ぶにふさわしい行為と言えよう。

 しかしながら、いくつかの条件をつけた上での話だった。聞いたジェラートは、わらにもすがる思いで、「僕にできることなら、どんな要求でもお受けしましょう」と答えた。

 それでオイルレーズンは、「ならば話の続きは、キャロルも加えて、あたしの休憩居室でするとしようかのう」と提案した。

 ジェラートは承知した。手術を受けたシャルバートは、まだ眠ったままなので、オマールと他の医療官たちに任せておけばよいことなので、なんら迷う必要はなかった。


 歩きながら、オイルレーズンは、白竜髄塩を入手することの困難さが、どれほどかを、ジェラートに説明した。

 それだけでなく、顎の調子が悪くなった時に、その痛みを消すために重宝していて、しかも残りが僅かになりつつある、かなり希少な合成アレンジ調味料(‐スパイス)なのだということも話した。

 移動する途中で、栄養官たちが働いている加工場からキャロリーヌを連れ出し、一行は、オイルレーズンに割り当てられている休憩居室に入った。

 先ほど第四玉の間でチャプスーイたちと相談して決めた、ワイトカミーリアという白馬の名をファルキリーに変えてパンゲア帝国へ進呈する件を、オイルレーズンが二人に伝えた。

 キャロリーヌは、ふと思ったことを口にする。


「そのお馬は、きっとファルキリーと、そっくりですのね」

「いいや、違う」

「えっ、違いますの?」

「一等護衛官が言うには、あまり似てはおらぬようじゃ」

「あらまあ、そうですのね」


 今度はジェラートが話し掛ける。


「ワイトカミーリアは、僕もよく知っております。確かに、白い毛並みが見事な牝馬ですが、それでもファルキリーの美しさには、とうてい及びませんね」

「ふむ。それでのう、純水ウォータ系統の魔女族に頼み、ワイトカミーリアを、ファルキリーじゃと思わせる策を考えた」

「そのような都合のよい魔法スペルがあると仰るのですか?」


 ジェラートから尋ねられ、オイルレーズンが率直に答える。


水鏡アクワミラという魔法じゃ」

「それを施せば、ワイトカミーリアが、ファルキリーと同じ姿になりますのね?」

「いいや、違う」

「えっ、また違いますの!?」

「姿そのものを似せるのでなく、雰囲気を映し込むのじゃ。水面に、ファルキリーの姿が映るかのように、ワイトカミーリアに、ファルキリーの印象を映す」


 キャロリーヌは魔女族だけれど、今はまだ魔法のことをあまり知らない。

 そのため、水鏡の説明を聞いても、すぐには理解できなかった。


「難しそうですわね。きっと高等(ハイ‐)魔法スペルの一つなのでしょう」

「いいや、違うわい」

「え、今度も違っていましたか……」

「水鏡という魔法そのものは、とても容易なのじゃよ」

「まあ、そうしましたら、簡単に済みますわ」

「それも違っておるのう」

「……」


 今日のキャロリーヌは、いつも以上に、思いついたことが外れてばかりなので、とうとう言葉を失ってしまうのだった。

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