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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART3 白馬ファルキリーの騒動》白馬ファルキリーを巡る争い
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《★~ パンゲア帝国からの要求(四) ~》

 ローラシア皇国宮廷では、一等の政策官、管理官、護衛官、調理官、医療官が、各官職の長官キャプテンを務めている。設置されて間もない栄養官については、今のところ一等官がいないけれど、二等のオイルレーズンが、長官それに相当する立場にある。

 この者たちに、宮廷で相談役を任されている重鎮、スプーンフィード伯爵を加えた総勢七名が、第四玉の間、皇帝陛下の御前に整列している。

 仔細を知らない者もいるため、まずは事故の一部始終を目撃したジェラートが、先ほど皇帝陛下とシャルバートに伝えたのと同じ内容を話した。

 それに続けて、一等政策官のチャプスーイが、パンゲア帝国の政策官から聞かされた「引責に代わる要求」について打ち明けた。この場に、重苦しい緊迫感が漂うことになる。

 五人の一等官、およびオイルレーズンとシャルバートが、無言のまま、お互いの表情を確認し合う。

 チャプスーイが、沈黙を打ち破って提案する。


「この件に関しては、皇国重要案件、水準レヴェルトゥーで対応が必要かと思います」


 一同がいっせいに、皇帝陛下のご尊顔へ向かって「お伺い」を立てる。

 玉座におられる陛下は微動だになされず、お黙り遊ばしたまま。これには、一等政策官から出された提案を否定しないという意味が含まれている。

 七人が話し合った。その結果、多数決で採択となり、当案件の名称は「水準の二‐バゲット三世骨折事故」に定まった。

 皇帝陛下は、一等官たちの交わす議論に、お耳を傾けなさるけれど、玉音を発せられることは滅多にない。

 オイルレーズンが怪訝な表情で、ジェラートに話す。


「白馬の名を偽って答えたのは、少なからず落ち度かもしれぬが、それよりも、車から転落した輩の骨折が真実か、それを見定めなかったことの方が、失敗フェイリャじゃったわい。そう思われませぬかな、一等管理官」

「仰る通りです。僕も今になって、そのことを悔やんでいます」


 ここにシャルバートが口を挟んでくる。


「パンゲア帝国の王が、遠路はるばるやってきて、身体を張った()()を打ったとでも言うのか」

「その可能性が、十分にありますわい。替え玉を使ってのう」


 四輪車の上で暴れた男が地面に落ちて骨を折ったというのは、すべてそのように見せ掛けた演技ではないかということ。しかも、その男は偽者の王であると。


「なんのためだ?」

「引責に代わる要求のためじゃな」

「それは、いかなる要求か?」

「そこまでは、あたしも知らぬわい」

「知らぬなら黙っていろ!」

「そうするとしようかのう。ふぁっははは」

「ぬ? なにがおかしい!」


 険しい顔でシャルバートが睨みつけるけれど、オイルレーズンは、命じられた通りに、黙ったままでいることにした。

 少なからず気不味い中、チャプスーイが、少し言い辛そうな表情をしながら、慇懃な口調で奏上する。


「陛下、同盟国の王と政策官に偽りを伝えた一等管理官は、いかが処罰パニシュされるべきでありましょうか」

「保留とする」


 つまりジェラートに対する処罰は、パンゲア帝国からの「要求」を受けて、しかるべき対処を果たした後に決めるということ。


「承知致しました。一等管理官の処罰は保留と、相成りましてございます」


 チャプスーイが皇帝陛下のご判断を周囲に通知した後、彼ら七人で大きな拍手をお送りする。陛下のなされた英断に感謝し崇める目的で、このような場合に昔から必ず行ってきた慣例的儀礼である。

 一時的に処罰を免れるジェラートだったけれど、この夜、スプーンフィード家で、シャルバートからの厳しい叱責、いわゆる「大目玉」を食うことになる。

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