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幕前
むかーしむかしのことじゃった。ある山奥の一本杉に、ひとりの仙人が住んでおったそうな。
ある日ある時、この一本杉の根本に小さな可愛らしい芽が吹いた。
暇を持て余した仙人がぼんやりと眺めておると、双葉がぱかりと弾けるように開き、その勢いで霊力が溢れ出る。
溢れ出て、ふわりと漂う霊力は、あれよあれよという間に、幼子の姿を取りはじめた。
「おやおや、これは……! 花精霊というやつかのう?」
その芽が育ち、やがて咲くその花の名は『優曇華』。
なんとも奇妙な名と……避けられぬ、重い定めを持っている。




